とても大きな音がした。
いままで聞いたことのないような大きな音。
聴覚器官がしばらくの間麻痺して使い物にならなくなったくらいだ。

最初に、私の仲間が様子を見に行った。
彼は「信じられない」と真っ青な顔をして帰ってきた。

私も仕方なく、様子を見に行くと、見た事のないものが散らばっていた。
大きな欠片は数メートルくらい、いくつかの小さい破片は空気に舞ってしまっている。

「なんだこれは」
「わからない。だが、こんなものが降ってきただけであんな音はしないだろう」
「元は違う形だったのか?」
「だとして、それがどうしてこうなる?」

仲間たちがぽつりぽつりと言葉をこぼす。
彼らは、いや、"われわれ"は未知を恐れるが故に無知だ。
無知であるが故に未知が恐ろしいのに、未知に触れようとしない。

「ぶつかって壊れたのでしょう」

われわれがうろたえていると、すこし高めの声の、仲間たちとは違う姿をしたものが、仲間たちの間を縫うように入ってきてそう言った。
この文章を書くにあたり、便宜上この少し高い声をした個体を「彼女」と呼ぶことにする。

「そうか、こんなところへはるばる...」

彼女は自分だけなにか分かったような顔して頷いている。


「どういうことか」
「他の星の飛行船?宇宙船?がぶつかったんだよ」
「こんな形の飛行船も、宇宙船も、見たことがないぞ」
「だから、違う星のものだよ」

仲間たちがざわついている。

「危険じゃないのか?」
「この様子だとたぶん、中身は...」

彼女は少し屈んで、飛行船なのか宇宙船なのかよくわからないそれの中を覗き見た。

「ああ、ダメだね」
「ダメとは?」
「ぐちゃぐちゃの粉々だ...おや?」

彼女がそう言ったとたん、欠片のひとつからがたん、と音がして、白く丸いものが転がり出てきた。

「なんだ!?」
「危ないぞ!みんな下がれ!」

その声を合図に仲間が一斉に下がる。
彼女は慎重にそれにちかづくと白くて丸いそれをそっと拾い上げた。

「大丈夫なのか?」
「大丈夫、だと思う。危険な感じはしない」

彼女は白くて丸いそれを、目を細めて見ている。

「これは私が預かる」
「ああ、そうしてくれ。未知のものは恐ろしい」

相変わらずわれわれは未知に触れようとしない。
この騒動は彼女が全て引き受ける形で収束した。
彼女から離れる際、好奇心でその白いものをよくよく観察してみたが、彼女が何故アレを引き取ろうと思うのか理解出来なかった。

up:20171005
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