「ダンデさんって、かわいいって言われたことある?」
ふわふわと広い背中で揺れる鮮やかな髪色を広いベッドに転がりながらぼんやりと眺めていたら、ついそんな言葉がこぼれる。ほぼ無意識で言っていた私は、その言葉にふと我に返るものの、別に失礼なことを言った訳じゃないかと思い直して、上げかけた身体をもう一度ベッドへと沈める。
唐突な私の質問に振り返ったダンデさんは、ベッドの上でゴロゴロ寝転がる私を見て「なんて格好してるんだ」とお小言を漏らす。それから次いで小さくため息をつくと、顎に手を寄せ腰に手を当て、フムと律儀に考えるそぶりを見せてくれた。
「全くない、って言ったら嘘になるが……滅多にはない」
「言われたことあるんだ……誰?」
「……もしかして、君がヤキモチを」
「違うよ、興味本位」
両手でバッテンを作ってそうじゃないの意を示す。ちょっとだけ期待したようなダンデさんの表情にサッと影が落ちたように見えて、少しの罪悪感と『かわいい』の感情につい頬が緩んだ。
質問のきっかけは女の子も羨むサラサラふわふわヘアーだったけど、考えてみれば、バトルの時のギラギラした表情と、オフのときの柔らかい表情のギャップに、かわいいと思う人は他にもたくさんいるんじゃないかとも思えてきた。そうしてみると、心のモヤモヤはちょっとある。めんどくさい、私の心。
「やっぱりちょっと妬いた」
「……それはそれで嬉しいな」
「めんどくさくない?」
「全く。むしろドキッとさせられた」
こちらを見つめながら優しい表情を浮かべるダンデさんを直視できなくて、ふいっと視線を逸らす。ゴロンとベッドに転がって天井を見つめると、今更ながら恥ずかしさでいっぱいになってきた。自分から話をしかけておいて結局自爆するなんて、何してるんだろう私。
そっと目を閉じて深呼吸を繰り返す。心臓の音が落ち着いてきたと思ったとき、近付いてきた気配に気が付かず、私の顔にくすぐったいものが触れた。それがダンデさんの髪の毛だとわかったときには、唇にぬくもり。
「オレよりも君の方がかわいい」
「……ダンデさん」
「さん、は無しだぜ」
ギッと軋むベッドの音、ダンデさんが私の上を跨ぐと、今すぐ顔を隠そうとした両手を易々とベッドに縫い付けられてしまった。
真っ赤になった、というよりも、さっきのやりとりで既に赤くなっていた顔をまじまじと見つめられ、言葉が出なくなる。ふっと優しく笑ったダンデさんが、私の首筋に顔を埋め、耳元で低く呟いた。
「今から君のこと、たくさんかわいいって言わせてくれ」