重だるい身体とチクチクする喉の痛みで目を覚ます。薄暗い視界の中、手探りで時計を探すと、短針はまだ日の出よりもずっと前の時間を指していた。時計に伸ばしたままの手をがっくりと落として、再びもぞもぞと布団を被る。素肌に触れるシーツの感触と布団の感触と、それから隣に在る温もりに、数時間前までの情事をぼんやりと思い出した。といっても、疲れ果てた身体ではもはや『お互い頑張っちゃったなあ』なんていう感想しか出てこないのだけれど。
時計のもう少し向こう、隣の彼が気を利かせて置いてくれたであろう水をペットボトルごと掴むと、寝転んだまま器用に飲み込んでいく。置いてすぐは冷えていただろう常温の水は、喉を潤すには冷たすぎずちょうど良い。これも彼の計算のうちかな、なんて思いながら、私が動いたことで出来た肌寒い布団の隙間を埋めようと動く赤い髪を見つめた。ごろりとこちらを向いた端正な顔立ちに、自然と口角が上がる。何となくその頭を撫でれば、少し固めの赤い髪が私の指の間をするりと抜けていく。それを何度か繰り返していると、起こしてしまったのか、掠れた声で名前を呼ばれた。
「ごめん。起こしちゃった?」
「いや……大丈夫。いま、何時だ?」
「4時前、くらいかな」
「ん……もう一眠り、できるな……」
「!」
するりと、何も身に付けていない身体に彼の大きな手が触れる。そのままぐっと腰を抱き寄せられて、その逞しい腕に包み込まれた。目の前に晒された胸板には無数の傷と、それから彼に求められるがまま不器用に落とした赤い印が点々と刻まれていて、頑張っちゃったなあという既存の気持ちと妙に恥ずかしい気持ちがない交ぜになって思わず眉を潜めてしまう。そんな私のことなど見えていないとばかりに、彼は私を強く抱きしめると、まるで抱き枕にするかのように足まで絡めてがっちりとホールドした。これは経験則なのだけれど、こうなってしまっては、彼が起きるまで私の身動きは一切取れない。あきらめて抱き枕にされる他はなく、今回もまた仕方がないからと、私はその胸元に唇を寄せた。
「おやすみ、ワタル」
「……ん……おやすみ」
ワタルが私の髪に口付けるのが分かる。声からして夢うつつなのは間違いないのに、そうやってキスにキスで返してくれる律儀さが私は大好きで。寝起きと寝入りの、いつもより可愛らしいワタルの存在をすぐ傍で感じながら、私は温もりに包まれてもう一度目を閉じた。