背中をトントンとリズミカルに叩かれると眠くなる。これはたぶん私だけじゃなく、人類みなそういうものだと思ってるんだけど、案外違うんだろうか。誰にも聞いたことがないから、分からないけれども。
子供のときから、いや遡れば赤ちゃんのときからそうだけど、こうして一定のリズムを保った何かの音を聞いていると眠くなるのは、人間の本能的な何かではないかなと思う。
現に今、大人になった今、背中を優しくトントンと叩かれて必死で睡魔と戦う人間は少なからずここにいて。
「それ、本当に寝ちゃうからだめ」
「ん? 寝かしつけているからね」
「ええ、やだ。まだ寝たくない」
「だめだ。きみは宵っ張りすぎる。だから朝がつらいんだよ」
「ワタルだって、遅くまで起きてるときあるのに……」
「おれはいいんだよ。何日か寝なくたって大丈夫な身体になってる」
「強靭……」
精神的にも、肉体的にも。そう続けようとした言葉は、鈍ってくる意識の中で口にできなかった。厳密に言うと、言ったつもりが言葉にならなかったというか。
私を抱きしめていたワタルがふっと笑う声がする。笑わないでと、言おうとしたけどこれも言葉にならない。
すり、とその広くて温かい胸に顔を寄せたら、優しく腕に力を込められた。苦しすぎず、寂しすぎない、ちょうどいい力加減。秋の夜にちょうどいい温かさ。息を深く吸えば、ワタルの匂い。
「おやすみ」
「う……」
まどろみとワタルの匂いでふわふわとした感覚の中、髪にワタルの唇が触れた気がする。どっちかっていうと唇が良かったな、なんてぼんやり思いながら、起きたいのに起きられない身体に小さく呻く。
小さく笑うワタルの声をどこか遠くに聞きながら、私の意識はゆっくりと底に沈んでいった。