「――名前……?」

 男の声で目を覚ました。首だけ起こすと、私の寝室の扉の前に彼が立っているのがうっすらと分かる。室内は暗く、窓の外も暗い。

「……総司?どうしたの?」
「……なんでもない。」
「なんでもない、で私を呼ぶわけないでしょ。どうしたの?」

 衣擦れの音がして、彼が近寄ってくるのが分かった。ギシ、とベッドのスプリングが音を立てる。

「総司?」
「……寒い」

 彼は私の布団を容赦なくめくって、そこに入り込んだ。寒い空気が布団の中に入り込んで、私は身を震わせた。

「寒っ!!総司!!」
「……あったかい…」

 私一人が寝るには無駄に大きいダブルベッドの端で丸くなってそうつぶやく彼を追い出す気にはなれず、私は彼の足先に私の足をからませた。

「足冷たい…布団、寒かった?」
「そういうわけじゃないんだけど……」

 普段の彼に似つかわしくない不明瞭な声でぼそぼそと喋った後、こちらに身を寄せた。確かに彼の体は冷えている。我が家の貧弱な暖房設備を申し訳なく思った。

「寒いならすぐ言ってよ。風引いちゃったら嫌だから。」
「寒いわけじゃないんだ……でも」

 布団を彼の顔ぎりぎりまで引っ張り上げると、暗闇のなかでも彼がふっと笑ったのが分かった。

「暖かいわけじゃないから……――」

 彼は寝返りを打って此方に向き直ってから、「――僕は暖かいのが、好き。」と譫言のようにつぶやいて、寝息を立て始めた。とても穏やかな寝顔だった。

 彼の寝顔を眺めるうち、私も眠くなって、いつの間にか寝てしまっていた。

 




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