出梅2

 
 ――先輩、起きてください。
 ――……三之助!? おまえ、いままでどこに!!
 ――説教はあとで聞きます。しろが。
 ――四郎兵衛? いったい、どうして。

 滝夜叉丸先輩、ごめんなさい。
 次屋先輩は悪くないんです。
 ぼくが勝手に探しに行っただけなんです。

 ――まったく、お前たちは二人して。
 ――すいません。
 ――わかった、小言はあとでたっぷり聞かせてやる。お前は三反田を起こして、保健室を開けてもらえ。私は新野先生を呼びに行く。
 ――はい。



 目を開けるより先に、においが鼻についた。
 薬草の、独特なにおい。
(保健室だ)
 ゆっくりと目を開けると、予想通り薬草棚が目に入る。
 いつの間に忍術学園に帰ってきたのだろう。
 山中の小屋までしか記憶がない。
(次屋先輩は……?)
 四郎兵衛はぼんやりしたまま、体を起こしたが。とたんに、恐ろしいほどのめまいに襲われ、布団に突っ伏すことになった。
「まだ、起きてはいけませんよ」
 上から降ってきた声は、新野先生。
 保健委員の顧問はにっこり笑って、四郎兵衛の額に手を当てた。
「ほら、まだまだ熱が高い。でも、目が覚めたのはよかったです。のどが渇いているでしょう。水を持ってきますからね」
 四郎兵衛は言われてはじめて、声も出せないほどに、のどが渇いていることに気付いた。
 しかし、それよりも先に聞きたいことがある。四郎兵衛は背を向けた新野先生の着物の裾をつかんだ。
「……せんせ」
 声を絞り出して引き止めたが、新野先生は首を横に振った。
「まずは水分を取りなさい。話はそれからです」
「でも」
「次屋くんは無事ですよ。大丈夫」
 四郎兵衛はゆっくりと息を吐く。

 よかった、ちゃんと戻ってこられたんだ。
 滝夜叉丸先輩には怒られただろうけれど。
 ああ、でも、本当によかった。

 水を飲んで、少しだけかゆを食べた四郎兵衛は、そのあとすぐに眠りに落ちた。
 そして、次の日の朝まで目覚めなかった。


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