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こいつは、何を言っている?



名前がこんなセリフを言うなんてな。俺があっけにとられていると、名前は慌てた様子で手を振りだした。

「あっ…、違いますよ!私、元々そういうことが好きとか、他の人ともそういうことをしているとかじゃなくて、その…」
「…分かってる」
「そ、そうですか…」

こいつがこうも言うのであれば、何か理由があるのだろう。そして、その理由を言わないのであれば、俺は受け入れるしかない。

「…お前がいいなら俺は構わないが、いいんだな?」

俺が名前の瞳を真っ直ぐ見つめると、名前の瞳は揺らぐことなくただ俺を映していた。

「はい。お願いします、承太郎さん」







計らずしも自分の思惑通りになった。僥倖だ。しかし、素直に喜べるわけもなく、少し複雑な感情を抱えた。

「あの、承太郎さん」
「なんだ」
「あの、あんなことしておいて、なんですけど……私承太郎さんのことよく知らないので、教えてもらえませんか?」
「…ああ、」

そう言って近付く名前は、昨日俺に組み敷かれていたとは思えないほどあっけらかんとしていて、抱えた感情は縺れるばかりだ。








「え…… 高二? 十七歳…??!」

年齢を伝えたときに、よくされるリアクションだが、名前の驚きようは面白い程だった。

「意外か?」
「だって、承太郎さんってすごく落ち着いているし、背も高いし…… 少なくとも大学生以上かと…」
「よく言われるな」
「……でしょうねえ」

呆けていた顔に笑みが浮かんだ。クスクス、と笑う名前の髪が、窓から射し込む朝日で煌めく。俺は思わず名前の髪に触れると、名前はきょとんとした表情を見せた。

「髪フェチなんですか?」
「そういうわけじゃあねえが…」
「?」
「綺麗だと思ってよ」

俺がそう言うと名前は驚いた表情になり、ついと顔が紅くなった。そして下を向き、「女たらしだ…」と小さな声で呟いた。全部丸聞こえだが。




お互いふざけるのをやめて、改めて自己紹介をする。

「私は名字名前と言います。学年は承太郎さんと同じ、高校二年生です。学校は……制服見たら分かるかな? 部活はやっていなくて、放課後は塾に通って勉強しています。得意科目は生物と化学です」
「…苦手科目は」
「うっ……、え、英語です……」

英語、という際に名前の目が泳いだ。ただ苦手なだけじゃあないだろう。

「お前、昨日は英語のことでも考えていて人にぶつかっただろう」
「な、なんで」
「…分かりやすい奴だな、お前は」

全部顔に出ているぞ、と言うと名前は自分の頬を両手で触り、その造形を確かめるように表情筋をなぞる。英語か…。ジジイのこともあり、日常会話ぐらいなら喋ることができる。教えてやれなくはないだろうが。名前にそれを伝えると、これまた教えてくださいと言わんばかりの期待したような表情でこちらを見つめてきた。やれやれ。

「…わかった。教えてやるよ」
「ほ、本当ですか?!」
「ああ」
「承太郎さん…ありがとうございます!」


こうして、名前との奇妙な関係が始まった。




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