恋堕ちる桃鳥
〇〇がここへ来てもう何日も経った。いつもけろっとした顔でいて、ソファで居眠りをしたり、海を眺めたり。
その目の奥に浮かぶ色も読み取れず、何を考えているのか、全く分からない。
他の海賊はまだ一度も出会っていない、海軍や七武海の存在は知らない、血なんて見たことすらないだろう。ドフラミンゴの地位や強さなど、一切考慮せず接しているのは、〇〇の性格からかもしれないが、無知からも来ているのではないか。
もしも〇〇が全てを知ったら。
俺の黒さも、この世界の黒さも。全てを。
ここにいてくれるだろうか。
自分が言ったように、ここに。
ふと浮かんだ馬鹿馬鹿しい想いを振り払う。
すでに悪酔いしたようなわだかまりが解けないが。
〇〇は窓にへばりつくようにして外を見ている。
本能まで全て捕らえて離さないのが此奴なんて思いたくないが。仕方がねェことさ。
「フフ…」
堪え切れない失笑に気づいた〇〇が振り向く。
「急に、どうしたの?」
絶対に膝は嫌だ、赤ちゃんじゃないの私は。と言って聞かない〇〇の定位置はドフラミンゴの隣になった。
「いや?ここへ来た時より〇〇チャンが随分丸くなったもんだと思ってな。」
「あれはあんたが…!」
顔を真っ赤にして、口をパクパクする。丸くなったと言っても、未だに一緒に風呂も入ってくれないのはもちろん、不用意に触れたり近づきすぎると〇〇の十八番とも言っていいような衝撃波が飛んで来る始末。
ただ、子供にするように頭を撫でることだけは嫌がらないのだ。
ふわりと頭に手を乗せると、すっと目を細めた。
「ドフィだ、〇〇」
「…」
むすっとした顔と目が合うが、これに照れが含まれている事を俺は知っている。
「…ド…フィ」
「あァ、上出来だ」
何も知らせず、ここで生かしておく事も出来る。〇〇はそれを嫌がるだろう。仕事を寄越せと言ったくらいだ。退屈も怠惰も許せない性分だと分かる。
「名前呼んであげたから仕事頂戴?」
「フフフ!一人前に取引しようとしやがる!」
〇〇が来てから、口角が上がって上がって仕方ない。
どこにも行かせず、閉じ込めて、いつも気ままで自由な視線の先を俺だけに向けさせることができたら。
こんな事を考えてしまうところ、俺は恋にでも堕ちてしまったらしい。
こんな歳になって、でかい図体で今更何を胸糞悪い想いを抱いてんだと振り払えれば良かったのだがそれが出来ないから厄介なのだ。胸焼けしそうな気持ちが少しでも楽になる方法はないのだろうか。
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