抜け出す少女
「あ、船見えた!」
いつものように窓辺でそとをぼーっと眺めていると、限りなく青で覆われた地平線に、ぽつりと大きな船が見えた。
「あァ、そりゃあたぶん今回の取引先だ。少しだけ俺はココを空けるが、大丈夫だな?」
「別に困る事ないし…」
「寂しくて寝れねェか心配してんだ!フッフッフッ!」
「はっ?バカじゃないの?!」
コンコン、と扉が叩かれ、若い女の声が聞こえる。
「若様、ご用意をお願いします」
「今行く」
ドフラミンゴは立ち上がると、コートを手にとって歩き始めた。
「大人しく待ってろ、これが仕事だ」
じろりと視線を送っても何でもないように笑って、後ろ姿になったところで手をひらひらとさせていた。
バタンと扉が閉じ、広い広い部屋にひとり残される。
取引先とか言っていたけど、ドフラミンゴのやっていることは何も知らない。電伝虫の内容などから、薄々、怖い仕事だとは思っていたが、最近はそんな生ぬるいものではないほどの恐ろしい仕事ではないかと思ってもいる。彼は海賊だ。それも、頭がよく回る。いいのだ。知らなくてもいい。
ふう、と息を吐いて部屋を見渡す。
そうだ、とふと気づく。何かやることはないか探しに行こう。今は部屋を出ようとするときに邪魔をしてくるかくっついてくるドフラミンゴがいないのだからうってつけの時だ。
コートを肩に引っ掛けて扉をあける。
「ん?これドフィのやつだ。…私の間違えて持ってったんだ」
とことこ廊下を進む。1人で出歩くのはここへ来た日以来だ。飛び出して来たはいいものの、やっぱり迷いそう。ここはローと会った曲がり角だ。見たことあるような無いような趣味の悪い廊下をあてもなく進んでいく。
「!〇〇様!?」
お皿をたくさん抱えた若い船員が叫んでいた。
「どうしてここに?若様の部屋に戻っていただかないと…!」
大きな声を出した拍子にお皿が飛びそうになった。咄嗟に支えると顔を青くした船員が慌てるようにしてお礼を言われた。
「あ…ありがとうございます!!〇〇様に助けていただいたなど、何と申し上げればよいか…!」
「気にしないで」
彼はそんなことをされては若様が、貴女を働かせたら若様が、としきりに気にしている。
「ドフィが、どうしたの?」
「若様が〇〇様を働かせることはダメだとおっしゃっていて…」
どこまで手を回すんだあいつは。
「過保護すぎるのよ阿呆鳥!!!」
船員は目の前の少女を信じられない目で見ていた。自らのボスにこんな口を聞く女は今まで見たことも聞いたこともない。その女がドフラミンゴのお気に入りときたら、自分の目も疑いたくなる。
「ねぇ、君さ、キッチンどこか知ってるよね?」
ドス黒い笑み。
「教えて?」
可憐で整った顔から似合わない威圧感に頷くほかなかった。
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