待ちきれない桃鳥
「ここは妥協できねェが、他は条件を飲もう。それでいいだろう?」
何度となく繰り返してきた退屈な商談。特に今までは感情もなく過ごしていたが、こんなに船に戻りたいと思ったことはない。
まだまだ予定が詰まっている。ここ数日、後回しにしてきたものが溜まっているのだ。あと3日は帰れねェな。
商談パーティーの行われる島の使者が遣わした船。部屋も小綺麗で洒落たものだったが、何となく広く感じてしまった。寝相の悪いあいつが隣にいないベッドも、広い。
「若様。〇〇様から電伝虫がかかってきております」
取引先の連中が退室すると入れ替わりに部下が入ってきた。電伝虫を受け取る。
「〇〇チャン?」
『あーもしもしドフィ?何これ、すごいね表情も分かるの?』
「あァ、使うのは初めてだったか」
『うん、この世界もなかなか面白いね』
何故かご機嫌な〇〇に、少し口元が下がる。俺のいない船で、何が楽しいんだ。何がお前を笑わせているんだ。
「どうした。要件は」
『そうだ!私、コックになるの!1週間くらい前から、キッチンで使ってくれてるんだ』
ぴくりとこめかみが動く。
「おいおい〇〇チャンそりゃ悪い冗談か?出掛ける前に〇〇に仕事はさせるなとファミリーには伝えてあったはずだが」
『怒るなら私を怒って?退屈すぎて死にそうだったのよ』
「本当に…振り回しやがって…」
ドフラミンゴはため息をついた。どうやら言っても聞かないスタンスだということが分かった。
「どうせ我が儘通したんだろう?手に取るようにわかるぜ?」
『ふふ、どうかな』
「それよりお前厨房に立てんのか?」
『は?!ちゃんと働けるよ!?』
「フッフッフッ!!〇〇の料理、楽しみにしてるぜ」
『仕方ないな、……早く帰ってきて』
さァ、早く仕事を終わらせよう。素直じゃねェ我が儘お嬢ちゃんの待つ船に、一刻も早く帰ってやろう。
「あァ、寂しがり屋の〇〇チャンのためにな、明日には帰るぞ。」
『バカ、』
受話器を置く前に、くすっと笑った声が聞こえた。
「おい、残った商談全部今日済ませる。」
俺も笑みが止まらなかった。
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