天邪鬼な少女
「帰ったぞ 〇〇チャン!」
商談を猛スピードで終わらせた(手は抜いていない)のおかげで、予定よりも早く船に戻ることができた。ばたりと扉を開け放った自らの部屋。
「あァ?居ねェじゃねえか」
中は真っ暗で、〇〇の気配はない。そうなると、と考え、普段全くと行っていいほど足を踏み入れない厨房へ向かった。
「若様…!」
「よぉ」
突然現れたボスに、色めき立つキッチン。ドフラミンゴはぐるり一周見渡して、コック長に声をかけた。
「〇〇が来てたみてェだな」
「え、えぇ、本当によくやってくれましたよ。毎日飽きもせずに料理の練習!って言って、ここに来てましたから。」
「そうか、これからも面倒見てやってくれ」
コック長は少し面食らったようだったが、優しく頷いた。
「あぁ、若様、〇〇ちゃんならローの所に行きましたよ。」
「ロー?…そうか、わかった」
名前を聞いて、怪我をしたのかと思ったが、そうではないらしかった。
「ドフィ、いる?」
厨房へ戻ると、コック長がドフラミンゴが帰ってきていることを教えてくれた。そこから急いで部屋まできたのだが、ドフラミンゴはコートを抱きしめるようにして、ベッドに寝ていて、返事がない。
ドフラミンゴが出かけてから一人でこのベッドに寝ると、どうしても広さを感じてしまって仕方なかった。端っこに丸まっても、右側にドフラミンゴがいないことが、どうしてもダメだった。
そういうときはいつも、ドフラミンゴの置いていったコートを傍らに寝ていたのだ。すると、不思議なほど、よく眠れた。どうしてだろう、と言うふわふわと不確かな想いを抱いていた。
ドフラミンゴの姿を見た時、どきりとした。彼は気づいていないだろうが、あれは私のコートだ。それを、大事に包み込んでいたから。私がしたのと同じように。
「あ…寝てるのか」
そういえば、いつも先に寝てしまうのは自分だ、と思い出す。ドフラミンゴの寝ている姿を見たことがない。
相変わらず濃い色のサングラスをかけたまま。まだこの下の素顔は見たことがない。
好奇心から手を伸ばすと、その手をそのまま掴まれる。
「…〇〇」
「っ…ドフィ、起きてたの…?っ…」
手を掴まれ、腰を引き寄せられる。バランスを崩した〇〇は、片手をドフラミンゴの顔の横につくので精一杯だった。
「〇〇チャン、ただいま」
フフフ、と笑いを漏らしながら口から出た言葉が身体に似合わず可愛くて、こちらも笑いが漏れる。
「おかえり、ドフィ」
「寂しくなかったか?」
「全然」
「フッフッフッ!その様子じゃあ俺のコートは役に立たなかったみたいだな?」
いつもの揶揄いだけではなかった。不意に突かれた所にびっくりして、突っ張った手が崩れる。倒れこむようにして重なった〇〇の身体をドフラミンゴは優しい手つきで撫でた。
「フフフ!本物はどうだ?」
全てお見通しなのだろうか。
「…最悪よ」
この私の天邪鬼も。
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