世話焼きな外科医



目覚めると頭がガンガンと痛んだ。

隣にドフラミンゴはいない。はじめての事だ。遠くに出かけている時でなければ、目覚めた時にはいつも側にいてニヤリとしている彼だったのに。

部屋はもう完全に明るい。時計を見るともう昼を過ぎている。

「飲み過ぎたかなぁ…」

だるい身体をようやっと起こす。昨日は、あれから船に戻ってぼーっとしたまま風呂に入った。そこからなにも覚えていないが、ベッドにいるということは自分で寝たのだろうか。酔えないと思ったのは錯覚で、アルコールをどんどん身体に入れたのがきっとよくなかった。

長袖のシャツを引っ張り出して、のそのそと寝間着から着替え、ぎぎぎ、と扉を開けて肌寒い廊下へ出る。



「あ、ロー」

「また廊下で会ったな」

「…ドフィ、どこ?」

「取引先と商談だ。急な話だったから、船はここに停めて自分だけ行った」


そう、知らなかった、と伏し目がちに言った〇〇が妙に儚げだった。


「なんだお前、その隈」
「ローに言われたくない、…え、そんなに酷い?」
「顔色も良くねェ」


ローの半笑いのない仏頂面で、冗談ではなく本当のことを言われてるのだと気づく。
突然、ふらつく身体に、ローの目の色が変わった。


「ちょっとお前こっちこい」


白いカーテンの部屋は初めてだった。少しだけ消毒液のにおいがする。医務室だろうか。


「大丈夫だよ、ちょっと、二日酔いなだけだから…」

「ドフラミンゴに飲まされたのか?」

あいつにそんな趣味はねェはずだとかなんとかつぶやきながら、診療をしていく。ローの言葉に耳を傾けることなく、ぼうっと思いをはせていた。

飼い主に放り出されたペットはいくところがあるのだろうか。わたしは、ドフラミンゴに捨てられてしまったらどこにもいくところがない。自分でも気づかないうちに随分と手懐けられてしまっていたみたいだ。




「おい…、なにが二日酔いだ」


目の前に不機嫌そうなローの顔が迫る。


「熱あるじゃねェか。寒いだけでこれか?随分弱ェ単純な身体だな」



暴言を吐き捨てながらも、スタスタ部屋の棚を開けて薬を取り出して、毛布を抱えている。



「さっさと寝ろ、ベッドへ行け。立てるか?」


医務室ならベッドのひとつふたつあるのではないかときょろきょろしたが、それは見当たらなかった。


「ここは俺の部屋だから生憎空きベッドはねェ。俺と寝たいなら話は別だがな」


憎たらしい笑みでそんなことを言うが、ローの本性は世話焼きだ。そうでなければこんなわたしのことなど心配するはずがない。


「大丈夫、立てる」

熱があると言われてみれば、そういえば身体が火照っているように感じた。今更そんなことをいえば、ローはまた鈍い、と刺すのだろう。ドフラミンゴに言えば、飛んでくるのではないか。いや、自惚れか。





「ねぇ、ロー…わたしはいつまでここに居ていいのかな」


あなたも、こんなにわたしに良くして…ずるい。

聞かせる気もなく、背を向けて呟いた言葉は空中に溶けて消えて言ったようだった。

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