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「宿儺と張り合えるって、すげえ強いってことじゃん」
「自分の呪力をまともに使えれば、ね」

私の呪力は際限なく湧き出ているらしく、幼い頃知り合いにもらったペンダントに宿る呪霊が私の呪力を少しずつ吸い取ってくれているおかげで制御できているそうだ。今思えば、これをくれたお兄さんは私の不思議な体質に気付いていたのかもしれないなと思う。そして家族を失ったあの日、誰が持ち込んだのか玄関に落ちていたあの気味の悪い指が、ペンダントに吸い込まれていくように入っていた。悟が言うには、その呪霊が宿儺の指を取り込んだ訳ではなく持っているだけらしい。何のためにそうしているのか、見当もつかないけれど。面白いのが、このペンダントを身につけている間は呪霊自身は勿論、宿儺の指も、食料にしている私の呪力も、他から呪力は感知されないようになっているらしいということ。それが呪霊の能力によるものなのかペンダントをくれた人の能力なのかはわからないらしいけれど、余程の呪力がない限り命を取られる心配はないと言う。現状、悟の持つ術式だけという予想が立てられているのはそういうことだそうだ。
それが宿儺本人であっても覆すことは出来ないのかを確認するため、今回こうしてわざわざ足を運んでもらうことになったのだと、漸く悠仁がここに来た理由が話される。結果は先の通り、感知はされなかったし攻撃も効果がなかった。悟の推測が無事に立証されたと言うわけだ。

「でもさ、それだとその特級?がなまえの呪力宿して強くなっちゃうんじゃないの?」
「お、ちゃんと理解できてるね。でも結論だけ言えば、そうなる前に呪霊自身が弾け飛ぶ。」

難しい話になるからとざっくり説明してもらったものをもっと簡単に言えば、強くなるけれど一定量を超えれば呪霊は私の中に取り込まれ、私自身も呪力制御ができない為に際限のない膨大な呪力に自我を保てなくなるらしい。それに万が一私が敵に捕まると、私の呪力を相手に奪われた時のリスクが大きくなる。いずれにせよ、私も甚大な脅威になる可能性を持つ危険因子だということだ。

「ただ、呪力以外は何考えてるか分かんない普通の女の子だからね」
「私も、悟の考えてること分かんないよ」
「うん、俺も先生の考えてる事分かんない」

二人してそう来たかと苦い笑みを零しながら、悟は大事な所はそこじゃないと一つ咳払いをして話を続ける。

「護身術を習ったわけでも戦闘能力があるわけでもないから、何かあった時一人で対処が出来ない。それも僕が護衛としてここにいる理由の一つかな。僕が任務でいない夜は代わりに学長や限られた人に来てもらってね」

日中一人で過ごせるのはその間は特に気配の感知が敏感になるからで、何かあったら悟か夜蛾さんに連絡をすればいいことになっている。逆に夜はかなり意識を集中させてもぼんやりとしかわからないから、誰かに居てもらわなければならないと言う何とも迷惑な話だ。

「彼女が指を持っている限り他の奴がこの指を奪うことは出来ないって言うのは、ある意味最高のセキュリティだ。なまえが生きるためにも指は必要だしね。だからこそ、上の連中は悠仁のことも十九本取り込んだ時点で執行しようくらいに思ってるかもしれない。そっちの方が断然楽だし、なまえは既に命握られてるようなもんだから」
「何だよそれ!俺が長生きしたいとかじゃないけどさ、それじゃなまえが‥!」

途中までは真剣に聞いていたものの、途中から悠仁の表情が明らかに苦しいものへと変わっていた。どう言うことを指しているのか、彼がちゃんと理解できている証拠でもある。

「悠仁もこれからもっと取り込む指が増えるわけだし、変な所から聞かされるくらいなら本人がいる所で聞いた方がいいでしょ?」

悟の言葉に、煮え切らない返事を返す悠仁。
私の終わりは悠仁の終わりでもあるのだからお互い様だ。それに悟は言わなかったけれど、悠仁が現れるまでは私は指の保管庫としての役目を与えられていた。それを悠仁に押し付けてしまったのは他でもない、私だ。私は悠仁や悟のおかげで自我を失くす事なく最後を迎えられる。有難い話だとさえ思う。悠仁にメリットがないことを私が申し訳なく思うのならともかく、悠仁が私のことで心を痛める必要など、ひとつもない。
それに皆いつかは人生の最後が来る。この部屋が用意され、いつでも悟がついているのは不慮の終わりが来ないようにするためで、明確なゴールは見えていても具体的な日にちまでは決まっていない。皆と同じだ。

「ありがとう、悠仁」

物心ついた時から自分が普通の人間であることを疑うことなどあるはずも無く、どんなに膨大な呪力を持っていても呪霊を視認することすら出来ない私には呪力やら呪いやらは全く馴染みのない話だった。家族を失ってからは所謂呪力の気配を感知することが出来るようになっていたけれど、違和感を感じる程度の感覚的なもので、時間帯も限定的で細かいことができるわけではない。だから私にとっては学園祭の出し物でそういった配役を仰せつかった程度のものでしかなくて、それでも存外素直に受け入れられたのは、説明を聞いても違和感を覚えなかったからなのだろう。
謝る方が正当なのかもしれないけれど、悠仁の表情が余計と暗くなってしまいそうで、「私のことを気にかけてくれてありがとう。だけど、昨日までと変わらず自分の人生を楽しんで。」と、そんな想いをこめて言葉を紡げば、悠仁は哀しそうな顔を残しつつも無理やり口角を上げて自分の両頬を思い切り叩いて気合を入れ直す。それから、こちらこそありがとうと私に頭を下げた。

「俺もこの間まで普通の高校生してたんだ。ちょっと、似てるな」

ざっくりと理解を示した悠仁は、そう言って明るく笑った。悟はそんな教え子を見つめて嬉しそうに頬を緩ませて、私に一つ頷いた。私も頷き返してから、悠仁の頭をさわさわと撫でる。悠仁はお日様みたいな子だなあと思った。

まだ身長が同じだった頃


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