―――――――パーティー当日。
今日、会社は午後3時まで。
6時から高級ホテルの大宴会場を貸し切っての盛大なパーティーとあって、当然のことながらドレスコードがある。
それを準備するために、女性陣は時間が必要ということもあって、早めに帰宅を許されていた。
千姫の知り合いがいるという銀座の店に連れて来られたのだが…
「ねぇ、ここって…」
高級感溢れる店内。
内装から何から、とにかく豪華。
そう、ここは銀座の一等地に構える高級クラブだった。
当然、出迎えてくれた千姫の知り合い、君菊さんもそれはそれはものすごい色気で眩しいくらい綺麗で思わず見とれてしまう。
一体どこでこんな綺麗な人と知り合ったんだか…。
緊張していると、君菊さんは優しく微笑みソファに腰掛けるよう促してくれた。
「千姫様から伺っていた通り、とても綺麗なお人ですね」
「め、滅相もない…!」
「これはメイクのし甲斐がありますわ」
そんな風に綺麗に微笑まれると、何にも言葉が出て来なくなる。
さすがは銀座の一等地で店を構えられるだけある…。
これだけの美貌なら、引く手数多なんだろうなぁ。
そんなことを考えていると、お店の入り口に何かが運び込まれている。
「さぁ、千里様、本日の衣装が届きましたよ。いくつか見繕って持ってくるように衣装屋を手配しておいたんです。今日は専属メイクさんも付きますからねぇ。」
「い、衣装って…」
なんだか、とんでもなく大袈裟なことになっている気がする…
千姫はもうメイクルームで張り切って衣装を選び始めている。
いつも目立たないようにしてきた私にとって、こんなに自分を着飾るのは成人式くらいなものだ。
さぁ、さぁ、と背中を押され、気が進まない中、試着をさせられる。
自分では絶対に選ばないような衣装ばかりだ。
タイトなロングドレスに深いスリットが入ったものや、
ミニドレス、背中がザックリと開いたもの…
そもそも会社のパーティーに参加することが初めてだから、みんながどんな衣装で来るのか全くわからないし、派手すぎて目立つのも気合入りすぎてなんか嫌だ。
そんな中、千姫と君菊さんが二人して声をあげたドレスがあった。
「千里、これ、すごく似合ってる!」
「そうかな…?派手じゃない?露出しすぎてない?」
「全然!会場行くと結構みんな露出すごいよ、コスプレしてる人もいたり。」
「そうなんだ…二人が良いって言ってくれるなら、これにしようかなぁ」
ネイビーブルーのタイトなロングドレス。
大胆にも背中は開いているけれど、
足を出すのがあまり好きではないから、
スリットやミニスカートよりは良いと思った。
あとは化粧とヘアメイクをして会場に向かうだけ。
私、楽しめるのかなぁ。
こんなに着飾ったって、土方さんに見てもらうわけでもなく…
……って、なんで土方さんのこと思い出したんだろう私。
どういうわけか、この間階段で助けてもらったときのことを思い出して胸がドクンと波打つ。
やだな、私ったら。
今日だけ。今日だけ自分じゃない自分で楽しもう。
今日が終われば私はまた地味で平凡な生活に戻るんだ。
鏡に映った私は、まるで本当に自分ではないような表情で私を見つめ返していた。
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blue moon