勇が出掛けた後、邸内でははるがいそいそと勇の部屋を片付けていた。
元々、軍隊の遠征などで身の回りのことは自分でできる勇は、部屋が散らかっていることなど殆んどない。

だが、はるが専属になって少しした頃だろうか。
脱いだままのお着物が長椅子に掛けられていたり、本が乱雑においてあったり。
以前とは少し異なるようになったのである。
はるは、それはきっと勇が忙しくて片付けをする暇がなくなってしまったのだと考えていた。
…本当は勇の思惑なのだが。

しかし、今日に関してはあまり散らかっていることもなく久々にキレイな部屋であったため、すぐに片付けが終わってしまった。



(今日は遅くなると仰っていたわね…)




一通りの仕事が終わり、使用人専用の食堂で夕食を済ませ、たえと共に風呂にも入ってあとはもう寝るだけ。
千富に念のため確認したが、勇の出迎えはもうこの時間はいらないとのことであったため、宿舎に戻りおやすみの挨拶をしてそれぞれ自室に戻った。
はるも、やることもないので寝台に横になった。

だが、どうにも眠れない。

勇のことが気になるのだった。


勇のことだ。
きっと酒をたくさん飲んで帰ってくるだろう。
それに明日もお勤めなのにまだ帰ってこないことを考えると不憫な気持ちになり、専属使用人である自分が先に眠るなんてできない!と考えてしまった。

そうとなれば、帰ってくるまで出入り口で待っていよう。
はるは先程まで来ていた制服に着替えようと手を伸ばした。
その時だった。

…外から自動車のエンジン音がする。


勇が帰ってきたのだ。

着替える暇がないのではるは寝間着のままではあったがとりあえず急いで玄関へと向かう。

髪も結ばずに下ろしたままだが、行かないよりはマシだろう。
今朝はなんだが怒らせてしまったから、夜はちゃんとお迎えして差し上げたい。
きっとこんな時間になってお疲れになっているはず。



時刻は、まもなく零時を指そうとしていた。







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