54mmのふぃーるどびじょん

わたしの視界は、四角い窓で一応塞がれている。
たまに視界が落ちるので指で持ち上げる。
わたしは、世界に縛られて生きているのだ。

「なにやってんの?」

フレームを少し前に出して虫眼鏡の世界を楽しんでいるとふと、声がかかった。

「わたしは、世界に縛られてるんです」

「なに言ってんの」

呆れたと先輩が言う。

「わたしは、これがないと生きてけんのです」

「ほほう」

元の場所にフレームを治せば、うん。視界良好。

「あ」

先輩がわたしの世界を壊した。

「なにも見えません」

「うわ、度強くない?」

いや、全くわからん。なにもかもぼやけている。

「なにも見えません」

同じことを言えば、先輩は

「解放されたでしょ」

と笑った。
解放もなにも、世界から解放されてしまったら生きてけないじゃないか。独りはしんどい。

「いや、返してくださいよ」

そう言えば、わたしの世界がボンヤリと見えないが、ボンヤリとふってきた。
やっと帰ってきたわたしの世界。と思ったら、今度はフィードバックして真っ暗になったと同時に唇に柔らかいもの。
離れたと思ったら、明るくなった。

「世界が壊れたのなら、なにしてもいいものね」

先輩が楽しそうに言っているが、私は目を細めて

「いや、なにも見えないんすけど」


やはり、世界は私を縛ってなんかなかった。かもしれない。


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