わたしの視界は、四角い窓で一応塞がれている。
たまに視界が落ちるので指で持ち上げる。
わたしは、世界に縛られて生きているのだ。
「なにやってんの?」
フレームを少し前に出して虫眼鏡の世界を楽しんでいるとふと、声がかかった。
「わたしは、世界に縛られてるんです」
「なに言ってんの」
呆れたと先輩が言う。
「わたしは、これがないと生きてけんのです」
「ほほう」
元の場所にフレームを治せば、うん。視界良好。
「あ」
先輩がわたしの世界を壊した。
「なにも見えません」
「うわ、度強くない?」
いや、全くわからん。なにもかもぼやけている。
「なにも見えません」
同じことを言えば、先輩は
「解放されたでしょ」
と笑った。
解放もなにも、世界から解放されてしまったら生きてけないじゃないか。独りはしんどい。
「いや、返してくださいよ」
そう言えば、わたしの世界がボンヤリと見えないが、ボンヤリとふってきた。
やっと帰ってきたわたしの世界。と思ったら、今度はフィードバックして真っ暗になったと同時に唇に柔らかいもの。
離れたと思ったら、明るくなった。
「世界が壊れたのなら、なにしてもいいものね」
先輩が楽しそうに言っているが、私は目を細めて
「いや、なにも見えないんすけど」
やはり、世界は私を縛ってなんかなかった。かもしれない。
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