コツコツとお気に入りのヒールを鳴らして歩く。
随分と影が青くなったもんだと透き通ってそうな冷たい空気を吸った。
最近ため息が増えた気がしないこともない。とため息をついた。
「おはようございます」
「ああ、おはよう」
大学を卒業してから、近所の高校生ともあまり合わなくなっていた。
「なんだか、久しぶりですね」
「そうだね」
「駅ですか?」
「うん」
「じゃあ、一緒に行きましょうよ。話したいこともあるし」
高校生の彼女からの提案は別に私にしてはどちらでもいい内容だ。嫌ではないからオッケーを出す。
「いいよ」
返事をすれば彼女はなぜか目を輝かせ嬉しそうな顔をした。若いなぁと思いながらため息をついた。
「いいよ」
そう言って久しぶりに会った隣室に住む彼女と一緒に駅まで行けることになった。
軽く微笑みながら返事をくれる彼女はとても魅力だ。彼氏はいないのかな。こんなにも素敵なのに
「テストは終わったの?」
「はい。昨日結果が出ました」
「そう。どうだった?」
「難しいですね。進路決めなくちゃいけなくて」
なんとなく俯いて話せば
「何かしたいことはあるの?」
「いや、あるっちゃあるんですけど。なんというか」
「やってみればいいじゃない。若いんだから」
彼女の言葉にモヤッとした。
散々いろんな人に言われるその言葉。でも、誰だって失敗は恐れるしなによりも、不安がいっぱいなのだ。だから、
「まあ。無理でしょうね」
ツンと張った心地の良い声が聞こえてきた。
彼女の方をむけば、大人っぽいロングコートにオフィスカジュアルなのか水色のトレーナーが見えた。
「若いからこそ。失敗をするし、見えない不安があるんだから、そんなこと言われても無理よね。でも、私もだけど、大人になって思うのよ。時間って無限じゃないんだって」
話すたびに青い澄んだ空に昇る白い煙は私の心に風のように届いた。
「だから、やれる範疇でいいからやってみなさいよ。一歩なんて踏み出す必要ないわ。やりたいことをやればいいのよ。きちんと後先考えてね」
そう言って微笑んだ彼女は眩しくて私もこんな風になれるのだろうかと強いなにか熱いものを胸に生えさせた。
「きちんと後先考えてね」
そう言って大きなブーメランだと気づく。後先考えて動いたはずなのに失敗ばかりしてきた。
後悔なんて死ぬほど後に立たない。あの頃の私よりは、この彼女と同じくらいだった私よりは成長して色々学んだ。我慢すること。泣かないこと。言い出さないこと。笑顔でいること。心配かけさせないこと。独りに慣れること。割り切ること。でも、どれもうまくいかなかった。学ぶことと実践することは違う。
なぜだか目を輝かせている彼女をみて、そりゃOLよりも若くて目が死んでない若い夢を持ってる子の方がいいに決まってると、最近生息域を広げているロリコンたちの気持ちを納得した気がする。私だって、そっちの方がいい。
死んだ目をしだしたのはいつだろう。いつから目を死なせたんだろう。それもきっと随分前だ。もっとこうすればよかったなんて、人生生きてたら思うことだ。
「じゃあ」
「はい!」
「学校。それから、色々。頑張りなさいよ。程々にね」
そう言えばやっぱり元気に返事をする。
若いなぁとしみじみに思いながら階段を登った。
「程々にね」
そう言われて、はい!と返事をする。
憧れの彼女はヒールを履き慣らして歩く。私もあの人のようにまっすぐ自分で歩けるようになりたいとなぜか昨日までの憂鬱が吹っ飛んで爽やかな朝を迎えた気がする。
大人っぽいなぁと思いながら階段を登った。
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