苦手なあの人

「こんにちは」
自分の性格と正反対とも取れる人がいる。
「どうも」
勿論。今一緒に仕事をしている彼女も大人の女性として魅力的だ。しかし、この人は魅力がないわけでないのだが、大人というよりも、不思議な人だと思うのだ。
「えーと、、今日は天気?がいいですね!」
「そうだね」
挨拶をしたのはいいが、自分が立ち止まってしまい会話をしなくてはと焦ったからか、天気の話をしてしまった。しかし、それもたった一文で終わってしまった。
今、自分たちは政府閣に来ている。本部長と総司令が国の首相とお金のことや防衛について話している。自分と同じ補佐官が1人、総司令に付いている。補佐はひとりしか入れないのだ。
私は初めての補佐官なので経験として付き人にと今回ついてきたのだ。
「あの、、」
「ん?」
「本部長補佐は、この中に入らないのですか?」
「いや。入れるよ」
「入らなくていいんですか?」
「うん。別に仕事ないしね」
「でも、次の会合スケジュールとか」
「残り5分で入ればいいから」
「書類の整理とか」
「本部長には順番で渡してあるよ」
「えーと、そのなにかイレギュラーなこととか。、、あの、その、いきなり書類がないこととか、、あと、、」
私が唸っていると、その人は軽く笑い
「大丈夫だよ。本部長から残り5分で来るように言われているから」
と言った。自分はなんだか力が抜けた。
「そう、なんですか?」
「そうなんですよ?」
笑みはなかったが柔らかい雰囲気があった。この人の雰囲気は独特だ。感じるに感じられないのだ。人からよく、明るい性格だと言われる自分にはこの人の雰囲気が苦手だ。
「信頼されているんですね」
なんとなくそう言うと、その人は瞬きを2回程して
「いや、どうだろう。考えたことなかったな」
と呟いた。
この人には霧がかかっている。薄くて濃いカーテンのように、姿が見えているのに何もかも謎なのだ。掴めそうで掴めない。その姿に自分はイラつきを覚える。
「だって、本部長補佐はあなたしか選ばれていないじゃないですか。それに会合中にいなくてもいいなんて」
そう言えば
「信頼、じゃないと思う」
少し考えてからそう言われた。
「え?」
「そんな凄いものではなくて。うーん、なんで言えばいいかな」
腕を組み頭を少し傾けて考え始めた。
「あの、、。犬っているじゃない?あれにボールを投げて取りに行かせるとして、その犬はボールを取ってくると思う?」
いきなりの質問に少し混乱したが
「はい。取ってくると思います」
と答えた。
「なんで、そう思うの?」
「なんでって、そりゃ。、、そういものだからです。、、かね」
「つまり常識だと?」
「え、ええ。まあ、」
「それだよ」
「え?」
「犬はボールを取ってくる。そして必ず戻ってくる。そういう関係に近いんだよ」
と言われた。
「はあ。なるほど。しかし、帰ってこない場合や取りに行かない場合もあるのでは?」
と返せば
「それもそれだよ」
と言われ
「残り5分だから、いくね」
とドアの中に入っていった。
やはり掴めなかった。もし、掴んだとしても、それは霧が見せた現象かもしれない。不思議すぎて嫌になる。答えがないドアの中に入った人を思い返して、白い手服をはめた両手を無意識強く握った。
私はあの人が苦手だ。


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