鷹の子か鷲の子か

落書き小説

「流石、シガーレディだな」
夜勤業務時間。一区切りついた仕事を部下に任せ、夜の冷たい風を浴びに中庭に向かった。
そのまま施設内歩いているとかすかにタバコの匂いがした。その方向へ進んでいくと、あの有名人がベンチに腰掛けて座っていた。
その人物にそう言えば、こちらに気づき、立ち上がって敬礼をした。
「お疲れ様です」
「ああ」
持ち運び用のポケット灰皿にタバコを捨てた。自分のことに興味がないのか。ずっと敬礼したままなにを考えているのか、手に取るようにわかった。
「、、、タバコ、吸いたいのなら吸いたまえ」
と言えば
「総司令はタバコが嫌いだと思っていました」
敬礼をやめ、あのタバコケースからタバコを取り出して言った。そう思っているのに遠慮なく新しいタバコを加え火をつける行動に自分は面白いと思った。
「いや、自分が吸わないだけだ」
「そうですか」
表情がないと言えばないのだが。別に無表情なわけではなく無愛想でもない。
「君は、不思議なやつだな」
「そうですか?普通ですよ?」
「変わっているのではない。まるで煙のようだと言っているんだ」
部下がそう言っていたと伝えれば
「そう、なんですか」
とわかっているのかわかっていないのか。どっちもと取れない相槌を踏まれた。
「本部長にも気に入られてるな」
「そうなんですかね。みんなはそういうんですけど」
「そうでないと、補佐には選ばれなかっただろう」
「あー、まあ。そうかもですね」
と他人事のように言った。
「君はなぜ、たばこを吸っている?」
「うーん。なんででしょう。早く死ねるからではないですか?」
と本音か冗談かわからない口調で言った。
「早く死にたいのか?」
となんとなく聞けば
「さあ。どうでしょう」
と言った。本人にもわかっているのかわからない。真意がまったく見えない。それとも、見せてないのか。されど、少し話しただけでどこか落ち着いた気分になった。あの部下が話していた通りだと思ったと同時に、ほかの部下が言っていた気分にもなった。永遠に温い水に浸かっているようだ。しかし、その水はただ温いのではなく熱いお湯が冷めてしまった、あの嫌な温度だ。すべてを見透かされているような気がする。しかし、自分は知られてもいいと思った。いや、知って欲しいとさえ思った。
「、、、本部長補佐ではなく、うちの補佐官になりたまえ」
と言えば
「はあ、ならば移動願いを、、」
「いや、今ではない。君自身が私の元へ来たいと思った時でいい」
と言えば、「はあ」と間抜けな声を出した。
あの縄張り意識が高い鷹のような男が気にいるのもわかる気がした。しかし、自分の命で自分のものにしたくないと思った。それこそ自分で手に入れなければ意味がない。そうでもしないと自分のものにはならない気がした。
隣で吐いた彼女の煙でさえも愛おしく感じたのだ。

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