第6話

「昨日はね、図書委員の仕事で遅れてしまったの」

水無月さんに昨日ことを聞いた。
水無月さんは図書委員で、昨日久しぶりの当番だったようだ。そのまま司書の方ともう1人の友達と会話をしていて遅くなってしまったらしい。

「ごめんなさいね」

「え、ううん!全然!どうしたのかなあって」

「昨日、久しぶりに1人でバスに乗ったから少し寂しかったわ」

「私もだよ」

「あら、そうなの?」

「うん。・・あ、そうだ。水無月さん」

「なにかしら?」

「連絡先交換しない?」

とスマホを差し出せば

「ええ、もちろんよ」

と嬉しそうに笑ってくれた。

「再来週には梅雨があけるから」

「そうね、でも。時間はいくらでもあるから用事がない限りまた、一緒に帰りましょう?」

水無月さんは私の言葉に寂しそうな顔をしたが、自分の提案を笑顔で言った。
ふふふ。といたずらっ子のように笑った。

「そういえば、明日は雨がヤバイって」

「らしいわね。ゲリラ並みって」

「傘持つかなぁ」

「持つかしらねぇ」

「水無月さんの傘。好きだよ」

「え?」

水無月さんの隣に掛けてある赤い傘を見た。水無月さんは私の視線を追うように傘を見た。

「赤いから、水無月さんがいる。って印になるから」

と言えば

「あら、私もよ?」

「え?」

「時雨さんの折りたたみ。可愛い柄の傘でしょう?淡い青の」

「うん」

「ここに咲いている、紫陽花のようで。私、好きなの」

水無月さんが前の紫陽花を指差した。

「綺麗だね」

「紫陽花、今年は元気だね」

バス停のベンチに腰掛けてガードレールの向こうの街を2人でみる。
プラスチックの屋根とプラスチックの壁で雨が入って来ない。2人だけの空間。
そこに現れる白と赤のバス。のんびりと2人で乗って、帰り道に着く。

バスから手を振る水無月さんに手を振って褒めてくれた傘をさす。
明日は長く一緒に居られるだろうか。
そうだといいな。それがいいな。傘をクルリと回せば胸ポケットに入れてたスマホが波打った。
ラインを開けば
水無月さんから。内容を読んでクスリと笑った。
自分も打ち返して、胸ポケットにしまった。


ー明日は、長く一緒に居られるといいわね。


紫陽花が水を弾いた。

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