第7話

天気予報通りの大雨だった。
大粒の雨は折りたたみの傘に弾き、パツンパツンと音がする。
幸い、風はなく。折りたたみが壊れるといった心配はなかった。それでも、リュックだと濡れてしまって中の教科書がダメになってしまうからビニール製のカバンに変えたことが正解だったようで

「ヤバイ。教科書死んだ」

友人はカバンから教科書を取り出して乾かし始めた。

「お疲れ様」

「折りたたみだと、こうなるよなぁ」

「だと思って、カバン変えた」

「天才かよ」

「それにしても、雨やばいな」

2人して髪の毛やスカートをタオルで拭いたりシャツをスカートから出したりと乾かしている。
チャイムがなって席に戻ると隣の席の子がタオルで頭をガシガシと拭いていた。

「お風呂上がりみたい」

「え?ああ。自転車だから」

「お疲れ様だわ」

「カッパと袋のおかげで、カバンとズボンは制服は助かったけど上がな」

首から上が見事にずぶ濡れになった姿を見ていたら先生がきた。
着席して席に座る。裸足になった足をパタパタと上げ下げする。

「まぁ、今日はしょうがないわね。明日からは制服をきちんと着るようにね」

現文の先生がそう言って微笑んだ。

「じゃあ、始めるわよー」

と言えばみんなノートと教科書を出した。

「あらあら、みんな。ずぶ濡れになったわね」

先生は笑った。

「そういえば、雨の日というと。羅生門があるわね」

先生の雑談が始まった。
机に塗ってあるニッキや椅子と太ももの間は湿って動くたびに糊を剥がすみたいな音がする。
窓に当たる音は大きくて、外のグランドには水たまりが合体しようとしている。

「あれは、ラストが少し怖いわよね。下人の行方を知らないなんて」



「そういえば、会えた?」

お昼、友人がそう聞いてきた。

「誰に?」

「水無月さん」

「あー、うん。会えたよ」

「よかったね」

「今日は大幅に遅れているかも」

「バス?」

「うん」

「雨だと遅れやすいから大変だね」

「まぁね。でも、水無月さんに会えるから」

「まぁ、友達に会えるんなら問題ないわな」

「それな」

窓に当たる雨音は強くなってきた。午後から雨がひどくなるとは言っていたが、これ以上強くなるのか。

「あー、もう。靴下変えたのにまたずぶ濡れになるわ〜」

「それなー」

とのんびりと会話をしている間も、雨が強くなっていった。


気をつけて帰るように。と担任に言われてみんなゾロゾロと教室を出た。

「あー、もう、雨ひどい」

イヤホンをせずに歩くことが多くなった。傘に当たる雨音が激しく穴でも開くんじゃないかというほど強くコツコツと傘にあたる。
アスファルトに降る雨は、硬い地面に弾かれて水が踊っているように思えた。
紫陽花はこれでもかというほど、綺麗に咲き。白の白線よりもずっと映えていた。
ガードレール向こうの街は霧と雲が覆いもう見えなくなってしまっていた。
もしかして私の方が食べられていたりして。とボンヤリと思った。
プラスチックの屋根に当たる雨は刺すように音を立てる。
道路沿いのプラスチックの壁とプラスチックで雨には当たらない。雨音を静かに聞いていると

赤。

紫陽花よりも、白線よりも、なによりも映える赤が見える。

「こんにちわ。時雨さん。時雨程度じゃ済まないわね」

と水無月さんが微笑んだ。

「もう、ずぶ濡れよ。靴下が気持ち悪いわ」

と赤い傘を畳んだ。

「こんにちわ。ローファーだから幸い中は濡れてないけど、足首部分がね」

「そうね。少し肌寒いわね」

「そうだね」

赤い傘を横に置き、ベンチに座るとカバンの中からタオルを出した。

「あら、時雨さん。カバン変えたの?」

私のカバンを見ていった。

「雨の日ようだよ。ビニール製だからね」

「なるほどね。頭いいわね」

「ありがとう」

友人と同じことを言われたのに嬉しさは倍あった。

「雨が強いわね」

「豪雨並みだね」

「明日は、どんな雨かしら」

「どうかなぁ。いつも通りの雨かな」

会話は静かに終わった。それでも、嫌な空気も流れず静かな落ち着いた雰囲気が流れた。

「バス、遅いわね」

「そうだね」

いつもより、長いことここにいる。
カツンカツンとプラスチックに弾かれる音を聞きながらバスを待つ。

「そういえば、この前食べたチョコ。イチゴの方買ってきたよ!」

「まぁ!ほんと?!」

カバンからお目当のお菓子を出せば、水無月さんは目を輝かせて喜んだ。

「どうぞぉー」

「ありがとう!」

袋から1つ口に入れた。

「まぁ、美味しい!」

「それは、よかった」

2人でチョコを食べたら、気分も上がって学校の話。今日学校に来るまでの話。家での話。ドラマの話。色々と盛り上がれた。

「あら、バスが来たわ」

「え?ほんとだ」

赤と白のバスは霧を割くようなライトをつけながら走って来た。バスに乗ればクーラーが効いていて気持ちよかった。
バスに乗って窓の外を見て入れば、クーラーの気持ちよさにつられて眠たくなった。

「眠たい?」

「え?あ、まあ、うん」

「寝てていいわよ。多分、私も寝るから」

水無月さんは笑った。
私も笑って窓の外を見ていたのを覚えているが、いつの間にか寝ていたらしく

「あ、起きた?」

「え、ああ、うん」

「まだ着かないわよ?」

「いや、大丈夫。ありがとう」

「ふふふ。私も少し寝てたらから」

「そうなの?」

「ええ」

水無月さんは微笑んだ。私もつられて笑った。
バス停に着いて降りると水無月さんが手を振ってくれた。私も振り返した。
折りたたみの傘を広げて歩く。ポツンポツンと強く傘に雨音が響く。
いつもよりも長く一緒にいられた。それが一番嬉しかった。

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