あれから何分経ったのか。ふと目が覚めると窓の外を眺める凪の顔が見えた。
「おはよう」
「・・おはよう」
「あと二駅くらいかな」
「そう。結構寝てた?」
「まあまあかな」
「そう」
「駅に降りたらご飯を食べよう」
お腹すいたでしょ?と聞いてくる凪に、確かにすいたとお腹をさすった。
「今日は、いい天気だね」
「ええ。ほんとに」
少し話をして話が終わった。
まるで綺麗に霧が晴れてくように終わる会話はどこか心地が良かった。
あまり話すのが得意ではない私はこの終わり方がとで助かっていた。
夏が似合う彼女。夏の風景を眺める姿を見て思う。あまりにも夏が似合う。似合いすぎる。私はいつも季節においてそれぞれの儚さがあると思う。
凪は何かを隠してるわけではない。なぜならば、すべて話してくれたからだ。隠しているのではない。彼女自身、なにをどう言っていいのかわからないのだ。きっと。私には言えると言った。私になら言えると言った。だからこそ。今まで言ったことがなかったのだろう。
「私の顔に何かついてる?」
凪の声は、スッと通る声をしている。耳に心地よく通る声は夏に通りすがる青葉の風だ。
「いえ、別に」
「そう」
沈黙が落ちる。見つめ合う。私はこの綺麗な静かさが好きだ。
「みて。海」
青く見えるオーシャンビュー。ディープブルーのその地面は夏の空と混合せずにいた。
「気持ち良さそうだね」
「そうだね」
海が見えるということはわりと遠いところまで来たんだなとふと思った。
「さあ。降りるよ」
いつのまにかついていたどこかの駅。名前も知らない駅。自分の知らない世界にいる気がする。
「お昼はなににしようか」
食べたいものはある?と聞かれて。特にはと答えた。
「お弁当にする?」
お弁当のサンプルをみるとわりと美味しそうだった。
あまり駅弁というものを食べたことがないからか味の予想がつかない。
「食べてみる?」
「ええ。お弁当にしようかな」
「じゃあ。どれにしようか」
「どうしようかしらね」
駅に小さくある店にはおばさんが1人。
電車のみの駅にコンビニではなく店があるのは珍しいと思う。
「私はこれにしようかな」
「私はこれで」
2人それぞれのお弁当を頼んでおばさんにお金を渡す。
ベンチに座ってお弁当を食べる。次の電車までまだまだ時間がある。唐揚げをパクリと食べる。カラカラよりも少ししなっとしている唐揚げはお弁当特有の美味しさを持っていると思う。
「おいしいね」
「おいしいわね」
反対側のホーム壁と青い空と蒼い山を見ながらお弁当を食べるのはなんともいえない贅沢感を感じる。
「あとねー。30分くらいかな」
「電車?」
「ううん。目的の駅まで」
「そう」
「そこからバスに乗るから」
そう言って真っ直ぐに前を向いた。
綺麗な横顔をみる。白い肌は少し焼けていた。
あの白い雲はもうあまり見ない。秋空には飛行機雲がよく伸びるという。その線引きは今日行われるのか。私にはなにもわからなかった。ただ、真っ直ぐに青い空を見上げていた。
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