様が忙しなく鳴く。校長の話は嫌という程長くて私立の高校に入ってよかったと何度思ったことか。公立に行った友達は体育館にクーラーがついていないと嘆いていた。
夏休み中の注意。過ごし方。いろんな話をするけど、3年の私たちは学校に来るからあまり意味がない。
青い青い空には大きな白い雲が串で刺しているかのようにそびえ立っていた。
ミンミンゼミだかアブラゼミか知らないけど何種類かの蝉が鳴きまくっていて頭が痛くなってきた。持って来る水筒のお茶だけでは喉が渇いて自販機で水を買う。
よくおばさん達は、自販機で水を買うなんて。だなんて言ってるけど水は安いし飲めるんなら水をで充分だし、水道の水は濾過してないから飲めない。昔は飲んでたとか言われても、ねぇ。
しかも、最近の水は美味しいのが多いし、味が付いているのもあるし。カロリーもないし。そのぶん、お茶は高いし、高校生には毎日買うとしたらちょっといたい。
今年の夏、みんなは遊ぶ遊ばないで討論がよく行われていて。AOの子達は受かったらより終わったら遊ぶ。とか言って、指定校の子達はここが勝負とか言ってて、自分もそうだなぁと思いながら聞く。でも、毎日24時間も勉強はできないから息抜きが欲しいとか言ってたりする。
「凪は、夏休み中も学校くるの?」
「なんで?」
「将来、わからないのに来る意味なくない?」
「あー、まぁね。でも、家にいてもつまらないから」
「テレビ見ればいいのに」
「ないからね」
「え?テレビないの?」
「うん。色々と高いし面白くないから」
「へぇ」
「そのぶん、スマホでなんでもできるからね。そんなに必要とは思わないかな」
「なるほどね。でも、学校くるのにも暑いじゃない」
「まぁね」
「クーラーが付いている部屋の方がよくない?」
「まぁね」
「・・・聞いてるの?」
「聞いてるよ」
凪はこちらを見ずに真っ直ぐ前にある町並みを見ている。
今私たちは学校が終わり、あの神社に来ていた。日陰となるこの神社の階段に座れば涼しく感じた。
「アイス食べたいな」
ボソリと呟いたその言葉に彼女は反応し
「いいねぇ。なんのアイス食べようか」
と言った。
「なんの?」
「コンビニでもいいよ。高校生って感じだしね。それか、インスタ映えするのにする?」
「悪いけど、インスタはやってないのよ」
「じゃあ、インスタに載せないインスタ映えのアイス」
「なにそれ?」
凪は笑って
「そうだね・・・アフォガードって知ってる?」
いきなりの名前に
「知らないけど」
と返せば
「バニラアイスに珈琲をかけるんだって。食べたことはないけど、この前雑誌に載ってた」
「へえ」
「アフォガードは、イタリア語で。溺れたって意味だよ」
蝉がなく。青い空。影になる凪。
「なるほどね。溺れる。じゃないのね」
「そうだね。現在形じゃないんだね」
「食べたいわね」
「澄乃は、なにかに溺れたことはある?」
「私、泳ぎは得意よ?」
「違くて。なにかに夢中になるとかそういったこと」
溺れたこと。
なにかに夢中になるなんてなかった。いつも当たり前にいつものことをやり過ごしていた。
好きなこともなく、やりたいこともなく。私の人生はこんなにも味気ないものだったのか。彼女に会ってなんだ思ったことか。話す内容。喋り方。身動き。思想。彼女は楽しそうだった。なんでも楽しそうだった。羨ましいくらいに。
「ないわね。ないよ、そんなの」
そう言えば彼女は、楽しそうに笑った。
「だと思った」
「なんで?」
少し彼女の言い方にカチンときた。
「澄乃は楽しそうに生きてないからだよ」
なんだか、ムカムカした。図星を突かれたような、負けたような。
「みんなそうだ。つまらなそうに生きてる。花の女子高生?楽しそうに生きてないくせに、花だなんて!叫ぼうよ!楽しく生きたいって!楽しく死にたいって!それじゃあ、死んでるのと変わんねぇぞ!
」
「楽しそう」
ボソリと呟いた言葉は彼女に届き、笑顔を咲かせた。
「生きようか。澄乃」
炎天下の下。陽が痛いくらいに刺す。
ふんわりと浮かぶ紺色のスカート。白い長袖は膝の下で捲られてて、白いシャツの上に揺れる水色のリボンタイ。まるで空をあらましているようだった。青い青いシュシュで結んである長いポニーテールが揺れる。
くるりくるりと鳥居からのここまでの石道で踊る。
「生きよう、ね」
バカバカしいと笑った。
なんだか、死ぬことは悪くない気がしてきた。人を殺すことは悪いけど、死ぬことは悪くない。生きようなんて、バカバカしい。
凪はこちらを見ていた。両手を広げて、まるで屋上から落ちるように
「バカバカしいわ」
凪は驚いていた。
私は凪の元まで歩いた。暑い。日陰と日向でこれほど違うのか。暑い。陽に殺される感じだ。
「バカバカしいね」
そう笑えば、凪はクスリと笑って言う
「バカバカしくていいんだよ。それが、青春さ」
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