夏は返って雲が多いと思う。
青い空は魅力的だが、雲が白く大きすぎてただの背景に成り下がる。
緑色をした葉っぱは茶色い元気な木に生き生きと映えていた。蝉はずっと鳴く。
「暑いなぁ」
凪がそう言う。汗は止まらなくて、死にそうだ。早く家に帰ることがなくなった私を両親は少し不思議そうにしていたが、凪のことを話せば納得した顔をした。嘘はついてない。ついてないのに、怖かった。お母さんが納得した声を出したあと、そっとため息をついた。
いつもというよりもだいたいは無言でいつも鳥居越しの街と空を見ている。額縁のようなそれを私はいつもなにも考えずに見ている。この静かな時間がわりと好きかもしれない。
「今度、どこか行こうか」
「どこかって?」
「わからない」
どこでもいいでしょ。というようだった。どこでも楽しいでしょと
「自転車旅とか?」
「暑くて死ぬわよ」
「やってみたくない?」
「そんなに」
「つまらないなぁ」
凪は良くも悪くもすぐにはっきりいうから、私はよくイラっとする。でも、なぜか怒れない。やめてしまうのだ。言いたいことを言うのを。
「でも、澄乃って。歩きでしょ?」
「登校?ええ、そうよ」
「私は、自転車なんだよね。これから、自転車乗ってよ」
「いいけど、なんでよ」
「いいのに、理由を聞くの?」
いいとは言ったが理解したとは言ってない。そう言いたかったが、なぜか図星をつかれた気がして黙ってしまった。
「旅、行こうって言ったじゃん」
「急に言わないでよ?荷物とかないんだから」
「だから?」
コテンと首を倒した彼女にため息をついた。
「だって、下着とかタオルとか」
「1日くらい下着を変えなくても死なないよ。それに、べつにコンビニで買えばいいじゃん」
「無駄なお金でしょう」
高校生には無駄使いは鬼だ。
「じゃあ、持ち歩けば?べつに小さな袋に1日分の下着とかとタオルとかそういうのいれとけばいいじゃん」
「服はどうするのよ」
「それこそ、買えばいいじゃん」
まあ、服くらいならと思ってしまっている私はわりと彼女に毒されているのだろう。
「いいね。楽しみ。何しようかなぁ」
こんな田舎。でも、街並みはある。
快速は止まるし、でかいショッピングモールはある。でも、それだけだ。高いビルもない。ビル群もない。しかも。少し郊外に出れば田んぼしかない。
どこへ行く気なのだろうか。
「叫べたらいいね」
凪の一言に言いたいことはあったが、とりあえず頷いておいた。
back next
戻る Madonna