ドレスローザに就てから、モネがパンクハザードにシーザーの秘書として同行することになった。
そこで困ったのが俺の秘書だ。
書類をまとめて、スケジュールを把握して、手をかけてる事業の内容を確認、伝える。
それをできるのはどう考えてもモネだけだった。
科学にも詳しいからという理由でシーザーとヴェルゴを繋ぐパイプというよりも糸電話。
どうしようかと綺麗な天井を仰ぐ。
ヴァイオレットは元王女でこういったことは得意だろうが、人質相手に情報を渡すわけには行かない
ベビー5は、使用人共の管理がある。あと、『頼られて』しまったら、どうだろう。渡すことはないが、渡していいか聞いてきそうな気がする
デリンジャーはまだ若いし、こういうことには向いてない
誰か、俺の情報を漏らさず興味なくまとめて指示をしてくれる奴はいないのか。
綺麗な天井から散らばった書類と睨めっこしてると、扉が叩かれてトレーボルが入ってくる。
「べへへー。ドフィ。んねー。時間だ、行くだろうぉ?」
相変わらずの粗相の中、短く返事をして席を立つ
王としての顔を捨て、こっちが本物とジョーカーの顔を出す
取引は武器。相手は何回かしてるお得意さん
だが、今回で終わりだ。
俺は裏切りを許さない
ファー越しでトレーボルが笑っている。
ベビー5の腕が銃になり、相手の額に向けて銃口をつける。
相手の顔が怯え、青くなり、悲鳴に近い懺悔が聞こえる
俺の武器を自国の戦争に使う。勝ち負けには興味ない。売れることが事実。金が入ってくることが真実。なのにだ。裏切りは許さない。
バンッと大きな音を腕から鳴る。血が飛ぶ。俺にかからないようにベビー5はうまく撃った。
せっかく足を運んだんだ。占拠なんて生ぬるい。親玉が死んだというのに、攻撃をしてくる奴らを指先一つで殺す。
戦利品とばかりにこいつらのデータをもらっていくことにした。俺らが拾わなかった事業。内部金。あいつらだけの取引相手と内容。
執務室のドアを足で蹴り上げる。
誰をいないと思っていた部屋には、女が1人。
淡い光が灯るこの部屋に簡単なシャツにショートパンツ。見たことない白い髪。白い眉毛、白い睫毛。肌は健康的。だが、蒼白い。なによりもその瞳。まるで宝石のような煌めきと色。
驚いてるのかこちらを見て固まってる
「ど、どちら様で?・・ああ、ジョーカー様」
取引があるのを知っているのか、俺の闇の名前で呼ぶ
「何者だぁ?」
トレーボルの言葉に、少し困った顔をして
「罪を償ってます」
ヘラリと笑う
「罪?奴隷じゃなくてか?」
「少し違って、全て合ってます」
「だが、お前の主人は今殺した」
俺の言葉に驚いたのか、また固まった
ドアの向こうから血の匂いがする。彼女も嗅ぎ取ったのか身体が硬直する
「私も殺しますか?」
「出方による」
間合いをとる。殺すためじゃない。言葉を紡ぐための。俺が主導だと
「その眼は?」
「宝石のような形と色をしている。だけの、ただの瞳です」
見たことない。そんな種族も、能力も
「能力か?」
「いいえ、ですが能力者ではあります」
「外見は関係ないと」
「はい。全く。ですが、それが私の罪」
受け答えは上等。リズムがいい
「私はこちらの世界の人間じゃない」
頭が真っ白になる。
「それは、、」
「異世界人というものです」
サラリと答える
「よく売られなかったな」
「生きているからこその価値。と言っておきましょうか」
危険な言葉の返答としては、軽く。笑顔だ
「こちらの世界に来て、まず言葉が通じたこと。読めたことに安堵しました。だが、それは逆に自分の中の警戒を高めることでした。
言葉がわかるから、相手の出す雰囲気の危うさ。言葉の裏。視線の飛ばし方がわかる
私の身体はきっとこの世界では珍しい。だから価値があった」
「俺なら、異世界人として売るか目をくり抜いて体を売る」
俺の返答にも怖がらず、フッと笑う。己も想像してたからか
「生きているからこその価値です。ジョーカー様。生きてるからこの瞳には光が宿る。髪が輝く。生かして所有欲と承認欲を満たすか、ただの置き物にするか。その違いです」
なるほど。口が上手い
「では、罪は?」
「あまりの空腹に悪魔の実を食べたことです」
照れたように笑う。淡い灯が彼女の宝石眼を照らす。真夜中の航海を思い出す色だ
「逃げた先の船底で、そのまま食べれる果物を食してました。暗く灯りがない。私の目は光を必要とします。完全に見えないわけではないですが、鳥目になります
暗い中食べたものは悪魔の実。とにかく不味くて吐こうとしましたが、空腹には勝てなかった」
「それが罪」
コクリと頷く
「捕まり、焦った私は能力を駆使した。というよりも出てしまった。私の首を絞める人の頭を咄嗟に掴んだ。ーーそして溶けた」
「能力か」
「初めて人を殺しました」
「それが罪」
「それは自戒。食べてしまったことが罪」
「能力は?」
「主人曰く、トケトケの実。溶解人間。触れたものは何でも溶かす」
「便利だ」
「実戦には向きません。私の力不足です」
「では、ここで何を?」
「書類整理ーー。秘書と言いましょうか?」
秘書。という単語に片眉が上がる
「性奴隷かと」
「間違いではありません。兼用です」
「フフフッフフ。それは気の毒だ」
「そう、ですね。運が悪い」
「でだーー」
女の前に立つ。
深海のような鮮やかなインディゴブルー。だが、影が落ちればミッドナイトブルー。
海賊には惹かれる色だ。
「罪人のお前は、この後どうする」
俺の問いに身体を固めながら、しかし真っ直ぐ
「死ぬのは嫌です」
「では、」
「飼い主が死んだら」
女が口を出す
白い睫毛か揺れる
「野良になるか、新しいご主人になるかです」
白い髪は肩で跳ねる、ロングよりショートが似合いそうな顔。
海賊が欲しがる色をする。陽の元に当たればどんな色を魅せるか
宝石は海賊の夢だ。多色の
「では、俺のモノになるか?」
楽しく聞けば、少しこちらを見つめてから
「身体をバラバラに売らなければ」
笑う顔はキレイだ
「あと、戦闘に繰り出されなければ」
「いい能力を持っている何か?」
「戦闘能力は低い。守るは私の分野じゃないーーそれに、あなたは守るを要らない人でしょう」
口達者な異世界人だ。なるほど、同じ言語
「では何とする。お前と俺の繋ぐリードは」
顎に手を当てて笑う。女はゆっくり瞬きをして
スッと笑う
「信頼と信用」
面白い返答だ。海賊相手に信用か
「私の居場所を作る。私の価値を見る。私を守る」
「なるほど。では、俺に対するソレは?」
「あなたの居場所を整える。あなたの価値を上げる。あなたを支える」
スッキリとした眼で言う。
「なるほどーー。囲わない、逃げない、決めつけない。価値は変動する」
「だから価値を見る」
「それが結ぶ頃には信頼か」
「信用で結び、結び目は信頼です」
「なるほど、お前は逆か」
顎に置いた手をさする。笑みが口から溢れる
「元の世界には帰る場所がない。滅んでしまった」
悲しく思い出す。瞳の色はまた変わる
「帰る場所をお互いに」
「それが信頼か?」
「いいえ、信用」
「約束よりも奥が深い」
「約束は軽い。これは契約」
これで勝ったというような口調と笑み
久しぶりに面白いものを見つけた
「では、お前は俺のものだ」
「ではあなたのものに」
ここに一つ、契約。そして初めての信用
夜空のような蒼の眼は暖色の俺を見つめる
チラリと部屋を見る。欲深い男の事だ。細い首に絡まるは鉄の首輪
「信頼か?」
嫌味に笑って指を指す。
女は細い指を首輪にかけ困ったように言う
「これは罪です」
「ならば、そこからだ」
海楼石だ。近寄るだけでわかる
力が抜ける。能力者のくせにこれに巻かれたまま過ごしていたのか。割と根気のある。
ベビー5が鍵を見つけるため部屋を探す
「鍵はデスクの3段目。鍵がついてます」
女がデスクに近づいて指示を出す
ベビー5が鍵を壊す。引き出しから鍵を取り出し女の首輪を取る
「取って良かったのですか?」
若。と呟く
どうせ逃げない。これは信頼の始まり。信頼で結ぶ。終わりは信用だ
「ありがとうございます。お陰で元気になりそうです」
微笑む女にベビー5は頬を赤める。相変わらず警戒心がない
「あいつの保持する情報が欲しい」
デスク前の1人掛けの椅子に腰掛ける。
割と上質な椅子だ
「ならば、ここに。どういったものがよろしいでしょうか?」
「武器の管理、取引相手。あと、闇の取引に使われてたもの。全ての顧客のデータと何を取引してたか。あと、金も貰う」
「かしこまりました。他のモノは?」
「必要そうなら貰う。あとは捨てろ」
「はい」
デスク周り。本棚。あらゆるところから書類を集めまとめる。金の場所はベビー5に指示。
力があるところは、トレーボルに頼る
速さといい判断力、奴隷にしては場所の把握に仕事内容が筒抜けだ。いや、罪人か
「随分と慣れてる」
「私が飼われている理由は、容姿・能力・そして処理能力の高さ」
「価値か」
ふふと笑う
「異界では、王族に支えてました」
「フフフフ。王族な」
「滅びましたが」
「滅んだ理由は」
「容姿が煌めくだけで、特に戦闘部族というわけではない。というところでしょうか?
あと、他の生物に比べて生殖能力が低いこと」
「欲無しか」
「不死ではない、不老でもない。ただの長寿。ここの世界との年齢の差がわからないため歳を口にしたところで差がわかりません。そのため、時間の流れが遅い。欲は人よりも薄く。長考は人よりも深い」
「それでは滅んだ」
「といってもいいでしょうか。武器の開発も戦略も上だった。だから生きてこれた。だが、相手のがそれを踏まえて全て整えてきた」
「下準備が勝つことは多い」
「準備をしてないわけではなかったですが、向かうのが強かった。それだけです」
「敗因は?」
「魔法族相手だったことです」
いかにもファンタジー。異界ということが色濃くなる
「魔法」
「はい。魔法を使う族がいる。私たちは魔法は使えない。武器は強い。科学も上。でも、魔法には勝てない。魔法は自然を不自然にする」
「負けた国に価値はあるのか」
「宝石族の瞳は良い。というのはどの世界でもそうなのでしょうか」
「なるほど。よく王国が保てたものだ」
「私たちの国には、宝石眼がないと入らない」
「裏切りか」
「いや、死体の瞳」
奇襲に弱い。負けの理由はそれ
悲しそうな顔して話す。だが、揺れない
「ちなみに歳は」
「ここの世界の時間がどのようなものかわかりませんが、今年で152歳です」
あまりにも膨大な数で口が開く
「んねー!ババァじゃん、んねー!!」とべへへと笑う。
「こちらの世界ではやはりそうなるのでしょうか?」
「さあな。だが、こっちの世界ことを知らないんじゃあ赤子と一緒だ」
紙が束になってまとまる音がする。トントンとデスクに響く
「デスクに出した書類が全てです。一読されますか?」
デスクに近寄り数枚取る。顧客データに俺の知らない。あるいは調べる価値もなかった戦争の内容。
自分が主導とする内紛。随分と悪い奴だ
「全てもらう。それ以外は燃やせ」
「はい。建物も?」
女の瞳が廊下に映る
「不衛生は二次災害です」
「では、すべてだ」
「はい」
ベビー5が書類を金の入ったカバンに押し込む。
「若。この金庫は?」
「壊して開けろ」
「んねー、番号はぁ?」
女を見る。金庫に近寄る
「鍵はあいにくわかりませんが。これで開きます」
女が手をかざす、黒い煙が立つ、細く青白い腕が赤く、黒くなる。金庫が溶ける。扉が開く
「なるほど、便利だ」
「これくらい、いくらでも」
いい拾い物をした。全て回収して、外で待つバッファローと合流する
「誰ですやん」
バッファローの質問に
「拾い物だ」
と短く答える
「消します」
そう呟いて両手を広げ、地に触れる。
手が赤くなり、黒い煙が立つ。ドロンと溶かした鉄のような地形になる。ジューと大きな音を立て一帯が沈んでいく
溶けた煉瓦、溶けた人、溶けたガラス、木
本当にいい拾い物をした
「上出来だ」
「光栄です」
仕事をできることを認識。そして、価値を見つけ見続ける
「お前を見てる」
「見ててください」
信頼のひと結びは完璧
俺を見上げる瞳は、信頼のインディゴブルー
信用は何色になるか