その宝石の3Cは

ドレスローザに向かう道中、甲板にチェアを置き俺は横になりながら女に話しかける
「大袈裟な年齢にしては若く見える」
「こちらの世界ではどのくらいの歳でしょうか?」
「ざっと30から35歳だな。背が小さいからもっと若く見積もってもいい」
「そ、そんな若く・・いえ、基準が違いますね」
「そっちの世界ではみんなそんなもんか?」
「もちろん、両親ならびに祖父母も居ました」
過去形。戦争の名残がチラつく
「ちなみに歳は」
「詳しい年齢は忘れましたが、祖父が確か350歳を迎えていた気がします」
あまりの数に、先ほどの話を聞いてなかったバッファローは驚く
「嘘ですやん!そんな数聞いたことないですやん」
「嘘ではないですよ、もっと年上がいました」
ガキの考えた数のように聞こえてつい高笑いが出る
「王族に支えていたと言ったな」
「はい。給仕を主に」
「上の立場か」
「うーん、中間?」
説明が難しいのか笑いながら言う。
夜空に当たる瞳はアイアンブルー。昼間は何色か
「瞳はみんな同じ色か?」
「いえ、それぞれ違います」
「遺伝か?」
「そうですね、両親の分配にもよりますが。うちは青系統です」
「色によっての差別は」
「無いこともないですが。王族は紫と決まってます。紫を作るのは赤と青。赤系統と青系統は王族に近い仕事を。黄色や緑、薄い色味・・水色黄緑などはそれ以外の。自由な職業を皆選べます
それが歴史、文化、伝統、現在も続く。いえ、続いてましたので。変に思うこともありませんでした。子供が悔しさまじりに言う程度ですかね」
「分別がつく種族か。内戦もいじめもなさそうだな」
「無いとは限りませんが、色が違うことで戦争などは起きません。色の違いを個性とし、それについて考える。この色が良かったなど持つほうが面倒です」
「さすが、長寿なだけある」
欲は浅く、孝は深く
「こちらにきて、皆さんの目の色があまりにも暗くて驚きました」
ふっと笑う。唇は綺麗に曲がる
ベビー5がひとつ
「確かにそんな瞳の中じゃ、地味にも程があるわ」
フーと紫煙が舞う。彼女の吐いた煙を目で追いながら
「夜だからでしょうか。夜はもっと暗い。血に似てて。でも、陽に当たれば意外にみんな色はあるんですよね」
灰色とか、それこそ青とか。黒が多いけど。と呟く姿に
「血?」
ベビー5が聞く
「私の血の色は黒いです」
また衝撃
「まて、黒い血だと」
「んねー、んねー!ドフィ。黒い血って言えばさぁ」
べへへーべへへーと笑う。サングラス越しに女と目が合う
「確か、いくらかオークションに出てたな。黒い血。ただの血液に惹かれることはなかったが珍しさに買う奴もいた。もちろんそういう趣味のやつも」
「まさに私の血、です。浅く切れば黒。深く切れば漆黒。ひとつでもバラせば元に戻らない」
「だから手元に」
コクリと頷く
「戻らないと知ればもっと貴重です。人は守るに徹する。軽く見せびらかしては手元に置きたがる」
「見られたか」
肯定の笑み
「世界中探してもこの血は手に入らない」
「生きているからこその価値」
俺の言葉に笑う。俺の口角も上がる
「分からないことは、ベビー5かモネに聞け」
「はい」
「モネはお前の前任。1ヶ月間お前の先生だ。ベビー5は城の従事者たちの管理人」
「よろしくお願いします」
「ええ、こちらこそ・・。元々王族に仕えてたなら似てるんじゃないかしら」
「では、一度城の仕事を一から」
「お前は秘書だ」
俺の言葉に女が呟く「秘書」
「俺の仕事は多数ある。いい事悪い事。ちなみに俺のことは?」
「ジョーカー様と」
裏の顔だからジョーカー。顔は知られない。だが、知ってるやつは知ってる。知ってるだけだ
「お前の前ご主人様は俺の顔を知ってたからな。国王に着く前に知り合った」
「国王様、、ですか」
コバルトブルーが揺れる。正確にはカラットが度を変える。俺は上半身を起こし、胡座をつくり膝に手を付く。少し前のめりになって女を正面から見つめる。白い毛たちが風に揺れる。柔らかそうだ
「俺の名はドンキホーテ・ドフラミンゴ。王下七武海の1人。ドレスローザ王国現国王」
天竜人はふせる。全てを話す必要はない。
「海賊が国王になれるのですか?この世界は」
「フフフっ、そこが面白い。モネにでも国の内情を伝えて貰えばいい。それを管理するのもお前の仕事だ」
「はい、私の仕事」
よく分からない顔をしているが、仕事ということだけを拾う。いい興味のなさだ
「ところで、七武海とは?」
そうかそこから、俺は顎を薄く引きベビー5を見る
ベビー5が身を乗りだす。了解の合図だ
「すごくわかりやすく言えば・・世界を整える世界政府というのがある。そしてそれを支える柱として偉大なる航路には三大勢力があるの。
海軍本部・四皇と呼ばれる海の王者4人と政府公認の海賊、それが王下七武海」
「公認の海賊ですか」
「まあ、要するに何をしてもいいわけじゃないが何をしてもいいということだ」
「司法との癒着ですか。面白い」
「深く考えるなよ。事実だけだ」
俺の一言に頷く。
「若は王下七武海としても活躍なさってる。月に一度聖地マリージョアから招集がかかるわ」
「マリージョア」
「天竜人が住むところよ。天竜人とは、世界を創造した末裔。この世界の神たち」
「神がいるんですか?」
「ーー神とは名ばかりの人間だ」
俺の冷たい言葉に静まる。トレーボルが俺を見てる
「あいつらに買われた奴隷は刻印を押される。天翔る竜の蹄。それを受けたら一生奴隷だ」
「では、そうならなくてよかったです」
深く知ろうとしない。事実だけを受け入れる
「ジョーカ・・若様が世界の偉い人ということはわかりました」
「それだけで十分だ」
深く知ろうとしない、事実を受け入れる。欲は薄く考えは深く。考えるのは自由だが表に出さない。興味もない。いい
「べへへー、んねーんねー。お前の国のトップはどんな奴ダァ?」
女に話を振る。少し考えてから
「瞳は深い紫。誰よりも白いそして銀に光る髪。考えは素直、しかし深い。欲は薄く。ですが必要な欲は濃い。道標としては上質。皆の光そのものです」
失った悲しみを瞳に乗せる。光に当てられ水が包むその瞳、流しはしないが溜まる。綺麗だ
「いい指導者だ」
「はい。最後までお供するしたかったです」
「それを俺に向けろ」
「では、信頼を」
俺が頷く。ーー彼女が微笑む
「船は明日の朝着く。寝ろ」
「はい、寝ます」
ベビー5と船の奥に消えていく。
「んねー、んねー、ドフィ。あいつファミリーに?」
「分野が違う。あいつはただの雇用。おれはあいつを守る。それが俺の仕事だ」
「裏切りは?」
「できない。あいつは居場所を欲しがってる。逃げる場所もない」
「なるほど。囲む必要も逃げる必要もない。いい使い物だ」
「フフフ・・いい拾い物をした」



甲板に出る。天気は快晴。空の道は作れない
「おはようございます」
二つの音が重なる
「べへへー、おはよぉ」
「ああ」
「おはようだすやーん」
ベビー5と出てきた彼女を見る。瞳が光る
光が当たり瞳の青さが変わる。スマルトからセルリアン
「綺麗だ」
俺の無意識のつぶやきに彼女が照れる。
白い髪に白い睫毛。頬の赤がよく映える
「あ、ありがとうございます」
「ほんとうに、羨ましい!」
「ベビー5は、綺麗なものが好きだすやーん」
ベビー5が彼女の頬に手を添える。胸の奥がズルリとした。無視はできる
「ベビー5の素直なところ、私は好きですよ。素敵です」
彼女の言葉に顔を赤くした。仲が良くなったようだ
「惚れるなよ」とバッファローが小さく注意する
ふと彼女を見ると海を見つめている。同じ色だ
「海が気になるか」
「海・・好きです。私の色」
ふっと笑う。
「海の色は変わる。今日は天気がいい」
「私の瞳も同じです」
「だから光」
彼女が頷く
「朝に光を浴び、昼間に溜め、夜に使います。後は寝るだけです」
「屈折か」
「私の王国はすべて白で出来てました。こちらから見る太陽は白、白い岩を砕いて建物を作る。白は光を反射します」
「白い国か」
白い世界、まるでフレバンス。いつかの面影を思い出す
「俺の国は夏島だが。暑さはいけるのか」
「わかりません・・ですが、これよりはマシかと」
片腕を上げ、指先から肘にかけて赤から黒。少し煙がたつ。溶けた匂いがする
「べへへー!べへへー!いい冗談だ」
「まずは朝食だ。船がついたらまずはファミリーに会わす」
「はい」
楽しみですと笑う



愛と情熱、そしておもちゃの国。俺の王国、ドレスローザ
到着するとファミリーが俺たちを出迎える。おかえりの挨拶に短く返事をするが、皆の目線は俺の斜め後ろ
晴れ間の光を浴びて、白い髪は輝く。瞳はもっと輝く
「俺の秘書だ」
俺の言葉にみな驚く。あのピーカも驚いた顔をしている
「その容姿は」
ディアマンテが覗き込みながらきく
「異世界人だ。秘密にする必要はないが、イダズラはするな」
俺の言葉にみなが締まる。いい反応だ
「俺はお前を守る。それが仕事だ」
俺が笑いながら言う
「ありがとうございます」
「信頼だ」
「はい。ひとつ結べました」
「では、信用か」
「いずれは」
今はそれでいいと笑う。同じ内容を受け取り彼女も笑う。意思の疎通が楽で助かる
「モネ」
呼べばモネが分厚いメガネを上げながら出てくる
「はい。若様」
「お前の後任だ。残りの1ヶ月でこいつに仕事を叩き込め。ーー安心しろ、元王族の従者だ」
「御意」
短く答え、彼女を見る
「モネよ。早速だけど、城を案内するわ」
「はい」
俺に一瞥して2人で城の奥に進んでいく
「おい、ドフィ」
ディアマンテがきく
「そのまんまだ。異世界人。自世界は滅んだ。眼は光を必要とする。血は黒。食べてしまった実はトケトケの実。だが、戦場には出さない。懸賞金も無しだ。ただの雇用。俺は雇い主。それだけだ」
「血が黒いだって?」
「ああ。ーーちなみに歳は152歳だ」
また一同が驚く。あまりの驚き用に肩が揺れる
「嘘だろ」
「だが、こちらの世界のことは無知だ。昨日船の上で七武海について教えてきた」
警戒心が高いグラディウスが「まるで赤子」と呟く
「仲間だが、ファミリーではない」
「1番いい立ち位置だ」
チュパっとセニョールがつぶやく
「フフ、よろしく頼む」
俺がそういえば、しょうがないのG!とラオGを筆頭に了解の合図を出す
挨拶もそこそこに今後の仕事についての話をスートの間に移動した


夕方
日が翳ってきて、夕飯の準備をしているだろうキッチンからいい香りがしてくる
「お帰りなさい」
モネが何やら書き物をしている。隣で妹のシュガーがグレープを食べながら同じセリフを言う
「彼女は」
「問題なさそう。分からないことは聞く。聞き返す。苦手分野をわかってるのは強いと思います。知らないをほっとかないのはいい姿勢」
欲は薄く、考えは深く
「今は?」
「ベビー5に。夕飯の有無を聞いたら手伝いに行くとーーそれから、服を着替えさせました。シャワーも貸して。服はなかったからとりあえず私のお下がりを」
「ああ、助かる」
「必要なら買いに」
「任せる」
「御意」
ベビー5が夕飯だとみんなを呼ぶ。
お腹が減ったとゾロゾロとダイニングに向かう。夕飯はみんなで。ここでのルールだ
それぞれが席につき食事を始める。ふと扉から入ってくるのは、衣装が変わってスラックスを履いた彼女
「ワインを」
そういう彼女の瞳はまだ明るい。室内だからか瞳は影を入れる。落ち着く色だ。プルシャンブルー
「ああ」
グラスに赤い液体を注ぐ。ワインボトルの底を持ち片手でトクトクと入れる。食べ物が所狭しと並ぶこのグラスに迷いなく。
グラスの膨らみ部分まで注ぎ、少し手首をクルリと動かし注ぎ口の垂れを防ぐ。
みんなの目線が止まる。口はわざとらしく動く。気になるなら見ればいいのに。動きは完璧。
「完璧だ」
そのまま口にすれば、軽いお辞儀
「光栄です」
「お前の価値だ」
「はい。嬉しいです」
認める。価値を見る
「また、信頼か」
「簡単な信頼です」
「では、結ばない」
俺の言葉に軽く頷く。左足を軽く引きキッチン奥に戻る
「なぁ、ドフィ」
ディアマンテは彼女に興味があるらしい。好奇心は隠せない
「アレをどう使うんだ」
秘書。というだけでは足りないらしい
「あれは使わない。だが、城の中で使う。俺を支え上げるために」
ふっと笑う。
俺の返答に満足したのかしてないのか、曖昧な雰囲気を出しながら視線を動かす。
空いた皿を下げる彼女の動きは、その道の人間そのもの。完璧な動きの中に動く視線。でも、対象には気付かれない。上手だ



「仕事はどうだ」
寝る前、部屋に呼ぶ。夜の灯火の色をする。昨日見たインディゴブルー
「はい。すぐ慣れるよう努めます」
軽くお辞儀のまま答える。お辞儀が綺麗だ
「顔を上げていい。お前の価値だ」
「はい。では、場を読みます」
上手い
「ああ」
「では、また明日」
白い髪が揺れる。白い睫毛が下がる。そこから覗く青は、ラピスラズリ
今日の信頼はラピスラズリ。明日も信頼を結ぶ