泡沫の水模様

「これは?」
ドフラミンゴはテーブルに置かれた料理を指差す
「お好み焼きです」
食べたくなったのでテイクアウトしました。そう言いながら部屋着を取りに部屋に向かう。
お好み焼き。
初めて聞く食べ物だ。この黒いソースがすごくいい匂いを出してる。目玉焼きにしては黄身と白身が混ざってるものも見える。野菜も入ってるようだ
「たべましょー」
部屋着に着替えた女がドフラミンゴに着席を促す。素直に従い椅子に座る。
「いただきます」
「いただきます」
同じセリフを繰り返し、箸を持つ。食べ方がわからず女を見ると縦長に切ってくれたブロックを一つ持ち上げ、ソースのついた面と潰れた卵。野菜。そして白い生地を一緒に持ち上げて、フーフーと口で冷まし。パクりと食べる
それをみて、ドフラミンゴも真似する。
口に入るそれは、ボリュームがたっぷりで、揚げ焼きっぽくなってる麺の香ばしさと水分を含み甘さが増した野菜。ソースの甘辛さが癖になる
「うまいな」
ドフラミンゴが口をパンパンに膨らましながら伝える。先に口内が少なくなった彼女は嬉しそうに笑う
「そうやろ?うまいんよなぁ」
ドフラミンゴがこの部屋の主と過ごすようになったのは、約半年前と3ヶ月前。
ドフラミンゴは自分の部屋から出たつもりが、開けた先が見たことない世界だった。
肺を突くような煙を出して猛スピードで走る鉄の塊。光が漏れてる鏡張りのビルが何個も並ぶ。
いつも広く見える空はスキマにしか見えず。今の時間帯がよくわからない。人は自分の胸くらいの高さがなく、みんな自分を見ては目線を逸らす。みんな何に急いでいるのか、ぶつからずに早足で動き回る。黒い線が空を駆け巡る。潮の香りも全くしないこの場所をプラプラする。ファーコートを着てよかったと思うくらいの肌寒さを感じる
人が少ないと思ったら、同じような家と四角く長い壁がいくつも並んでいる。よく見ると等間隔に窓があり時より人が入り口にから入っていく
よくわからない世界で帰り方もわからない。試してみたが能力も使えなかった。
行き場所がなく、腹も減り、適当に人が居ない公園らしき広い場所でベンチに腰をかけた。
街頭の白い灯りが濃くなり、空にオレンジが消える。星が全く見えない。月はあるのに
空を見上げていれば、砂を踏む音
「お兄さん、大丈夫ですか??」
声をする方を見れば、女が1人。ビニール袋を持ち立っていた。気になるのは右足についてる補助器具
「え、あ、外国の人かな?ハ、ハロー?」
四角い箱を手に持つと光出して、なにか操作している
「なんだそれは?」
ドフラミンゴの言葉に女が目線を上げる
「あれ?日本語通じます?よかった。英語話せなくて。これですか??スマホです、知らないんですか?」
「しらねぇな。ここはどこの島だ?」
「島?えぇと。日本です」
「聞いたことねえ、島だ」
「嘘でしょ。日本ですよ?日本語話してるのに?」
「グランドラインのどこらへんだ」
「え?グランド?なに?なんて言いましか?」
話が噛み合わない。みたことないモノ。聞いたことない音。どうやら、世界が違う。ドフラミンゴは瞬時に判断した
「どうやら、俺はこの世界の人間じゃないようだ」
「ほお?」
「所詮、異世界人というものだ。帰り方が全くわからん」
「えぇと・・トリップ?」
「そうだろうな。知らないものが沢山ありすぎる」
「なるほど?」
「おれは、今、帰る場所がなくて困ってる」
サングラスに困惑してる女の顔が映る
「金もねえ。この世界の知識もねぇ」
どう出るか。高笑いを喉で鳴らす
女は少し考えると
「なるほど!じゃあ、家来ますか?」
簡単に提案してくる。海賊として生きているドフラミンゴは呆気に取られる
「異世界人でしょ?ちょっとワクワクしますね。あ、よかったら一緒にご飯食べましょ。今日トンカツの予定なんです」
とんかつが何かよくわからないが、楽しそうに話す女に笑いが止まらない
「不用心だな」
「えぇ。だって困ってるように見えるから」
なんとも心優しいことだ。平和ボケした発想に笑みが濃くなる
「困ってないん?」
少し口調が変わっている女の質問。こちらも少し楽しくなってきた
「フッフッフッ。ああ、困った。腹が減って死にそうだ」
ドフラミンゴの返しに女は嬉しそうな顔をして
「そしたら、トンカツ。すぐ揚げますから、スーパー行きましょ」
差し出されたのは小さな柔らかい手のひら。
傷ひとつない手は、貴族のようにみえる
その手を軽く掴んでやるとまた嬉しそうに笑う
「お兄さん、大食いそうやけど、お肉何枚食べる?」
「お兄さんじゃない、ドフラミンゴだ。とんかつが何か知らないが。そうだな、3枚は食べれるんじゃないか?」
さ、3枚も!?女が急に焦り出したのを横目に笑い声が高くなる
身長が3メートルから180センチくらいに縮んでいたため、腹がはち切れそうになった。それでも完食したドフラミンゴをみて、衝撃を受ける女の顔が面白いのは余談である。


半年も経てばこの世界のことくらいわかってきた。日本と呼ばれる小さな島国で戦争もない。平和だが戦後という言葉で敗戦であることを知った。女は戦争を体験したことがないと言うので、なんとも羨ましいことだ。
先日食べたお好み焼きは美味しかったし。また買ってきて欲しい。
「ドフィさん。よかったら、水族館行きませんか?」
彼女はヨギボーにもたれ食後の酒として彼女が買ってくれたスーパーのちょっといいワインを透明のグラスで飲みながら首を傾げる
「私、水族館好きで。ドフィさん、海賊してたなら海に近づきたいかなって」
洗濯物を畳みながら話す。今畳んでいるのは買い与えてくれた俺の下着。
「水族館か。なんだそれ」
「海の生き物を展示している、施設です」
いや、ちょっと違う?首を傾げながら説明する。
それは俺のシャツ
「水族館デート、しましょう」
ちょっと照れたように言うから、気が良くなる
「いいぜ、デートしてやるよ」
ドレスローザ現国王で七武海の自分にデートの誘いをするなんて命知らずだ。
その価値も力も無意味になるんだから、困ったモノだ
彼女はやったーと呟き水族館の話をする。畳終わった洗濯物を片付けるために立ち上がった。
脚の補助が音を立てた


翌朝、化粧をしてめかし込んだ彼女が振り向く
「かわいい?」
「フッフッフッ、ああ。カワイイ」
お決まりのトークをする。彼女に買ってもらった白ティーとポンペーイのスラックスズボン。ファーは目立つからと変わりにローザヅンブリヤのロングカーディガンを羽織る
「行きましょ」
靴を履き外に出る。昼前だから少し暑い
デンシャというものに乗って、水族館に向かうそうだ。彼女は俺のチケットを買うと、使い方を教えてくれた。自分はスマホをかざしただけだった。そっちのがカッコいいから興味ある
あの四角の箱はなんでもできて便利だ。俺の島にも欲しいが、シーザーに作れるだろうか。発明はDr.ベガパンクの得意分野か
綺麗に整備された海の隣にある水族館とやらは大きく。いろんな魚がいた。こちらの世界じゃ見たことない形のものが多く。すべて小さかった
「海獣ですか?」
「ああ。海王類ってやつが海にいる。長くてデカい。デンシャとよりも大きくて長いんじゃねえか」
ひゃーと呟きながら大水槽をみる。
そこにはエイやサメなど大きめの生き物が沢山いた。
「さっき見たイルカみたいなのもいるんですか?」
「ああ、いるぞ。あまりいないけどな」
美味くない。食べるんですか??なんてくだらない話をしながらベンチに腰掛ける。
平日だからと人も少なく、ずっと薄暗く青さ世界を堪能してても誰も文句を言わなかった
「いいですよね。海の世界って」
水槽を見上げる瞳は照明の反射でキラキラしてた
「私、泳げないんです。潜ったこともなくて。プールとか入った記憶も薄くて」
脚の補助器具が音を鳴らす。膝から伸びるようについている補助器具は足枷のように見えた
「筋ジストロフィーって知ってますか?」
知らないと無言で伝える
「どんどん筋力がなくなって。歩けなくなって、腕も動かせないし口も動かせない。1人で食べることも動くこともできなくなるんです。
この脚。補助があってもちょっと動かしにくくて。サポートを頼むにもまだ弱くて。
私、親と仲悪いから」
ポツリポツリと話す。
「生まれ変わったら、シャチになりたいんです」
聞いたことない生き物だ
「黒と白の、海の王者。すっごいかっこいいんです」
スマホで調べて見せてくれる。可愛らしい見た目のデカいやつ
「優雅に泳いでて。誰にも屈しなくて。家族と仲よくて」
暗い影を落とすのは初めてだった。
仕事がキツイと嘆いてる姿は何度も見たが、仕事ができないようには見えなかった。
この国は脚の怪我程度で差別対象か。片手がフックのやつだったいるのにな
「ドフィさん、強いんでしょ?いいなぁ。海賊楽しい?」
下から見える瞳はキラキラしている。まるで白浜に映る水光
「楽しいも何も。生きていく上で必要だっただけだ」
フッフッフッと笑う。彼女はそれでも、目の輝きを失わなかった。
補助のついた脚をみる
「私、いつか動けなくなるんです。その前にドフィさんの世界を歩いてみたかった」
「俺の世界は、そんな平和ボケしてたら死ぬぞ?」
「ドフィさん、守ってくれないんですか?」
当たり前のように聞いてくる。そんなこと、俺の世界じゃ聞いてくるやつなんていない。
「フフフ。いいぜ、守ってやるよ」
右手の指を癖で曲げる。能力の試しにと何度もしてきた。なにも出ない。
「あまり動かしすぎると痛くなりますよ」
何をしているのかわからないがいつもヨギボーの隣で俺のことを見ていた。
ため息をつく。
「また、ため息。その動きの後はため息を付きますね。幸せ逃げちゃいますよー」
相変わらず、変なイントネーションのついた言葉だ。
そろそろ出ようと立った時。大水槽の上にある光を覗いた。クラりとして頭を抑える。
「おはよー。若様」
ハッとすると薄暗い水族館。彼女がまだゆっくり立ち上がり、俺の右手を借りている最中だ。
なんだ今のは。パッと光を見る。何も起こらない。だが、感覚でわかる。俺はもうすぐ帰るだろう
デンシャの時もスーパーの時も、散歩の帰り道、たまたま出会わせて家に帰る時も捕まらせてた右腕。そこにいつもあった温もりと重みを手放すと思うと何か惜しい。
平和ボケした彼女は、自分の中で最弱で。すぐ死んでしまいそうな存在。パソコンを打つのが早くて、服を選ぶのが好き。脚は動かなくなる。身体も
「ドフィさんの国にも行ってみたい」
右腕に捕まりながら話す。なんと手の柔らかいことか。
「俺の国か?俺の国にはおもちゃが生きてるぞ」
えぇ!なにそれ、めちゃおもろいやん!楽しそうに笑う彼女の瞳はキラキラしている

##

あれから何日もすると、日に日にデリンジャーの声が近くなり感覚が伸びてる気がする。
散歩するにはちょうどいい季節だ。ここは季節が一周するらしく。留まらないらしい
「ドフィさん」
帰り道、そろそろかと思ってのんびり歩いていれば彼女が見える。足枷は健在
「今日の夕飯は?」
「ふふふ、今日はエビフライです。エビ好きですよね?」
ロブスターだ。軽く答えて右腕を差し出す
「ドフィさんの香っていいですよね」
今日はこの周辺だったからファーコートをきていた
「こっちにはない香水なんだろうなあ」
「フッフッフッ。これは南の海で調香師に頼んだオリジナルだ」
「わあ、すご。さすが国王やわぁ」
ケラケラと楽しそうに笑う。
家に入り、夕飯の支度をする彼女に告げる
「おれぁ、もうすぐ帰るぜ」
ピタリと動きが止まる。
無言が響く狭い部屋。随分と俺の荷物も増えたもんだ。金もないくせに俺のためにと色々と買い込んできてはしまってる。
ゆっくりとこちらを見る。化粧が少し崩れた顔。それでも瞳は相変わらず整って綺麗だった
「そ、うですよね。帰る時、来ますよね」
悲しそうな声を出す。
「寂しいか?」
「寂しいです。ドフィさんのこと。好きやったから」
拗ねたように言う。可愛らしくて笑いが出る。
「お前の脚が動かなくなる前に、俺が迎えにくる」
顔が少し固まる
俺のために動き、俺の周りを整える。こんないい従者が他にいるか。俺が見つけた。俺のもんだ
「あっちに行けば、俺が糸で手足くらい作ってやる。その病気だって治す」
可能かはしらねぇが。あいにくオペオペの実はあの裏切り者が食べてしまった
「俺が来るまで、足枷だけつけていろ」
綺麗な眼からはポロポロと水が流れる
「俺のもんを取り戻しに来て、何が悪い」
なんせ海賊だ。また来ると伝える。いつも感じる重みは胸に置く。
小さい頭を見下ろす。心配される右手は頭の上。
「待ってます」
涙のカバーで光る瞳は、水光に似ていた


「おはよー。若様」

ふっと意識が上がると、ベット横にシュガーと、一緒に遊んでいたのか。デリンジャーがいた。
枕にもたれかかるようにして眠っていたらしい
「昼寝だなんて。珍しいわね」
モネが2人の後ろから歩いてきた
なにか長い夢を見ていたような気がする。むくりと起き上がりあぐらをかく。ため息一つとサングラスのズレを治す。
「若様、跡ついてる」
まだ幼いデリンジャーが俺の右腕に触れる。
見れば、右腕に袖ボタンの後。手を頭の後ろに組んで寝ていたから跡になったのか。
ふと右手の体温に違和感を覚える。デリンジャーの小さな手。それよりも少し大きくて柔らかい。ほぼ体重を預けるようにして掴んでいた体温と重みが感覚として残っている
「若様?」
返事もせずに右腕とデリンジャーの手を見つめていたから、声をかけられる
何もねえよ。と笑いデリンジャーの頭に手を置いた。頭の感触も違う。だがら何かは覚えてない。きっと何か夢でも見ていたのだろうと意識を変えてベットから降りた。


&&


いつも通り通勤のため、扉を開けたら知らない国だった。
というよりも、知らない世界。おもちゃが自分で動き、喋ってる
女性は驚くほど胸が大きくウエストが細い。
石で形成されている建物。なんだこれは
ふらふらと歩く。異端なのかみんなこちらをチラチラとみてくる
「旅の人かい?」「どこの島の人?」
言葉は一緒なのに日本は知らないという。書いてある文字は英語。全くよくわからない。
歩き疲れて人影のない場所を探す。人気がない場所を選ぶほど上にあり上に上がっていく。
ひまわり畑が目に入り、そこを見渡せる階段を数段上がり腰掛けた。
脚の補助機が少し痛む。
風が強く吹き、カーディガンを揺らす。
このカーディガン。曖昧なピンクが可愛くて着ているが、どうみても男ものだ。元彼が置いていったのだろうか。それにしては、やけに新しい。
男物の下着とTシャツが1、2点ほど家にあり置いていった記憶もない。
ただ、このカーディガンからする香りはすごくいいもので落ち着くのだ。オーバーサイズすぎるカーディガンを少し腕に縮め、お尻から太ももの付け根下までの裾。チャコールのスラックスを煽ってしまうほどだ。
空を見れば、綺麗な夕焼けで。そういえば、都内で働き出してから空の色なんて気にしてなかったなとノスタルジアを感じる
爽やかな夏の風が吹き、日本の湿っぽい夏を対比として思い出した
しばらく空を見ているといつのまにか夜になっていた。このままどうしようと周りを見るが建物ひとつない。屋根がある場所を求めて長い階段を登った
補助機があってもしんどい。ゼハァと息を切らしながら階段を上り切った。
大きなお庭と建物が見える。もしかして、お城だろうか
不法侵入してしまったかもしれない。慌てて立ちあがろうとして、脚の筋力がなくなったのを感じる。膝から崩れて四つん這いになる。脚がいたい。とにかく疲れた。朝から何も食べてない。寝坊したから食べれなかった。こうなるなら食べればよかったと嘆く。
そこにふと、人影を感じる
「だれだ、お前」
見上げれば背の高い、何メートルもある男が2人。その横に黄緑色の髪の毛を持つ美女
声をかけたのは、赤色が入った帽子を被る男。目の前には剣。
見たことない光景に、息を呑む。恐ろしさで冷や汗が大量に背中に流れる
「あ、あ。え、と。私、気づいたらこの国にいて。それで、彷徨ってて。行く当てなくて」
矢継ぎ早に話す。きらりと光る剣先が恐ろしい
男の後ろから、なにか生き物を背負っているのかと思うほどのファーコートを着ている。変なサングラス
「ん〜?おまえ、どこでその香水手に入れた」
男の言葉に首を傾げる
「こ、香水持ってなくて」
「ならなぜ、そのカーディガンから俺の匂いがする。それは、俺特注の香水だぞ?」
楽しそうに笑う顔。笑顔に恐怖を覚えるが、どこか懐かしく感じる
「あ、このカーディガン。私のじゃないんです。いつのまにか家にあって」
へこたれたままカーディガンの袖を伸ばして両手内側を向ける。やはりいい匂い
「フッフッフッ。俺の香りが家にあるのか?お前、どこの島の出身だ」
「日本です」
「ニホンダァ?」
やはり知らないと首を傾げる。知ってるかもしれないと思っていただけ少しショックだ
「その脚は?」
黄緑ヘアの美女が尋ねる
「補助機です。私、筋肉が弱くなっていく病気で。その内、死ぬんです」
居た堪れなくて目線を足におとす。
自分に影ができるのを感じて前を見れば、ファーコートの男。
「なんだ、立てねぇのか」
そういうと腕を掴み立ち上がらせる。勢いに負けてつんのめったのを掴まれてない手で彼の右腕を掴んでしまった。どこかで触れたことがある体温だ
「・・・どこかで会ったか?」
同じことを思っていたのか、彼が尋ねる。今度は自分が首を傾げた
「ないかと・・出勤しようと家を出たらここにいて・・」
「なるほど、異世界人か」
目が合う。といってもサングラスと
風が吹き、ファーコートの羽が鼻を掠めた
落ち着く香りだ。私の好きな匂い
「私、この香り知ってます。ずっと探してた気がします」
考えもなしに呟くと、彼が少し考えてからにやらと笑う
「フッフッフッ。奇遇だ。俺はこの重みと温もりを探してた」
なんでだろうなと笑う。独特の高笑いが耳に馴染む
「ほんまですか?やっぱりどっかで会ったんかな?」
つい、素の言葉を話す
「フフフ・・フッフッフッ。その変な言葉遣いとイントネーション。どうも耳に馴染む」
前世でも同じだったんでしょうか。楽しそうに伝えれば楽しそうに笑う
「フッフッフッ・・どうだろうな」
高笑いは止まらず笑顔も消えない。
知ってそうな人に会えた喜びに笑って仕舞えば、彼が自分の顔を見て微笑む
「その瞳・・・みたことがある。宝石だったか?俺が奪いに行こうと思ってた何かに似ている」
その言葉になぜか言葉が詰まり涙が出た。自分でも驚いているのに、彼は驚きもせず長い指で涙を拭ってくれた
「フッフッフッ!!やはり前世か?おれは、この涙を知っている。本能だ。離すなと告げている」
楽しそうに笑う。怖い言葉がなぜか懐かしい
「足枷だけはつけていたんだな」
なんのことがわからないと首を傾げれば、彼も言った言葉が理解できないのか。ん?と口をへの字にする
なんだかそれが面白くて笑ってしまう。それを見ながらも笑う
昨日の会話の続きのように感じるが、昨日の会話すら思い出せない。
でも、それが心地よくて、求めていた何かであると。今2人、腕越しの体温を感じ合うのだった。