ノックの後返事をする前に扉が割と乱暴に開く。見えたのは黒いアーマーブーツ。赤い靴下がブーツから少し覗く
「わかサマー」
木箱を抱えて、片手にバインダーを持ち少し見ながら入ってくる。手が空いてないから足で開けたか。大方、バインダーの手でドアノブを下げたが押しにくくて脚で押したんだろう。ここは俺の部屋だぞ
のんびり俺のことを呼びながらデスクに近づきドカリと荷物を置く。傷がつく
「戦利品でーす」
こちらを見ずに報告。なんの戦利品なのかも言わない。バインダーを捲りながら呟き、会話を続ける。ドフラミンゴの口角が下がる
「カイドウ様からスマイルのサイン書。あと、これはカウンター島での勝敗結果と売り上げについて。それからぁ」
ポイポイ話しながらバインダーから紙を取り出してデスクに並べる
俺が作業中なのがわからねぇのか。自分のやりやすいように整えてたデスクは新しい書類が散らばりイラっとする
「あと、船なんですけどね。今月ドッグに入るのが3隻。ドッグ終わりが2隻なので1隻ない状態で1ヶ月スタートします。そのため納期がちょっと遅れる可能性があります。喧嘩になる前に伝えれる場所には伝えてます。特にカイドウ様とCP共」
持ち込んだ木箱を漁る。適当に入れてきたのか上にあって邪魔なのをデスクに置いていく。
散らかる。やめろ
「はい。これ。ご所望の宝石です」
名前なんでしたっけ?首を傾げながら奥に入ってた小さな箱を目の前に置く。無言で受け取り中身が合ってるか確認する。
「以上です」
はい終わりと散らかったものを片付けもせず俺を見る。せめて出したモノくらい箱に戻せ
「なにか?」
キョトンとされると何を言えばいいかわからなくなる。何度も言った内容で、直らないことで、些細すぎて言葉にするのが面倒だ。
ぐちゃぐちゃにされたデスク。この前から文鎮として使っていた黒石を無くしてから紙の整理が少し大変なのだ。
失った片目を隠すように漆黒の眼帯を親指で少し戻す。血をべったり塗ったような赤い瞳。首までのボブヘアを頭を振ることで髪の毛を整える
「あと、若サマの船。ヌマンシマでしたっけ?あれ、変えません?」
「ヌマンシ、ア。だ」
「結構古いし、いざって時腐ってたらまずいですよ。最後に使ったのだって、モネさまをパンクハザードに送った時以来でショ?デザインもダサいし。今時っぽくしません?」
「俺の船を茶化すなんざ、いい度胸だ」
青筋が音を立てた。覇気が漏れているのに気にしてないのか気付いてないのか、ケロンとしたまま
「え?茶化してないですよ。知ってます?世の中には潜水艇があるんですよ」
知ってるも何も、あのローの船だろ。情報としてなら知ってる。頂上戦争で麦わらを迎えにきていた。
「潜水艇って頭いいですよねー。敵に合わないし、海軍にもバレない。裏もかける」
サイコー。呟きながら俺の前にあるソファに掛かる。王の部屋で自由勝手にするなんてお前だけだ。
「若サマ、いいモノ見つける目をしてるんだから。船のデザインくらいいいモノ描けそうですよね。あの船、どうせジョーラさまのデザインでショ?」
着岸してすぐこちらにきたのか上着が少し汚れている。それを気にもせず人のソファにもたれかかる。土がつく。俺特注の上質なソファだ。砂がついたのを気づいたのか、適当にパンパンとソファを叩く。そんなんで取れるわけねぇだろ
「・・・俺のデザインだ」
「ウッソー」
ちょっとバカにしたような顔と口調。言った俺が負けた気になるのはなんでた
「んジャ、変えましょ。国王になったんだし。そろそろ替え時です。もうちょい威厳がある船にしましょ」
ウォーターセブンに依頼しておきますねー。なんて言いながら手持ちの紙に書き留めていく。
「変えなくていい」
やめろと止めると、不思議そうな顔をする。そんな顔するな
「まあ、必要になったら言ってください」
なんであきらめてねぇんだ。俺の船だぞ
ノックが3回。ジョーラの声。入ってくる人物がわかればソファから立ち上がる
「届けに来たザマス」
「ありがとーございます」
イェーイとジョーラからラックをもらう
「なんだそれは」
「若サマの衣装です。今度の商談。ドレスコードありですよね?」
忘れてた。なるほどそれで、スーツか。後ろにはメイドがカートを押す。上にはネクタイが見える。引き出しにはシャツやカフリンクスか
「衣装合わせは今から?」
俺の予定を聞いてくる。今は忙しい、後でいいだろう
「ジャあ、また、後で」
承知とジョーラが下がる。こいつを置いていくなら、連れて行け
バタンと扉が閉まる
「そういえば、俺が依頼してたアレはどうなった」
持っていた書類をデスクに放り投げる
ンー。とか呟きながら俺の部屋に作ってある小さなカウンターで作業をする
「じゅんちょーですよ。スマイル様様ってところでしょうか」
来月あたりには完成予定ですよ。そう言いながらカウンターからいい香りがする
「しかし、10分の1の確率のスマイルに頼るのも面白い話ですよね」
カチャリと音を立ててデスクに置かれたのはコーヒー。嗅いだことないモノ
「途中で寄った島の特産品です。香り高くスッキリとした味わいです。お気に召したら嬉しいです」
カップを取り香りを楽しむ。確かに嗅いだことない花の香り。花の豆とは粋なもんだ
「朝ごはん食べました?」
無言で飲む俺を見る。赤い瞳が光る
「ブランチですかね。あとで通りのクロワッサン買ってきます」
「ああ」
「アレですよね。ラネッサル・トゥルゥネックの。3個?」
2個?と指を作る。2個で頷き、承知と頷き返される
「しかも、別に強くもない動物系。勿体無くないですか?それだったら、超人系とか自然系を有望なやつに買ってあげたほうが効率がいいというか。育てがいがあるというか」
「プレジャーズは確かに邪魔だな」
「まあ、いい盾にはなりますよね。笑う以外脳がないし」
「人が多ければ多いほど強いけど、その運営費用も高くなりますからね」
「ワノ国の国民が頑張るんだろ」
「いっそ、プレジャーになったら下に下げられればいいのに。でも、そしたら反発生みます?」
「そうだろうな。いい盾として使うにはそれなりに育てていく必要くらいあるだろう」
「実の内容にもよりますよねー。虫とか、チョっとね。弱いし。欲しがってるのは恐竜系なのに」
「お前は、カイドウに気に入られてるだろ」
ドフラミンゴの言葉に眼帯がこちらを向く
「そリャ、まあ、そうですけど」
「お前の能力のおかげで繋がってるか?」
「いやいや、若サマの手腕でショ」
眼帯を指で少し持ち上げ戻す。小さなくせか
「その気なら、飛び六法に入れるだろ」
「エェー、私は若サマがいいー」
嬉しいことを言ってくれる。だが、その口で俺のお酒を勝手にあけるのは許せない
うまーいじゃねえよ。それは北の海産の酒で新世界に出回ってないんだぞ
「若サマも私がいたほうがいいでショ?」
楽しそうに笑う。こちらの覇気も読まずにシャアシャアと話すもんだからピキリと青筋が音を立てる
返事もしてないのに、気をよくしてる。だからそれは俺の酒だ。全部飲み干すなよ
「逃げ足が早いだけのお前なんか、カイドウに食われるに決まってる」
小さく呟けば、俺を見る
「シンパイしてくれてるんですか?嬉しいなぁ」
全く違う。嫌味だ。なぜわからない。そのくせ、営業トークは1番うまい
「またシュガーたちがお馬さん。してほしいんだとさ」
まだ幼いデリンジャーや少し女になってきたベビーでさえも、こいつの変身には心を踊らせる
「いいですよー。なんなら、若サマも乗せて走りますよ」
「フフフ、結構だ」
「エェ、楽しいのに」
お酒をやめ、ガチャガチャと木箱を漁る
「そうだ、これ。お土産です」
ドンとボトルを雑にデスクの、しかも俺の書類が置いてある上に置く。ああ、もう、本当にムカつく
「ワノ国の日本酒。辛口。塩が効いてるのがイイ肴」
「飲んだのか」
「カイドウ様と一杯」
なぜ仲がいいのか全くわからない。シーザーとは折り合いが合わない。主にこいつが悪い
だから、パンクハザードよりワノ国船に乗ることが多い
「そりゃよかった。で、スマイルの数については特にか?」
「ん?何がですか?」
「最初にサイン書出してきただろ。アイツが何も言わずにサインしたとは思えない。何か言ってなかったか」
「アー、もっと当たればいいなあって」
ほんとかよ。適当に聞こえるぞ
「他には」
「恐竜がイイって」
「研究中だ」
「大変だ」
「で?」
「ん?」
暇そうに土産の酒を見ながらソファに座ろうと戻る
「いつお使いに行くんだ」
「なんの?」
「あ?」
お前がのんびりする場所じゃない。
ピキッと青筋が出る。何度目だ
「クロワッサン。買ってくるんだろ」
自分から言ったお使いを俺が思い出させる。合点がいったのか、納得した顔して
「行ってきます。私のコーヒーも入れておいて下さい」
今度こそ青筋が我慢できない。覇気が漏れた
「いってきまーす!」
俺の窓を勝手にあけて、脚を恐竜にして飛び出す。
窓を勝手に開けたことによって書類がバラバラになる。風に吹かれ床に数枚落ちた
イラっとした時、ひょこっと窓から顔を覗かす。爪でも立ててしがみついているのだろう。きっと穴ができてるはずだ。それ、やめろって言ったよな。減給だぞ
赤い目と目が合う
「これ、返すの忘れてました!じゃア買ってきまーす」
眼帯を指であげて中から小さなものを取り出す。ポイと俺に使って投げ受け取ると同時に姿を消す。
俺の手のひらには、無くしていた黒石
あのやろう、義眼代わりに俺の石でバランス取ってやがった
イラッとしながら、コーヒーを啜る。一口飲んでカップの中は空。エスプレッソにすると濃いが量が少ない。おかわりしようと立ち上がる。
ああ、ここまでもあいつの計算なんだろうな
*動物系 リュウリュウの実。モデル ヴェロキラプトル