*男主
*ファミリー古参
パリンと音がなった。不注意で手鏡を落としてしまった。ああ、これ。ベビーのやつだ。しまったな。頭を右手で掻く。また新しいモノを買ってやろうと落ちた破片を拾う。指を怪我しないようにゆっくりゆっくり
「なにしてる」
声をした方を見ればドフィが立っていた。口をへの字にしてポケットに手を突っ込みながらオレを上から見下ろす
「ベビーの手鏡、落としちゃって」
しゃがみながら答える。右手に集めた破片が少しチクチクする
「そんな風に持ったら、キレちまうぞ」
ドフィがしゃがんでオレの右手を指差す。ダンテ色のサングラスにオレが写る。それから、右手の破片が写ってキラキラと反射している
スパイダーマイルズから出て暖かい気候の海域に出た。金の回収とオークションのために船を出した。もう少しで目当ての島だ
「あとは箒だな」
右手に破片を集めたまま立ち上がる。ゴミ箱に捨てようと背を向けゴミ箱を探す。その時ら身体が硬直したので犯人に視線を送る
「フッフッフッ。ゴミ箱はそっちじゃねぇ」
丁寧に教えてくれたが、普通に声をかけて欲しい。身体が解放されたのを感じて向きを直す。ドフィの後ろについていけば、部屋の角にゴミ箱があった。その中にパラパラと破片を落として、癖で両手をパンパンと払ってしまった。チクチクが増して少し痛んだ
「おいおい、なにやってんだ」
ドフィが笑いながらオレの手のひらを見る。
「癖で。中に入ってはないと思う」
そうか。と声に出さない返事を受け取る。幹部たちは一癖二癖もあるからオレとの会話は比較的静かに行われる。実はドフィは静かな空間の方が好きだったりする
ワインレッドのスーツは相変わらず似合ってて、オレには似合いそうにない。そういうところもカリスマ性があると思う。オレがドフィの衣装について直視しているとオレの右手に視線を送っているのに気づく。ふとみると、親指に切り傷があった。やはり切れていたか。でも、たいしたことないから気づきもしなかった。もっとざっくり割れていたら流石にわかる。表皮だからか鮮血がプカリと浮かんでいる。飴玉のようなフォルムが親指に乗る。舐めれば治るだろ
オレの口に持っていく前に、ドフィの糸が親指に到達してオレの皮膚を縫い合わせた。わざわざしなくてもいいのに
「お前は、絶対ほっとくからな」
ドフィだって、他の奴らだってそうだろ。と笑う。相変わらず、冷徹で残忍なボスのくせにファミリーにはゲロほど甘い。ザラメを溶かして飲み込んで甘ったるさに吐き戻すような感覚を鳥肌として体に刻む。
ドフィの糸が窓の太陽に反射して白く透明に光る。その先端が赤く見える。見聞で見えるその糸をオレが掴もうとするとそれに気づいたドフィが糸の先端をオレに送るように操ってくれた
「汚れちゃったな」
オレの血がついた糸を治してもらって親指で擦る。血が取れたのを確認して離す。
「フッフッフッ、構わねぇよ。お前のだ」
クリームブリュレを思い出す。
島に着くと連絡が入る。ドフィのコートが揺れるのを見ながら後ろについていく。花びらが舞うように見えるピンクの羽は王の歩く道を飾るようにゆっさり動く。やっぱり、オレはこの人の後ろがいい
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「クソ、この、裏切り者がッ!」
久しぶりに会ったローは大きくなってて、コラソンが治すといった通りに肌も褐色になっていた。命をかけて盗んだオペオペの実だ。
調子が狂うRoomを展開されて、オレの身体が四方八方に散らばる。
やっとのことでかき集めた身体。見失った右手は放っておいた。麦わらに吹っ飛ばされたドフィが海軍に捕まり海楼石を付けられているのを城から見つける。
10年。乳飲子が歩き喋り、自分で自分の世話ができるようになる年齢まで育つ。それをなかったことにされた。悔しいとか、苛立ちとかそんなんを感じる余裕もなかった。
終わった。ただ、それだけが胸に静かに落ちた。ふと横回ればドフィがいつも座っていたソファが横たわっている。主人を失ったソレは派手やかな装いをしているのに寂しそうだった。
ドフィ。オマエこそが王になる男だったんだ。
突き落とされたあの時から、オレたちはオマエの後ろ着いて歩いていたんだ。これからもそうだろ。なぁ。夢を、まだ見せてくれ
手をソファに伸ばそうとして、右手を失くしたことを思い出した。オマエが塗ってくれた親指は皮のサイクルで綺麗になってしまった。
全てが消えていった感覚をなんと表したらいいのだろうか。
ドレスローザの夏の匂いが肺にこびりついた。