2日目

今日の天気は晴れ。雲はあり。空の道は作れる
「おはようございます」
昨日は夜更けまで起きてたからか、昼頃に目が覚めた
とりあえず腹が減ったのでダイニングに向かう
給仕のメイドが頭を下げる。
「コーヒー、それと軽いものを」
「かしこまりました」
メイドが下がる。白い髪を探すが居ない
「おはよー、若」
大きなあくびをしながらデリンジャーが入ってくる。
「ああ、おはよう」
「私は牛乳と若と同じものを」
他のメイドに告げる。メイドは頭を下げて奥に帰る
「昨日の子は?」
「さあな、まだ会ってない」
「えぇー、挨拶してないの?」
「たぶん、モネと一緒だ」
「忙しいのね」
キャー、私は忙しいのきらーい。と笑う
「あら、若様。おはようございます」
仕事中のベビー5がダイニングに顔を出す
「ああ」
「デリンジャーも」
「おっはよー」
挨拶の途中でメイドが2人、飯を運んでくる。いい匂いだ
「彼女は?」
ベビー5がデリンジャーと同じことを言う
「見てない。モネだ」
そう告げれば、ああ。と軽い相槌
コーヒーの香りが広がる。俺の好きな豆。サンドウィッチを食べて書斎に向かう
曲がり角から白い光が見える
「おはようございます」
朝に浴び昼に溜まる。充電中の青はターコイズ
「ああ」
「あら、若様」
後ろからモネがメガネを調整しながらこちらに顔を向ける
「よく寝れました?」
多角的に取れる言葉を俺は肯定する
「ああ」
「では、この後」
俺の短い言葉を聞いて一礼。白い髪も垂れる。肩で跳ねる髪に無意識に指が触れる
「・・午後。夕飯までの間必要なものを調達してこい」
髪に触れたまま告げる。言い訳としては上出来
「はい。若様」
「買い物はモネと」
「はい」
昨日と同じシャツにショートパンツ。適当な見た目。だが、白い髪に白い睫毛。キラリと色を変える瞳があれば落ちることはない


午後
モネと一緒に俺の書斎に。書類の管理はやはり得意か。モネのルーティーンについて行ってる
ジョーカーとしての書類と王としての書類を分ける。必要なことを伝える。俺の書いたことをまとめて返せる内容は今返す。モネの顔は通常。ならば、支障がないということ
「では、少ししたら買い出しに」
「ああ」
「ジョーラも行きたがっていたので、一緒に」
「好きにしろ」
モネとの会話を邪魔しない角度で、書類を全て受け取る。ただの従者としては完璧
「夕飯までに戻ります」
夕飯はみんなで。ここのルールだ
「失礼します」
扉を閉じる。ため息をひとつ。昼から起きたからかやることが迫ってる。空と海の境界線は薄い


夕方
買い物が戻ってきていたジョーラとモネ。
「んまー、若様。彼女いいモデルざマス」
素敵な宝石!白い髪!とはしゃぐ
「服を数着。従者のためか暗い色ばかり選んでいたので止めましたが」
「暗い色か」
「血が黒だからか、黒はあまり選んでなかったです。灰色を数点。それから」
モネがそこまで行ってくすりと笑う。首を傾げる
「また後で」
と意地悪に言う
ジョーラも楽しそうに笑う。嫌な気はしないが気になる
談話室にみんなが集まってきたので、ダイニングに俺も移動する
食事を始める。俺の好きなロブスターを口に含んだ時視界の端にみえるは白い髪
「ロブスターなら、白を」
昨日ようにワインを持つ。服は新調したのか濃紺のジャケットに足首までのスラックス。少しヒールのある紫のパンプス。勝色のシャツに従者の証に首元にはシャルピーナ
そして
「髪・・切ったのか」
顎ラインでパキッと揃えられた髪。傷んでるところが減り全て滑らかに見える
「はい。ジョーラ様に似合う髪型を選んでいただきました」
ふわりと、照れながら笑う。昼に溜めた光はオリエンタルブルー
「よく似合ってる」
俺の言葉にまた赤を注す
「ありがとうございます」
「ほんとに!可愛いざます!」
ジョーラは意気揚々と彼女を褒める。顔が照り始める
「いいなぁ、私もお買い物一緒に行きたかった」
ねーとベビー5とデリンジャー
「また今度一緒に行きましょ」
モネの言葉に頷く2人
「ワインは?」
彼女が少しボトルを傾ける
「ああ」
ボトルの底を持つ、グラスの膨らみに注ぐ、少し手首を回す、垂れない。トーションで口を押さえる。完璧
「いい腕だ」
「光栄です」
これもお前の価値だ


モネと2人で俺の部屋に訪れる
執務室は閉めた。今日は終い
「買い物、ありがとうございます」
光に当てられ白い髪が少し橙の色が移る
「いい買い物をしたな」
夜のお供には赤ワイン。銘柄は西の海の銘品
「昼間、触れられたとき。あまりきちんとしてないのを思い出しまして」
「短い方が似合うと思ったが、正解だったな」
また照れる。よく照れるやつだ。綺麗な瞳も白い髪も生まれつきなのに。
「若様。明日は」
明日のスケジュールを組む。彼女はモネと一緒に。会議も参加すること。やり方を叩き込ませる
「根を上げないところがいいわ」
自分の都合とリズムを崩さないモネの教えは、確かに厳しい
「猶予がありません」
困ったように笑う
白い睫毛が揺れる。光に反射して濡れて見える
光を使った瞳はプルシャン、インディゴ
「よく聞きよく動く、観察が得意ね」
「嬉しいです」
「本当のことよ」
「だからこそ、嬉しいのです」
上司と部下。同じ内容の仕事は信頼が早い
微笑ましい限りの2人を見て笑う
「シュガーが嫉妬するな」
俺の意地悪にモネが笑う
「あの子はそんなこと思わないわ」
分厚いメガネを頭の位置で手直す。
モネやベビー5より小さい彼女は首が疲れそうな俺たちの目線を先読みする。先に読み、動き、整える。いい従者だ。王族の教育をうかがえる


深夜
ワインもほどほどに寝床につく。
サングラスを取る。明かりを消す。暗い部屋の中で風の音だけを聞く。やはりいい島だ。ここは
あの日を思い出すと口が笑う。
小さなノックが聞こえる
「若様」
珍しい客だ。入れと伝えサングラスを付け直し、ベットの上であぐらをかく
「お休みのところでしたか。申し訳ありません。出直します」
「いや、いい。なんだ」
「こちらを」
彼女の手にはカップがひとつ。首を傾げ持って来させる。中は暗くて見えないが、少しぬるい
「白湯です。塩をひとつまみ」
ワインの口直しだ。タンニンを優しく流す
「フフフ、よくわかったな」
「ワインの銘柄についてはよく分かりませんが、お供として教えていただきました。ラベルにはアルコール度数。品種。味について。給仕のキャプテンにも聞きました。タンニンが深く、喉越しは深い。辛くはないが重い。さっぱりとした葡萄ではなくそこにずっといるような葡萄」
「一緒に飲むか?」
「光栄ですが、下戸です」
心良く引ける返しだ
「口に残る重さを軽くするには水、よりも塩が少し効いた水。冷えは全ての敵です。白湯で」
なにより落ち着きます。と笑う
目線だけではなく、知識の提案
「いただこう」
カップを受け取る。白湯を口に含んで溜めたものを少しずつ喉に通す
白湯にしたのは正解。塩もいい
「上出来だ」
「光栄です」
「お前はその目線と知恵の高いところが上手い」
「ありがとうございます」
ふわりと微笑む。月明かりが彼女を照らす
白い髪は銀、白い睫毛は光り瞳は変わる
暗いからか夜だから、使い切った光はミッドナイトブルー
「俺からの信頼だ」
「結びましたか?」
「ああ、結んだ」
彼女が嬉しそうに笑う
「また、明日です」
飲み干したカップを受け取る。手が少し迷った、鳥目か
「光は使い切ったか」
「まだ少し」
「気をつけろ」
「はい」
頷いて下がる
「おやすみなさいませ」
「ああ、おやすみ」
扉が閉じる。月が青白く見える
ミッドナイトブルーの空にベビーブルーに光る月
この日は深く眠ることができた