今日の早朝まで続いていた昨日の夕立が上がった。窓を見ればいつもの太陽があって、庭師が植えた知らない花が光って見えた
青空が広がり、心地良さそうな風が吹いている。ドレスローザは今日も快適だ
昼頃になると太陽が頂点に昇り、夏島のカラッとした気候が渦巻く。カーテンは閉めず、部屋の日陰で涼みながら本を読んでいると外から聞き慣れた羽根の音がした。やっと帰ってきたかと窓を開けに行けば見慣れた鳥
窓から入ってきてバタバタと羽を動かして部屋に小さな台風を作る。カーテンが揺らめき俺のコートが裾を上げる
「戻りました」
眩しそうにしながら答える。夜鳥にはこの明るさがしんどいか。岩が盛り上がってできているこの島は太陽が近い。でも、お前の羽の方が近いだろ
疲れたと、ひと呼吸ついてオレのベットに腰掛ける。
「足を戻せ」
そのままだった鋭く黒い爪が光る鳥の足。3本の指は小さくなって人の足になる。磨かれた深緑のショートブーツが滑らかに光を反射する
「遅かったな」
もうお昼は過ぎて、夕方前だ。昨日ひどい夕立があったから心配したのに連絡一つよこさないなんて、教育の届いてない部下だ。笑みが深くなる
「雨宿り、してました」
飛行郵便のグローブを外して、麻のジャケットも肩から下ろす。白いノースリーブから日を当てない腕が出てくる。こいつから嗅ぎ慣れない匂いがする
「どこにいた」
オレの質問に、少しだけ固まってちょっと楽しそうに笑う
「お届け先です」
そうか。そいつぁ、世話になったな。
オレの笑いを受けて微笑む。いつからそんな悪い子になったんだ
「レッドラインを超えるのは、大変だったろ」
ソファに腰掛け、足を組んで見つめる。
「休憩しながら行きましたよ」
あえてオレの欲しい答えを出さないか。面白い
糸で操るのは面白くないから、そのままにしておく。肘置きに肘を立て指先でこみかみを支える。
日が落ちてきた。
ひと段落落ち着いたのか、オレのそばに寄ってきてしゃがむから足を解いてやって顎を乗せてやる。骨盤をテーブルのようにして腕を組んでおき頭を乗せる。夜鳥特有の瞳孔が鋭く光る
「でも、赤い大陸は超えてませんよ。新世界にいました」
優秀な飛行係だ。敵の配置は確認済み
「お土産です」
かチャリと音を立てるのは、ホルダーにかかる3つの鍵。ひとつは嫌な気配
「ただの鍵か?いらねぇな」
「私のお土産。くれたの」
報告ではなく、自慢。いつの間に仲良くなったんだろうな
「頑張ったのに、褒めてくれないんですか?」
コテンと首を傾げるから、手を頭に伸ばす。軽く撫でて頬を人差し指で往復する。顎下に移動して擦れば心地良さそうに笑う。可愛らしい奴
眠たそうにあくびをするから、眠いのかと聞けば眠いと帰ってくる。そのままオレの承認も取らずに膝を上りオレの骨盤に腰掛け、胸筋に頭を預ける。俯いて見える瞳は睫毛が光を拾う。ふとポケットが膨らみを押し付けてくるから勝手にズボンの中に手を入れて出してみれば懐中時計。オレがあげた奴
「飛行中、壊れたんです。でも、まだ動いてるから使ってます」
別に珍しいモノでもない。新しいの買ってやる。
「なんだったか。時計屋の。オスカーだっけか」
「ルスカーです」
「そこの頑丈な奴、買ってやる」
ソレを床に放ると音を立てた。きっと、もう使えない。視線は懐中時計だが、諦めの色だ
近いとより、苦い香りが強くなる。オレの甘い匂いは嫌いか
首に鼻先をつけて、若様甘い。なんて呟くから笑みが深くなる。口から出る吐息が首にかかる。どこで覚えてきたんだが
オレを上目遣いで見上げる。腕を首に回す。唇が近くなる。滑らかな黒髪を撫でて少し頭をホールドする
「ん。この柔らかさがいい」
「フッフッフ、乗り換えて忘れたかと思ったよ」
「じゃあ、思い出して」
都合よく言葉を変えてきやがるから、楽しくなってきた。
夕飯まで時間がある。デザートを先に食べても怒られないだろう。溶けて甘い唇はなんとも美味で、お前は苦味より甘味の方が似合ってる。