5日目


シュガーはグレープを貰うためダイニングに足を運ぶ。
しかし、昼時も終わる頃。ダイニングには使用人はいなかった。今頃掃除にかかってるだろう
それと仕込み、片付け、夕飯の予定組
しょうがないとダイニングを引き返す。庭に出れば誰かいるだろう。あの妖艶なマーメイドたちときっと若も一緒だ。あとは、グラディウスはいるだろうな。忠誠心が異様に高い奴だ。おそばを離れないだろう
水飛沫の音が廊下に木霊し始めたとき、白い髪が見えた
特に会話をはじめとしないが、嫌な気はしない
「ねえ」
そういえば初めて声をかけた
いつも姉の後ろにくっついてーというのも当たり前だが。歩いている姿しか見てない。あと、夕飯のダイニングでワインを注ぎ皿を下げ料理を出す。従者というのは本当なんだとその姿を見て思うことはある
「はい」
そういって腰を折ろうとする彼女。そうか、彼女は知らないのか
「やめて、私こう見えても15歳」
私の言葉に驚く彼女
「申し訳ありません」
知らないのだからしょうがない。ため息を少し薄くついた
彼女の正した姿勢をみる。下から見る瞳はさらに上にある光よってもっと煌めいて見える。きっと彼女を見下ろす彼らにはこの煌めきは違って見えるだろう。屈折だ
「グレープ」
要件を短く言う。きっと分からないだろうと思っていたから、首を傾げられても何も思わない。
来た時よりも短く揃えられた白い髪がタラリとドミノのように垂れる。髪を耳にかける。癖なのか全ての指を少し広げ間を櫛のようにしてかける。髪の生え方なのか、髪の毛の間から耳が生えてるようになった。耳くらいの長さの前髪が揺れる
「グレープ。持ってきて」
短く、わかるように伝える。頷き
「かしこまりました」
「庭にいるわ」
それだけ言うとそのまま庭に向かう
そういえば、姉とは一緒じゃなかった
「モネは?」
「モネ様ですか?執務室です」
モネの所在を聞いたわけではなかったが、そう聞こえてしまった。
「一緒じゃないのね」
「15時までは自由時間です」
人質、奴隷、捕虜ーーどれかに属しそうな立ち位置なのに、自由ときた。ほんとうに雇用で秘書だ
「何してたの?」
今は14時過ぎ、太陽が1番高い
「キッチンの手伝いが済んだので、光を溜めつつ窓拭きの手伝いを」
そこで彼女が手にしているバケツと雑巾に気がつく
自由を城の管理に回すとは。仕事人間だ
「それ、楽しいの?」
なんとなく聞いてみた。世界のこともわからず一文無しだ。自由といっても自由にはなれないだろうに
「楽しいーーは特に。ただ、やること、やるべきことです」
「窓拭きが?」
「光も溜めれます」
「休みなさいよ、自由なのに」
パッと無意識出た言葉に自分でも驚くがすぐに落ち着く。仕事の合間なんて寝るかグレープを食べていたい。ただ、でさえ姉の仕事は利用が多い
「休みつつ出来ることを。なんでもできる自由は私には冷たいものです」
ふわりと笑う。先程シュガーが思ったことを彼女は言葉にする
「仕事人間」
「私の価値です」
彼女の価値。その瞳と血の色、出身。それだけでも価値のはず
庭からマーメイドたちの声がする。それこそあそこに入ればきっと若のお気に入りだ。みんなの憧れの的になれる
「その容姿があるなら、使えばいいのに」
庭を見ながら呟くシュガーに、首を少し傾げる
「彼女たちは、綺麗です」
「その見た目で、彼女たちに負けると?」
「私はただの宝石眼で白い髪なだけです。特にスタイルも顔も優れてる訳ではありません」
確かに、それらが黒かったら普通だろうか。綺麗な方ではあると思うが、マーメイドたちには気後れする。そこで思う、確かに同じになって仕舞えば特別はないのだ。その瞳も髪も『異なっている』から特別なだけで。そして彼女はその異なっているところで生まれ育った。こちらとの価値も見方も全く違うのだ
「だから、仕事で?」
「生きているからこその価値は、多角的に示されます」
ふわりと笑う。彼女の笑みは羽ように舞う
「グレープはいつく用意しますか?」
優しい声に意識を戻す。光を溜めていたからか瞳はいつもより輝いて見える。下からはグラデーションの薄い場所アザーブルー
「ボールいっぱい。キッチンの誰かに聞けば私専用のボールを出してくれるはずよ」
軽く指示を出す。かしこまりましたと一礼。白い髪が揺れ前髪からは白い整った眉毛。長い白い睫毛。そこから覗く瞳は先程と色が変わり深みが増す。シアンと微かなダックブルー
庭に行くとマーメイドたちに囲まれながらプール前中央でふんぞり代える若。後ろの屋根があるバルコニーにはやはりグラディウス。マッハボイスとカードゲームしてる
「よお、シュガー」
若がマーメイドからシャンパンを受け取って私を見る。無言で若の隣に座る。定位置
マーメイドたちが私を見る
「グレープを」
「要らない。持ってくるから」
マーメイドがそばにいる使用人に声をかけようと手を少し上げたところでやめさす
若は定期連絡の電々虫で相棒と会話をする
難しいことはわからないが、平穏なのか今日の会話は雑談にも聞こえる
「シュガー様」
マーメイドが一斉に黙る。彼女を見たことないのかもしれない
「お待たせいたしました」
私専用となったボールには綺麗なグレープがたくさん。幹から取ったグレープは水を弾きその雫が光を反射する。だが、それを差し出す彼女のが光っていた
素直に受け取ると彼女は一礼して戻ろうとする。窓拭きと光の充電に向かうらしい
その姿を見た若は、いつもの高笑いをする
「さっそく頼まれごとされるとは。よく無事だった」
少しの嫌味と意地悪。私は悪い気はしない
モネにこの国の内情を聞かされているはずだ
「シュガー様はお優しいです」
ふわりと笑う
ボールの中のグレープをを口に含み一つずつ指に挿そうとすると、いつもと違うことを見つける
グレープに小さな穴。爪楊枝を刺したような
私の視線に気づいたのか目が合う
「種がないか確認しました。果汁は一滴も出てません」
私の好きな笑みをする。
「これは、もともと種無しよ」
私が告げると、少し固まり焦った顔色
「え・・え、あっ。そ、そうなんですね。種のない葡萄があるのですか」
「これは、グレープ」
「ち、ちがいは?」
「言い方なだけ。グレープのが可愛いし大きい」
そうなんですかと小さい声。焦ったのか少しニヤつきながら髪を耳にかける。ひと束落ちる
焦りと恥の赤さが白い髪に映える
「フフフッフフフ!!」
若の高笑いが庭に響く
「そっちじゃあ、そんなものがなかったか」
「いえ、あ、その。はい。種がないグレープは初めて知りました」
「グレープはあるのか?」
「同義とするなら、葡萄は。このように大きな葡萄はありません。ピュレーネという果実が見た目は似てますが苦味があります」
あと明るい紫色ですと付け加える
「ひとつ賢くなったな」
意地悪に言う若。もっと赤くなる彼女
照れるとニヤつきながら下を向き掛かりきらない髪を必死にかけようと手を動かす癖があるようだ
可愛らしいと周りが微笑む姿に年上すぎる彼女はもっと赤面する。青い瞳が赤くなりそうだ
マーメイドたちも彼女の姿を見て近くに感じたのか話しかける。わりと露出した姿に困惑しながら返事をする彼女
高い位置に太陽がある時間。瞳は全面的に光を溜める。ベビーブルー、ターコイズ、セルリアンとグラデーションにも見える。カラット付きの不思議な瞳。同じ見た目の瞳なのに形が少しデコボコしてるように見えるが触れたら硬そうだが粘膜で水晶のように見える
「ここにいたの」
モネが庭への扉から出てくる
「探したわ」
「すみません」
濃紺のおしゃれなスーツ。ハイウェストのカマーベルトような腰から曲げる
今日のシャツは半袖の水色。暑いからか。従者の証のシャルピーナは見えない
「みんなと仲良くなれたようで嬉しいわ」
嫌味ではなく素直な意見を告げる
マーメイドに囲まれ、若が楽しそうな笑いを出す
私がグレープを頬張り後ろでグラディウスとマッハバイスが特徴的な笑いを出す
「掃除は他の使用人に託したわ」
フフと笑いながら告げる
「ああ、、すみません」
「いいのよ、シュガーにグレープを頼まれたのでしょ?」
姉の言葉に先ほどのことを思い出してまた赤面
姉は首を傾げる
「種無しを知らずに生きてきたらしい。シュガーのグレープを態々全て棚の有無を調べたんだと」
簡単な説明を若がする。モネは少し固まって楽しそうな声を出す
「可愛らしいわね」
「やめてください」
勘弁してくれとばかりに手のひらをモネの方に突き出して俯き赤面
いつもとは違う笑い声が響く庭。
青い瞳より赤い顔のが張り付いた



夕飯も終わりお腹いっぱいとデザートのグレープも貰おうと使用人が立つかべを見ようと目線を運べは
「お伺いします」
と片手にトーションもタオル掛けのやつにして立つ彼女。昼間と変わり濃紺のジャケットを着ている
シャルピーナがないからか少し寂しく思える
「グレープ」
そう告げれば、微笑み頷き
「かしこまりました」
キッチンの奥に引っ込んでいく
「いいなぁ、私もデザート頼めばよかったぁ」
「戻ってきたらアイスを頼むんだすやん」
頭に乗った大きなリボンからメイドがするカチューシャに大きく変わったベビー5とバッファローが横から言う
「ええー、ワタシも頼めばよかったぁ」
デリンジャーがまだ夕飯を食べながらいう
成長期なのかよく食べる。性が揺らいだのはきっと育ての親のせいだとジョーラを視界のハジで見る
「おまたせしました」
ボールにグレープを山盛りいれて持ってきた。彼女からボールを受け取り、チラリと見る。私の視線に気づいて首を少し傾げ笑う。それを見て口角を少し斜めにする
「確認はしたの?」
私の言葉に一瞬、迷いを出してから赤面
「あっ、、してませんよ」
柔らかい口調で焦ったように否定する。可愛い
それを見てから指に刺していくとき指が止まる
「指に刺して食べるのが癖と聞きましたので、差し込みやすいように切り込みだけ。不要なら次からはしません。果汁はそのままです」
少し赤面が残る顔をしながら告げる
指に刺さりやすく爪にも皮などが入らない。癖を一瞬みて聞いたのか
「ありがとう。まあ、よく考えてくれたじゃない?」
素直に褒めることを照れたシュガーをみて、隣に座るモネは微笑む
「上出来ね」
妹の前髪を整えるように撫でる分厚いメガネは額の上
「光栄です」
若をふっと見ると嬉しそうな、ただ計るような目つき。値踏みする視線
私の視線に気づき、目が合って(サングラス越しだけど)ハッと笑う
「お前も、そいつの価値を見たか」
若の言葉に少し笑みが出る
「みたわ。いい価値ね」
私のセリフにモネも微笑む。ベビー5とバッファローのデザートの要求に自分もとデリンジャー
褒められて照れる瞳は温かさが募る。初めて正面からみて青の深さを知った
手元のグレープの紫と瞳を見て、美味しそうだと思った