11日目


ディアマンテは本日のお昼前に開始されるコロシアムのプログラムを見ていた。
出場させる『剣士』供。外部からの参加者
いつも通り、滞りなく。売上のキープと観客の熱
だが、なんだがいつも通りすぎて釈然としない
「ディアマンテ」
モネが後ろから声をかけてきた。相変わらずメガネは分厚い
その横には白い髪を揺らす宝石。今日の瞳はジェイブルーから
「なんだ」
「今日のコロシアム。彼女の見学を頼みたいの」
急な提案にディアマンテは焦る
「見学だと?参加ではなく?」
「ええ、コロシアムの担当で英雄のあなたの側なら勉強になることがたくさんあるでしょ?」
「よせやい、オレを面倒みのいい英雄のように」
「本当のことじゃない」
「よせよ、俺には力不足だ」
「なによ、あなたが力不足なら誰がいるのよ」
「よせ、俺が誇り高いやつみたいな」
「本当のことじゃない」
「いやいや、俺には荷が重い」
「そうじゃあ、グラディウスにでも・・」
「そこまでいうなら、引き受けよう!!そうだ、俺は面倒見がいい!!」
ディアマンテがビシッと決める。
モネはため息をつき、その横の彼女は少し引いたような顔をしながら目配せをモネにする。モネは黙って頷く。彼の扱い方を伝授したようだ
「じゃあ、よろしく」
モネはそういうと彼女とは別れた。
白い髪を垂らしながら一礼をする彼女を高い位置から見る
奴隷でも売買でも使えそうなやつ。体は小さく細い。いい実を持っているのに戦闘は行わない
いまいちディアマンテにはドフラミンゴが何を考えているのかわからなかった。しかし、我らが王が決めたことであり否定はしない。
ここ数日の彼女の動きを考えれば、いい動き。と言えよう。従者としての仕事は完璧。この前出た会議も意見を聞きつつモネに教わっていたし、その後モネに聞いたことない単語などを教えてもらっていた。まさか、ベリーの価値から教えてもらっているとは驚きだったが。
ふと目が合う。下から見上げるため自分の目には光の屈折が異様に光る。ドフラミンゴのようなサングラスをかけていないディアマンテには眩しすぎる
目を少し細める
「コロシアムについては?」
ディアマンテの問いに
「国の事業で、ディアマンテ様が担当。そこにいる剣士のことも少し」
「そうか」
罪人。を剣闘士に変える。わりといい方法だ。勝手に死ぬし金になる
ディアマンテはそういうと少し考えた
ファミリーが運営する仕事を知るのは大切なことだが、彼女はコロシアムというのを見たことあるのだろうか。
人を殺したこともなさそうな奴だ。殺し合っていることに歓喜の渦を巻く場所に連れて行って面倒なことにならないのか。長寿とは言ったもののこちらの世界との時間差も年齢差の違いもよくわかない。ただ、数としてはそちらの方が上のだけだ。
戦闘民族でも無さそうな身体付きに戦闘能力を高めれば使えそうな悪魔の力。惜しい。素直にそう思う
「移動しないのですか?」
はっと彼女の問いで意識が戻った。
まあ、仕事は仕事だ。きっと彼女は誰よりも割り切るのが上手いだろう。そうディアマンテは自己完結して短く返事をし移動すると伝える
後ろをついてくる彼女。今日は春らしいピンクのドロップ丈の半袖。珍しい色だ
「なにか?」
少し横にいた彼女は目線に気づき首を傾げる。白い髪が揺れ瞳が前髪から覗く。昼間の外ではセレストブルーにファゲットミー、ヒヤシンス
「いや・・ーー珍しい色の服だと思った」
言い訳することも許されないような宝石眼。
ディアマンテの言葉に首を少し深く捻る。服を見て
「モネ様が青系統と暗い色以外にしなさいと」
ドロップ丈の服は少し摘めば裾が上に上がった。
白、蒼、薄桃、濃紺、藤。纏まってると思う。
「赤がないな」
歩きながら呟いた言葉に彼女は目をぱちくりと瞬く。ディアマンテの服を見る。赤い線が色めく服装。ふむと頷いて
「では、今度は赤を」
ふっと笑う。なんだか照れくさくなって
「いや、無理に着ろとは言わない」
と返した。彼女は少し固まった表情をして
「ですが、せっかくのお誘いです」
ふわりと笑って言う
「いや、、お前の好きな服を着ればいい」
「ですが、ディアマンテ様は赤がトレードです。私もディアマンテ様のような赤が似合うようになりませんと」
「よせやい、俺がおしゃれ番長みたいな」
「おしゃれではありませんか」
「やめろ、、そんなおしゃれじゃない」
「帽子だって素敵です」
「おいおい、俺はおしゃれじゃない」
「そうですか?ディアマンテ様はオシャレです」
「そうさ!!俺は誰よりもオシャレだ!!」
ディアマンテの言葉は青空に響いた
コロシアムは目の前だ


中に入ればラオG、マッハバイスが座って待っていた。その後ろで女に囲まれてるセニョールピンク
「あー!今日はこっちなんだね」
性が左右するデリンジャーは彼女を見つけ喜ぶ
「はい。見学です」
よろしくお願いしますと頭下げる
「見学のG!しかと見よ」
ラオGが隣を叩く。素直に座る
「コロシアムは初めてか」
「はい」
「殺し合いというのは?」
「あります。滅んだ時に」
ラオGはその言葉に少し黙る
「そうか。ならば、剣士というは居たのか」
ラオGの質問に青い瞳は答える
「剣士というのがこの世界と合っているかわかりませんが、居ました。剣に命をかけ剣筋を追求し王を護る。そういうのは居ました」
「強いのか」
「負けたので、なんとも。ですが、立派でした」
ふっと笑う
悲しみの色をする。ラオGは何も言わない
「剣士として恥じることはないかと。最後まで護りました。滅んだのは結果。過程は、私の評価で良いならば合格。ここの世界のように不思議なことが起きるわけではありませんでしたが、見入ってしまうことはありました」
記憶を探っているのか、目を伏せ想い出に浸る。白い睫毛が揺れる
「生き残りがそういうなら、誉れよ」
チュパッとセニョールが口を鳴らす。正確にはおしゃぶり。
それを聞き嬉しそうな眼をする
「はい」
「だが、ここはコロシアム。血に歓喜をあげる」
「今回もきっと盛り上がるんだイーン」
マッハバイスは嬉しそうに両手に拳を使ってそのまま両腕を頭にあげた。合図だ
『お待たせしましたーー!!』
実況者の声が響く。
歓声と共に始まるコロシアムを青い眼が見つめる
一人一人と出てきて歓声が上がる。人気の選手、嫌われ者にはブーイング。
コングが鳴ると剣同士がぶつかる音が響く。人々が声を上げる。熱気が渦巻く。血が上がり死体ができる。足場から消えるもの。その外にいる魚のようなモノに食べられる人。
興奮するラオGやマッハバイス、それに習って拳を上に挙げるデリンジャー。セニョールはチュパッと口を鳴らしながらクールに試合の流れを読む
ふとディアマンテは隣の白い頭を見る。白い睫毛から少し覗く青い瞳はスカイブルーを少々とマリンブルー。ほぼ白い頭で表情はよく読めない
「どうだ」
聞いてみると青い瞳がこちらを向ける。予想よりもターコイズブルー
「熱気が思った以上に。殺し合いを見て盛り上がるのはよくわかりません」
顔色は悪くない。だが、どこか心がない
「自分が初めて人を殺した時を思い出します」
視線を前に戻して言う。
いつか?ディアマンテたちは人を溶かした話を知らない
「お前も剣を取ったか」
「いえ、この実の力を使った時に。咄嗟のことでしたので逆に鮮明に覚えてます。感覚もこの手に」
使ったであろう左手を見つめる
「人攫いか」
「逃げ込んだ船です」
青い瞳が少し曇る
「覚えておけ。それが命。強いモノはそれを自由にできる」
ディアマンテの言葉を深く考える。歓声が一際立って正面を向く
Aブロックの一騎打ちらしい
覗くように前のめりになる。白い前髪がハラリと落ちる。その瞳には羨望か畏怖か想い出か
勝者が決まったのを実況でも確認する
一応流れとしてみんな拍手を送る。デリンジャーは興奮しマッハバイスとまた拳をあげる。まだ今は男の子だ
白い頭を見る。青い瞳は正面のままだ
「どうだった」
歓声が響く中清い彼女に問う
青い瞳が揺れ顔にかかった前髪を払わずに前を向いたまま
「何を言っていいかわかりません」
その澄んだ言葉にみんなが注目する。姿勢は崩さない
「命の使い方が私の道徳は違う。ですが、ここは文化も歴史も価値も私のとは全く違う」
感情を定めることはできない口調。
「忘れません」
透き通った声が響く
「死の感触を。溶かしてしまった感覚。匂い、色。忘れないことに意味がある気がします」
左手は白い。ただの皮膚
「それでいい」
チュパッと音がする
セニョールを青い瞳が捉える
「お前の価値だ」
若が、そう言ってる。セニョールをラオGがみて彼女を見る
「はい。私の価値」
ふわりと笑う
「戻ります」
彼女が席を立つ。白い髪が揺れる。青い瞳はホリゾンブルー
「私の価値はここにはない」
綺麗な笑みが眩しい。一礼して席を出て行く。薄桃、白、濃紺、藤。彼女の色だ
力が全てのこの世界で、それは要らないと胸を張る。振り返る瞳は真実の青
「私は人を快適にすることで価値を出します」
その自信に天晴れとディアマンテは笑う
ディアマンテの笑みを見て今度こそ前に進む
「なるほど。お前の価値か」
セニョールの満足そうなおしゃぶりも、デリンジャーのキラキラした視線もマッハバイスの雄叫びもコロシアムで血を出し死にゆく『剣士』を無視して『従者』に歓喜をあげる
感激のG!とラオGの声が席に響く
あまりの清々しさにディアマンテはひとりごつ
あいつには内なる情熱が似合う。眼に見える赤は要らないだろう
夏に吹くカラリとした風が彼女の青を彷彿させた