コリンズに注いだロマネ・コンティ


朝明の空の下で空になった瓶を片手に揺らしながらのんびりしていれば、ホンゴウが隣に来て一緒に甲板の手すりにもたれる。
「素晴らしい朝焼けだな」
お互いまだ酔いが覚めてないのか、ホンゴウの言葉にそうだなと元気に返す。何が面白いのか全くわからないがホンゴウもゲラゲラ笑う。酔っ払いめと返すがお頭もだろと返ってきて、またゲラゲラとお互いに笑う。ふと、なにかピリッとしたものを感じて目線を飛ばせば彼女が今日も酔っ払いの屍を起こさないように気をつけながら片付けをしてる。どこかの島で出会った商船は気のいい奴らばかりで、俺の旗を貸してやればお礼もいらないというのに遭遇したら乗り込んできてコレやアレやと仕入れたものを渡してくれる。
今回の宴もこの商船が持ってきてくれた極上の酒でやった。商品だろうに、いいのかよと思うが気にしないでくださいとそのまま注がれて仕舞えば呑むしかない。絶品だった。さすがだ
「いつも片付けしてくれる」
俺の呟きにホンゴウが彼女をみる。そうなのかと呟かれる。なかなかの覇気使いだ。本人は隠してもないらしい。薄くはあるが、鍛えればそれなりの覇気になるはずだ。
「酒が飲めないと言っていたな」
ホンゴウはまだ自分のが入ってるのか瓶を口につけて飲み干した。
ホンゴウの喉越しを見ていれば、彼女からの視線に気づいて視線を変えた。そっと手を挙げてみれば、ぺこりと一礼してくれた。皿を積み上げる指先は細く、重なった皿を持ち上げる腕は細い。それでも、商船の護衛を担う係というのだから面白い。出会えた時に、酒の準備前に手合わせしてその覇気を育てたいものだがどうも働き者の彼女を捕まえるのは難しく、気づけば宴が始まってしまい潰れた奴らが多くなってきて落ち着いたから相手しようとして見渡せば、自室に戻って寝てしまったという報告ばかり。
「なんだぁ、彼女が気になるのか」
うちの情報屋でもあるホンゴウはニヤニヤしながら彼女をみる。そんなんじゃないと呟くが聞く耳を持たずに少し残る瓶を揺らしてる。まったくこの酔っ払いが。
「気になるなら、話しかけりゃいいのに」
お頭、モテるんだから。的外れな言葉が返ってきてため息をつく。まだ朝日は昇ったばかりなのにホンゴウは最後の酒を飲み干して、瓶を片手に俺に手を振る。ベットに行くか。後ろ姿を追いかけながら、酒が少し残ってるグラスを手に取る。残ってるなら呑みたい。それほど上質だった。
辿った視線の先でホンゴウが彼女に話しかける。集めた皿を置いてホンゴウを見つめ、首を傾げてる。何を話してるかわからないが、もしや、お誘いか?ホンゴウのやつ、隅に置けないな
後でヤジでも飛ばしてやろうとグラスの酒を煽れば、柔らかく笑うからちょっと胸焼けする。別にどうって事ないはずだが、勝手に弟子扱いしてるからか、胸がざらっとした。誤魔化すように酒を煽っているとホンゴウは彼女に手を振って部屋に帰っていった。手を振り返した彼女が俺を見たから目が自然にあってしまって気まずい。こちらに向かってくるのを横目に鼻歌を歌う。
水平線にまた少ししか登ってない朝日を浴びる彼女の瞳があまりにも海面のように光っているから惚れ惚れする。それもバレてしまいそうでわざと視線を海面に移したが、彼女特有の凪立つ覇気が近づくのを肌で感じてしまい、振り向きたくてしょうがない。彼女が俺に話しかけてくれるのも待つ時間は数秒ともないのに、長く感じたのは気のせいだろうか。



HOME┃top prevnext戻る