紅茶に真四角の白い砂糖を一つ入れるのを見ながらドラゴンさんの言葉を聞く。隣に座っている彼よりも彼女の入れる仕草に目線が飛んでしまう。ストレートで飲みそうなのに、入れるんだ。
「で、サボ」
「あ、はい」
気を取られて一瞬反応が遅くなる。席を立ってコアラに渡された資料を読み上げながら、天竜人への宣戦布告する作戦を告げていく。いろんな人の意見を聞きつつ、固めていった案を実行するためにカラスやリンドバーグたちに指示を出す。イワさんたちが話すのを見てもう一度席に着いたら、彼女は頬杖つきながらクルクルとティースプーンで紅茶を混ぜていた。あまりこちらの席に座ることが少ない彼女。ベティに隣に誘われてたから座ったんだろう。1人で支援物資を運ぶ、運搬係をする彼女。わりと古参でもあるはずなのに大きなことは何もしてない。言ってしまえば、革命を起こしてるのも見たことない。
モーリーたちに話しかけられて柔らかく微笑みながら話を聞いてる。紅茶を混ぜる指は止めない。細い指が乱れなく一定のリズムで動く。砂糖を入れてから溶けたはずなのにかき混ぜているのはなぜだろう。飲まないのかな
隣のベティが紅茶を飲んでから、タバコを吸い出した。たしか、ベティさんは彼女にタバコを教えてもらったと言っていたような気がする。だから、同じ銘柄。ベティさんにも話しかけられてるのに紅茶は混ぜたままだ。革命してきた国の現状、するべき国の把握、連絡が来てる国の確認。全てを助けることは難しいかもしれないが、助けられるものなら助けたい。生まれた国を恥じる気持ちは痛いほど良くわかる。
春島特有の強い目の風が吹く。桜が吹雪、テーブルに舞う。張り詰めていた会議が小さな桃色の台風によって少し和む。ある程度の緊張感も必要だが、リラックスするのも大事だ。
「きれ〜!」
コアラが少し身を乗り上げながらテーブルの桜を見つめる。モーリーたちと桜で盛り上がりながら、会議を進めていく。ドラゴンさんが締めくくる話をするといい緊張感が戻る。ふと、彼女をみると紅茶を混ぜる指はタバコを挟んでいて、砂糖を入れた紅茶は中身が消えていた。いつ飲んだんだ?見てなかった。別に見たいわけでもなかったけど
風が吹く中、桜が少し舞う。初めて彼女と目線があった。口に咥えたタバコを抜いて紫煙を空に吐きながら俺を見つめる。ふっと柔らかく笑うから首を傾げる。解散と声がかかりみんなが自由に動き出すのを横目に席を立って彼女に向かう。
「お疲れ様」
タバコを味わいながら喋る彼女。用事は特にないことを思い出し、目線を泳がせる。ああ、そうだ。紅茶
「砂糖、入れるんですね」
俺の質問に柔らかい瞬きをして、紫煙を出しながら喋る。
「疲れてたから」
そうなんだ。大変なんだな。そう思って声をかけようとしたら、柔らかく笑われる
「そんなに意外だった?」
へ?喉まで出かかってた別の言葉が行き止まりを食らって間抜けな言葉が頭の中で順番待ちした。タバコの灰を灰皿に落として、吸い終えたのかそのまま押しつぶす。
「砂糖、入れるの。君、ずっと見つめてくるから」
飲みにくかったんだ。なんて少し照れたように話すから、こっちが顔が熱くなる。見てたの、バレてたのか。
「いつもは、入れないよ。ストレート。君の見立て通り」
ふふと笑って席を立つ。柔らかい態度に今度は胸が熱くなる。見透かされてたことも会話できたことも何故か嬉しくて、どこかに歩いていく彼女の後を追った。