くまの子見ていた隠れんぼ


うーんとテーブルに向かって呟くペンギンにキャプテンが何か指差しながら小言を言ってる。何話してるんだろってシャチに話しかけてみれば、わかんねえって言いながら一緒に2人に話しかけに行く。
「なにしてるの?」
俺の問いに、ベポと短く名前を呼んでテーブルに散らばる紙を見せてくれる。領収書と書かれた小さな紙がたくさんとそれを計算してる帳簿には数字がぎっしり。
「ベリー足りないの?」
「いや、そんなことないはずだ」
キャプテンがすかさず俺の言葉を伏せてくる。ペンギンは見えない表情でため息をついた。口元が引き攣ってるからきっと、嫌な顔してる。
「いやいや、キャプテンがたくさん本買うから、今月はちょっと厳しいなって」
「米自体、あまり出回ってないしな」
ペンギンの言葉にシャチが加担する。キャプテンは眉間の皺を寄せに寄せて2人を睨んでる。慣れてるのか、特に物怖じしない2人。
「しょうがねぇだろ。必要経費だ」
「アイアイ、キャプテン」
しょーがないなぁというような返答をすればキャプテンは面白くないのか目を逸らした。
久しぶりの海上というのに、このテーブルはなんとなく雰囲気が重い。
「ちょっと、一旦休憩」
ペンギンが身体を伸ばしてパンをテーブルに放った。キャプテンも頬杖つきながらため息をついた。シャチがコーヒーケトルを持ってきてみんなにおかわりを注ごうとした時、遠くで聞き慣れた音がした。
「なんだぁ、ベポ」
ペンギンの問いに、何か来るよと伝えればキャプテンも一緒に臨戦体勢を組むから伝え方が悪かったと謝る。ペンギンは俺の謝罪をよそに食堂を出て甲板の方に向かっていった。心なしかスキップしてた?
ペンギンの声がしてきた時には、キャプテンもシャチもコーヒー飲んで領収書の束を眺めながらあーでもないこーでもないって話してた。
ペンギンの声は少し弾んでて、誰がきたのかなって鼻を鳴らせば彼女が吸うタバコの渋い匂いとメンソールの香り。
「お邪魔します」
ペンギンに連れてこられたのは麦わらの一味の1人。ワノ国まで乗せてってからたまにこの船に現れる。おもにキャプテンへのお荷物便として。航海の内容とかは電話するけど荷物とかになると彼女が飛んでくる。文字通り。でも、いつも受け取るのはペンギンで。ペンギンの荷物は一度持ってきたことない。
「なに?経理やってるの?」
ペンギンに導かれるままペンギンが座ってた席に座る。目の前にはキャプテンが眉間に皺を寄せている。
「敵に教えることは何もねえよ」
「サンジくんがトラ男くんにって、おかかとしそ昆布。高菜をタッパーに詰めてきたよ」
「ちょっと医学書を多めに買っただけだ・・おい、足を戻せ。船が傷つく」
キャプテンの言葉に足先を鳥の形からひとの足に戻す。俺は食ったことないけどサンジってやつのご飯は相当に美味かったらしく、シェフが泣いてた。
ペンギンが彼女にコーヒーを差し出す。隣に座りながら、よかったですね、キャプテンなんて呟く。
「潜りまくってたら敵に遭遇率が下がるから、強奪も割と少ないの?」
「いや、そんなことねぇよ。敵船を見つけりゃ、海上だろうと海中だろうと襲うときは襲う。特に今みてぇな時にはな」
ふーんって興味なさそうに呟きながら、帳簿を捲る。何枚かめくったとき、でもさぁと呟きキャプテンじゃなくてペンギンが彼女の方に身を少し乗り出して帳簿を見つめる。ここ削れるとか、ナミちゃんならとかこれって別にこれじゃなくても代用できるよって教えてくれてる。教えてくれる彼女とペンギンを見て何か違和感。首を傾げるけどよくわかない。キャプテンをみれば帳簿じゃなくて、2人を見てる。そんな2人を俺も見つめていれば、シャチが意味ありげにコーヒーを啜る。俺にはもっとよくわからなくて首を傾げる。そのうちらペンギンがなにか楽しそうに話しかけては彼女はいたって普通に柔らかい笑みを浮かべながらペンギンの話に相槌してる。ため息ついたキャプテンをみれば目があって、呆れた顔をしてる。
「そうだ。クッキー持ってきたの。サンジくんに教わって。飛行で疲れたしよかったらみんなで食べよ」
彼女は思い出したように話しながら、斜め前にかけるサコッシュから袋を取り出す。わーい!と喜びながら席を立って皿をとりに行って振り返った時。全てわかった。
サングラスでよくわかないシャチの態度もキャプテンのため息も。彼女が皿を待ってる間、帳簿について話してる。そのテーブルの下。頬杖ついてる反対の細くて白い指先に、触れるか触れないかギリギリを攻めながら迷ってる見慣れた男のゴツい指。気づいてないというよりも気にもしてない彼女は相変わらず、ペンギンの嬉しそうな顔に柔らかく微笑んでる。2人越しでキャプテンと目があって見つめれば、ジトりとした重たい目線とため息が送られてくる。黙ってろって。みんな知ってたの??そこでハッとする。この子がいつも迷わずに飛んで来れるのって、ビブルカードと思ってたけど。キャプテンは受け取ってもないし渡してもなかった。となると、もしかしてもしかするの??俺だけ知らなかったらしい、ペンギンの恋慕を目の当たりにして皿を持っていくのが数分遅れた。



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