錨が描いた海底図


久しぶりにジョーカーに付き添いとしてワノ国に降り立った。若様はついた瞬間に覇王色を滲ませてオーラ全開で敵地を進む。
宴会だとワノ国の上等な食べ物をこれでもかと積んできてくれる。日本酒というのは独特な風味をしていた。私は苦手だったけど、上等な舌を持つ若は美味しそうに嗜んでいる。さすがだ。
味の深さを呟きそれに頷く福ろく寿のお坊さんがなにか嬉しそうに話してる。ちょっと宴会に疲れて席を外す、宴会の外は案外静かで遠くで鬼ヶ島を作成してる音が響く。岩を削る音は昼夜問わず行われてる。ワノ国の国民はせっせか作ってるらしい。それでも、その建築方法には舌を巻くものがあるとササキが話してた。満月に照らされる青筋を辿れば人影を見つける。
「あれ?モネさん?」
声の主を暗闇で見つめれば久しぶりに見る彼女。革手袋が月の光を拾って赤茶色がわかる。こちらを見つめる瞳が少し動いたように感じたが、暗くてよくわからない。
「どうかしました?」
見つめすぎてたからか、こちらに首を傾げながら近づく。なんでもないと首を張れば、そうですかと呟く。何をしていたのかと問えば手袋をはめた左手で掴んでる花瓶。
「水換えです。暇なもんで」
うそつけ、いつも忙しいそうなのは知ってる。私がパンクハザードに向かうことになって、ワノ国の武器を卸し交渉してくる役割とワノ国との連絡船をしてくれる係が増えるからそれの顔合わせでもあるこの日。元々彼女を知ってる私としてはクイーンに仕事を増やされてるのをよく見てる。
「うちの人たちには会った?」
「会いましたよ。2人とも面白い方たちで。1人はカイドウさんがとても気に入りまして、勧誘中です」
「ふふ、それは困ったわね」
「なかなかのいい性格をお持ちの方ですね」
「マスターとは折り合いが合わなくて、ワノ国連絡船係になったのよ」
なるほどと無言で表すから面白い。
「しかし、火傷の方はファミリーではないと仰ってました」
「ああ・・あの子は、そうね。ただ、そこにいるだけの」
へぇと興味なさそうに呟く。
青い光が漏れるこの屋敷には遠くで祭囃子が聞こえてくる。若様は楽しんでるだろうか。遊女と過ごすなら私は遠くの部屋に行きたい。
「あなたは、混じらないの?」
宴会の方を見て彼女を見つめる。彼女は私の言葉を聞いて宴会会場を見つめる。
「うるさいの苦手なんです」
なんて困ったように笑う。意外だ、カイドウの部下たちはやかましいのが好きだと思っていたのに。ああ、でもキングはそうでもないのかしら。クイーンは盛り上がるのが好きそうだけど。
花瓶に水を汲みコトリと置く。そのまま新しい花を添える。
「何の花?」
私の問いに彼女は私を見ずに花を見る。革手袋は月明かりに晒されてる。逆光になった彼女の瞳が動いたように見える。
「芍薬です」
聞いたことない花だ。
大きな花弁は美しい。白く開くその花も月明かりを拾って薄青く見える。
「立てば芍薬座れば牡丹、歩く姿は百合の花」
呪文を並べるから首を傾げる。私の様子にふふと柔らかく笑ってこちらに身体を向ける
「ワノ国に伝わる、女性の美を表す言葉です。いつか、そう表せる女になりたいものです」
ちょっと照れたように笑う。やっぱり瞳が動いてるような気がする。青光する紺色の世界と彼女は溶けたように馴染んでいた。月明かりを浴びる白の芍薬を見つめる伏せた瞳と青白い肌と違和感の革手袋。絵になる。
「もう、なってると思うけど」
スッと出てきた言葉に彼女はちょっと驚いてて、嬉しそうに笑ってくれた。
「この慣用句そのものである貴女にそう言っていただけるとは。光栄です」
ふわりと笑って伝えてくれるもんだから、こちらが今度は頬を赤くする。なるほど若様が気にいるわけだ。



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