「先に帰るぞ!」
って言ってたのに、ルフィ先輩号には麦わら帽子が見当たらない。
「ねぇ、ルフィ知らない?」
ロメ男くんに聞いても知らないという。彼が知らないのだからきっと誰も把握してない。1人でどこ行ったんだろう
「トラ男くんも知らないよね?」
「オレが、知るわけねぇだろ」
ひと蹴りされてしまった。なんだかんだ、ルフィと相性がいいから意外に視界の隅で見たととか言いそうなのに。ゾロさえも戻ってお酒を飲んでいるからちょっと心配。絶対、変なことに巻き込まれてる
ナミちゃんとロビンちゃんに一声かけてもう一度船を降りる。ゾウに向かう途中で立ち寄った島は穏やかな春島で綺麗な花々が咲いている。
島の特産品はラベンダーらしく、とてもいい香りが広まってる。それを化粧水、香水、石鹸。いろんなものに代用してて、ラベンダーの汁で染めた旗が町中にはためいてる
少し歩いて街をみるけど、食べ物屋さんに聞いても麦わら帽子は見てないそうだ。食べ物屋さんではないとなると、どこか変なところに冒険でも行ったのか?でと、戻るって言ってたしなぁ
森に入って木々の間を見て回る、なかなか見つからない麦わら帽子。
日も落ちてきて、夕暮れが近くなる。暗くなる前に帰らないと。私も迷子になってしまう。戻ろうかな。ルフィはきっと大丈夫でしょ。
そう思って踵を返したら、視界の隅に赤い服を見つける
「ルフィ?」
私が声をかけると見聞で見てなかったのか、肩を大袈裟にビクつかせた麦わら帽子。
「先に帰るって言ってなかった?」
木々を抜けて近寄る。足元をきちんと見て歩いていたから彼の顔を見てなかった。
「な!なんで、いるんだ!」
焦っていうから少し困惑する。なにか隠そうとするから首を傾げる
「なんでって、ルフィ。先に帰るって言って帰ってないから」
「な!帰るぞ!かえるけど、やることあんだ!」
よくわからなくて、少し困る。
「探さないで欲しかったの?手伝うよ?」
「だめだ!」
子供みたいに駄々をこねるからため息をついちゃう。どうしたの
「先に帰ってろ!」
「えぇ、せっかく来たのに」
私の言葉にルフィは少し口をつぐんで困ったように目を逸らす
ルフィがしたいことがわからなくて困る。いつもわかりやすいのに。何を隠してるんだろう。なにがしたいの
「ロメ男くんたちがご飯用意してくれてるよ。春島は暗くなるのが少し早いし寒くもなるから。もう帰ろ?」
ご飯で釣っても、動かなくて。しょうがないなと近寄ると、両手をバッと広げてとめてくる
「なに?」
「うごくな!」
なんでよ、もう。困ったなぁ
ルフィを見つめる。目が合わない。隠し事も嘘も苦手な彼。私より10センチほど高いのに、腕も伸ばされてしまえば私はそちらに行けそうにない
「もう、どうしたの?」
汗をたらたら流すから、下からルフィを見つめる。
「お腹空いたでしょ?」
夕暮れになって、日がオレンジになり始めた。森がオレンジ色に染まってきて柔らかく見える
「ねぇ。おしえて?なにをしたいの?」
慰めるように言えば、少し考えて
「動くなよ!」
とだけ呟いてゴムの腕でどっかに行ってしまった
動くなと船長命令が出たから立ち止まっていると、ゴムの腕がまた見えて私の前に現れる。
ばさぁ
飛び込んでくるのはルフィじゃなくて、紫。いい香り
ゴムの腕をリボンのようにくるくる巻いて目の前に差し出してくれたのはラベンダーの花束
固まってる私にルフィは、ニッシシと笑う
「どうしたの?これ」
「見つけたんだ、帰る途中」
自慢げに話す。大きな傷がある胸の前に広がるラベンダー。
「私に?」
「ああ!ラベンダー、好きなんだろ?」
島についた時、ラベンダーの香りが好きだと。色味が好きなんだと呟いたのを覚えていたのか。チョッパーと会話していたのに。視界の隅で聞いていたのかもしれない。彼のサプライズに胸がいっぱいになる
「ありがと」
「にっししし!いいんだ!みろよ、こっち」
花束をそのまま、反対の手で私の手を取る。ついていけば、一面に広がるラベンダー畑。手入れのない自然のラベンダーは草原のあちこちに群をつくって生えてる。夕暮れのオレンジが紫に重なって、春島の少し強い風が香りを送ってくれる
「すげぇだろ!」
自慢そうに話すから、すごいなと褒める
「でも、なんで?好きだから?」
ここまでのサプライズをする人ではないことくらい知ってる。ましてや食べ物じゃない。珍しいなと聞いてみたら、また笑顔。ほんと似合う
「ん?お前が好きなんだろ?好きなもの見つけたら、教えやりたいし、あげたいだろう」
ルフィらしい答えが返ってくる。可愛いな
ありがとと麦わら帽子を撫でるように揺らす。麦わら帽子の下から笑い声
「にっししし。どっかで嗅いだことがあるなと思って近寄ったら見つけたんだ。今わかった。お前の匂いだ。オレの腹が落ち着く匂い」
どういうこと?首を傾げる。自分のラベンダーをもう一度私に差し出した
「戦いの後、サニーに戻った時と似てる。アンシンするんだ」
そっか。と笑うと彼も笑う。ラベンダーの香りには落ち着く効果があるらしい
「おう!だから、やるよ。サンジが言ってた。好きなやつにはハナタバをやるんだろ」
それは、どういう意味だろう。固まる私に彼は変わらない笑顔。まあ、いいや。船長からのプレゼントだ。
オレンジに照らされた彼の笑顔と風で仰がれる麦わら帽子、それにのってくるラベンダーの香り
少し身長の高い彼の目の下の傷に触れる。
「帰るぞ!」
腹へったー!とラベンダーの花束ごと飛び跳ねる。夕陽に照らさせる君は自由そのもの。
どうか、君の夢が叶いますように。無意識に深呼吸をする
空には一番星が輝いてた