あ、イタっ。
ピッと切れた指先から赤い血がぷくりと浮き出る。紙で切ってしまった。でも、大したことないからティッシュで拭いて放置でいいかな
「ん?血の匂いがするぞ」
ミンク族ではなく、悪魔の実で意思疎通が可能になったトナカイ。青いお鼻をクンクンと動かしてこちらに来る。
「あ!おまえ、怪我したのか」
私の指先を見つめる。
「見つかっちゃった」
「ダメだぞ。ちゃんと処置しないと」
小さな傷でもばい菌が入ったら指が腐るんだぞ。なんて脅してくるから、ごめんねと謝る
「まったく」
小さな私たちの船医さん。薬草に詳しくて、最近はトラ男くんが乗っていたこともあって外科にも少し詳しくなったそうだ。優秀で働き者。
蹄を器用に動かして私の指に絆創膏を貼る。ありがとうとお礼を言えば照れる。可愛い。つい撫でちゃう
「やめろよぉ、オレだってオスだぞ」
その、オスという言葉で危機が薄くなるんだけど。それをわかってないところがまた可愛い
立派な角をなんとなく触る。やっぱりちゃんと硬い
「あんま触るなよ。ケガするぞ」
船医さんの忠告は聞いとかないと。触れるのをやめる。
「怪我をしても、チョッパーが治してくれるでしょ?」
頼りにしてると伝えれば、また照れる
「ハッ!ダメだぞ!騙されるところだった。お前はいつも、怪我しても言わないからな」
ルフィやゾロたちの方が大怪我を毎度負ってくるから私の怪我はいいかなって思ってしまうのだ
「他の奴らに比べて、骨の関節が弱いんだから。無茶しちゃダメだ」
亜脱臼に、背骨のズレ、骨盤の出っ張り。膝のお皿の柔らかさ。生まれつき骨の仕組みがちょっっとだけ弱い。でも、動かないこともないから動く。チョッパーが言ってくれるまでそんなことも知らなかったし
「この前だって、遠くの料理を取ろうとしてズレただろ」
夕飯で、テーブルの端に座っていた私は、真ん中より少し奥の料理が食べたくて腕を伸ばして取ろうとして骨がズレた。元々亜脱臼でずれてたのが盛大にズレた。
肩甲骨からピーンッと張った筋肉はめちゃくちゃ痛くて、思わず打点がつくような声を出してしまった。そのまま腕は縮まらなくて隣のゾロに倒れ込んだ。ゾロはびくともしなかったけど驚いてて。ゴメンとか言いたかったけど、声は痛いとしか出てこなくて。違和感もあって、ちょっと気持ち悪い。ゾロに支えられたままチョッパーに肩をはめ直してもらったのは最近のことだ
それを出されてはどうしようもない。困ったように笑えば、チョッパーは少し怒った顔をする。
「その場にチョッパーがいてくれてよかった。対処が早くて助かるよ」
「褒められても、うれしくねーぞ!このやろー!」
テレテレに顔をニヤつかせて両手を踊る。かわいい
「チョッパーがいるから、無茶してもいいって思えるんだよ」
つい、撫でそうになるのを我慢して告げる
「頑張りどきを見誤らないのは、チョッパーが居るから」
チョッパーがいるから、頑張りたい時に頑張れる。きっと、ルフィやゾロもそうじゃないかな。後のことを任されるから全力で敵を叩き潰せる。きっとみんなそうだ。だから、いつも本気で挑める
「そうか?」
「そうだよ」
微笑んで返すと、もじもじとちゃんとした照れをくれる。
「でも、怪我したらちゃんと言えよ。あと、骨がズレたときも」
思い出したように小言を言う。うちの船医さんはしっかり者だ。ふふと笑って答える
貼ってくれた絆創膏の指先をテーブルで踊らせた