ドレスローザで能力を得た彼は、もっと強くなって、もっと高みの存在になった。
盃を交わした弟を助けて、亡くなった兄弟の形見を宿した心はきっと、私が想像できなく程熱くなってるのだろう
炎帝なんて、たいそうな二つ名をもらった彼は今じゃ、ドラゴンさんの後継者だ。ルルシア王国から無事帰還した彼は重要な秘密とともにイワさんとドラゴンさんと奥の部屋に消えていった
人々の鼓舞が地響きを起こして、武器と拳が天に上がる。今日も今日とて可哀想な国を助けるために翻弄中だ。
国王が折れて、国に新しいリーダーができる。
ここの国は、殺さずに檻に閉じ込めて改心させるらしい。まったく、甘いんだから
「今日もつまらなそうな顔をしているな」
炎が舞ったと思えば、サボくん。シルクハットを片手に押さえて、パイプを片手に壁にもたれる。路地の隙間から革命完了した国民を見る。
「殺さないのは、甘いのでは?」
「誰だって、人殺しにはなりたくないだろ」
「人が簡単に変わるとでも?」
「相変わらず、手厳しい」
サボくんの軽い笑みを受けて、路地外の盛り上がりを見る。
「で」
サボくんの呟きに視線を彼に戻した。下を向いててシルクハットで顔が見えない
「いつまで、うちにいるつもりなんだ?」
バレてないとは思ってなかった。適度に手を抜いて、やることはちゃんとして。それが私の仕事
「世界は、次の革命を知りたがってる」
「世界政府にとっちゃ、恐怖そのものだろ」
視線が合う。お互い獲物を捉えたトカゲみたいになって動けない
「ただの任務です」
「そうか。でも、それが一番困る」
「革命を邪魔したつもりはないけど」
「だろうな。そういった話を聞いたことがない」
無言で見つめあう。人々の声が遠くに聞こえる
「ここで死体が増えても、誰も困らないだろ」
サボくんは呟き脅しと人差し指だけ音を鳴らした
「知られてもなお、ここにいるつもりもありません」
疲れたので壊れた外装に腰掛ける。サボくんはちょっと意外そうな顔してる
「どうせ戻っても任務失敗と、海底監獄か殺されるだけですから」
革命軍内で吸ったことない、愛用のシガーケースを取り出す。ライターを探すが見つからない。ため息ついて咥えたタバコを口に挟んだままにする
「どのみちか」
「親がいないってのは、どこも便利なもんです」
拾われた先が違った。ただ、それだけ
それだけで、こんなにも世界が違う。記憶を失って、兄弟を思い出したのに死んでしまった。それでも、弟は助けた。国も救えて英雄になる。人々から帰還を祝福されて会話をする。たったそれだけで、全てが違うのだ
「どこの国出身なんだ」
「いいませんよ。というよりも、もう無い」
相変わらず警戒心は高い。合格。でも、揺らぐのは良く無い
「あなたの国は、ハリボテ国ですね」
世界政府で使われる用語。街だけ綺麗で村やその他はゴミや飢餓が溢れる。
サボくんは心当たりがあるのか顔を顰める
「自分で言ってたでしょ」
タバコを吸いたいのに火がない。喋りづらくて口から抜き取る
「聞いているんだな」
「ここにいるときは、ここが仲間だと思ってましたよ
ただ、私の価値観と違うだけで。人はいい人ばかりだ」
人の痛みがわかるから、革命なんてして。自分の後悔とか懺悔とか含めて国を整えて、助けてるつもりが助けられているんだろうなと思っている。
助けられた先が闇なら、その価値観は全く合わない。
タバコをもう一度咥える。
「サボくん。火ぃ、つけて」
私のお願いを、17秒ほど考えて。人差し指から火を宿して私につける。
久しぶりに吸ったけど、やっぱり美味しいと思う
煙が空に消えるのを眺める。サボくんは私を見て動かない
「じゃ。始めようか」
戦いの合図じゃなくて、終わらせる合図
サボくんは拳とパイプを握って動かない
「誰だって。人殺しにはなりたくないよね」
そうだろうね。そうなるしかなかったなんて、碌でもない人生だったよ
サボくんの瞳が揺らぐ。ダメだよ、優しすぎる
「いいんだ。冷たいところにいるより、暖かい中で死にたい」
動こうとしない。頑張れって、初めてちゃんと鼓舞した
サボくんの左手が龍の蹄を作る。口から2、3呼吸しかしてないタバコを抜く。そっと、瓦礫に立てかける
泣きそうな顔をして、なんとかならないのかと伝えている。なんとかならないからこうなってるんだと私も笑みで返す
きっと、傷を負ってようが死んだことにしてようが見つけるのが私の所属チームだ。終わりにしよう。今度は君のような人に拾われたい
せめてサボくんが私の終わりを確かに見ないように能力を出す。能力者なんて、知らなかったでしょ
君の炎と相性が実は良い能力。君の炎で燃えて溶けれる。きっと、その場に残るのは私の服が燃えたススとタバコ。私を燃やして、溶ける手前。君の手のひらが頬に触れた気がする。やたらと暖かいそれは私が生まれてから望んでいたもの
君の心に似てる