*現パロ
*靴紐を結んで歩き出そうか。の未来
有給を使って見にきた試合は彼の悔し涙で幕を閉じた
「くそっ・・」
剣道の甲冑をとって、剣道着には汗が染みてて紺色がもっと紺色になってた。
白いタオルを頭にかけて俯く君。会場に来ていたルフィくんたちに声をかけて、応援に来てくださってた彼の上司や仲間に挨拶して見つけた。
人の通る廊下のベンチに掛けて項垂れている。いつもの夏の芝生のような髪色はタオルに覆われてて見つけるのが難しかった。みんなおんなじような剣道着だから
「ゾぉロくん」
大股開けて座っている足の間にしゃがみ込む。顔はよく見えないけど、私の声に反応して赤い目がこちらを向く。
悔しくて険しくなる目が思ったより鋭くてちょっと震える。そんな目、見たことない。はじめて出会う君の姿は、ちょっとかわいい。本人に言ったら、情けないから見るな。なんて怒りそうだけど私は君のそういう野望を追いかける姿、大好きなんだけどなあ。チラリと目が合う赤い目。素敵。わりと致命的なのかもしれない。ナミちゃんがため息つくのが頭で想像できた
高校最後の試合で見事というか、当たり前のように優勝した彼。だよねとルフィくんたちと笑い合っておめでとーと言いに行った先、私の頭にゴツゴツの手を置いて「これからも居るぞ」なんていうから首を傾げて困った顔をさせた。
その場でもう一度、優勝したからそばにこれからも居てほしいなんて。プロポーズみたいなことを言って、結婚するのか?とルフィくんに聞かれてせっかく引いた汗をもう一度発汗させた彼に笑って居ていいん?と聞いて。ああと返ってきたのはもう6年ほど前だ。お互い社会人になって、君は警察学校を卒業して、交番勤務をしながら警察内の剣道部でエースをしてる。驚きの昇格で望んでた機動隊員に行くそうだ。よくわからないけど、似合いそう。会うのは少なくなるけど、輝いてる君を見るためにここに居る
高校の優勝も心から喜ぶというよりも、1つのクリア条件としての態度で。その先をもう見つめている君の背中はなによりもカッコよくて。ちょっと泣きそうだった。君なら行けそうな気がするから、好きに飛んでほしい。帰ってくる先が私の元で。帰ってきた姿の逞しさを安易に想像できてニヤける。君は高みにいるよりも、高みを目指しているほうが似合う。
また俯いてしまったゾロくん。膝に肘をついて足の間でお祈りみたいに指を絡めあってる手。あの頃よりも大きくなってもっとゴツゴツしてて。私の手ひとつじゃ、包み込めない。できて君の指二つほどだろうか。あの時道案内してたのは私なのに知らないうちに揺るぎない指針を君が担ってくれてる。君が指した方向をこれからも案内したい。支えていきたい
遠くでルフィくんのゾロォ!と呼ぶ声が聞こえたけど視界の隅でウソップくんとチョッパーくんに引き留められてるのをみつける。優しい仲間たちだ
私よりも先に知り合っているみんな。なかでもルフィくんは付き合いが長い。私たちと同じ、ゾロくんが世界を取ることを信じて揺るがない。今回もゾロくんに、次だなと割り切った声で話してるのを見て妬けちゃう。
きっとルフィくんの声はゾロくんにも聞こえてて少し肩が揺れた。
ねぇ。君の世界一を私はあの時。君の剣道姿を見た時から確信してるんだ。世界をとった時の笑顔を誰よりも近くて見たい。それだけは、ルフィくんにも譲れない。ダメ?私の笑った小さな息に赤い目がもう一度私をしっかりと見る。
「死ぬまでそばに居てみよっか」
君の喜んで、高みを守り、自分でその先の階段を作る姿をずっと見て居たい。君はその高みで休憩なんてしないでしょ。景色を覚えたら先に行くのが君だ。
ゾロくんはタオルの下で、口を開けたり閉めたらしてる。赤い目はぐわっと開いて驚いてる。ふと教室でくだらない話をしていた視点を思い出した
「だ。っからそういうは・・くそ」
先に言うなって言ってんだろ。呆れた声でいうから、笑って答える。俯いてた頭をタオルごと壁に押し付けて天を仰ぐ。
「あーあ。負けたった」
いつもの口調と声色に戻る。君に戻ったのが嬉しい。安心する。ゾロくんのちょっと冷めてきた赤い目が私を見つめる。口の端がふっと上がる
ぽんぽんとゴツゴツの手のひらが私の頭に乗る。愛おしそうに私のあの頃よりも色味の入った髪の毛を撫でる。撫でてない方の手でタオルを頭から首にかける。出てくるのは夏を思い出させる翠の髪の毛と愛おしさが溢れましたと言わんばかりの瞳。優しい瞳。高校の時から好きな表情
「今か?」
楽しそうに私に聞いてくる。今かなぁ。口には出さない。君が決めて。首を傾けて微笑んで返す。それを見て、フッと鼻で笑って撫でてた手で膝に置いてる指先に触れる。少し浮かせてその手を握る。そのまま優しく手首を掴まれて柔らかく引き寄せられる。距離が近くて膝をゾロくんの足の間に乗り上げる。君を上から見るのは初めてかもしれない。つむじが可愛い。上から見る君の優しい瞳。
「死ぬまで見とけ」
ニヤッと悪そうな笑み。でも、どこかワクワクしてる。その気持ちわかる。
いつのまにか私の視界は水で揺らいでゾロくんが上手く見えない。ハラリと耐えきれない雫から落ちていく。
「見てていい?」
わかっているけど、大きな確実な結び目が欲しくてもう一度聞く。ゾロくんはずっと笑ったまま、私の耐えきれなかった雫を太い指で拭ってくれる。
「ああ・・好きにしろ」
あの頃から変わらない。君はいつだって私に決定権をくれる。ゾロくんが出す深い了承の癖。
変わらない君をずっと見てきたんだなと思うと胸がいっぱいになる。大好き。これからも、その先も。
ゾロくんの熱気か私の涙か、わからないけど少し湿ってる君の唇はなによりも柔らかい
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負けた。敗北ではない。ただ、負けた。
悔しくて人の通る廊下のベンチでタオルを頭にかけて気を落ち着かせる。次だなと当たり前のように言ったルフィ。その隣で涙ぐむチョッパーとウソップ。そうだねーと首の頷きで同意するだけのニコニコ笑う。俺が世界を取ることを信じて揺るがない1人。高校の時から変わらないその笑顔に昇っていたものも落ち着く気がした
ベンチに掛けていると、足の間にしゃがんでくる。上目遣いで何も言わないその笑顔。再熱していたモノが落ちていく。心がスッと重くなる。この錘が愛おしい。俺がここに居れる。
「死ぬまでそばに居てみよっか」
だから、そういうのは先に言うなって言ってんだろ。あの時と変わらない様子にふっと笑ってキラキラした瞳を見つめる。その瞳が全ての答えな気がした。ああ、そうか。そういうことか
「今か?」
俺の問いに、意地悪く首を傾げる。答えがわかってはいるのに聞きたいらしい。そりゃそうか
膝の上に置いてる指に触れて腕を引く。細い腕だ。ひょいっと膝を俺の足の間に置く。
ロマンのかけもない。人の通る廊下。負けた俺は汗まみれだ。指輪は買ってさえない。なんなら、調べてもないし。こいつにどんだけの結婚願望があるのかも知らない。子供の話とか家の話、将来の話も。何もしてない。高校の時から変わらない。向かい合った席。くだらない話をする夕飯のダイニングテーブル。それを思い出すだけで胸が熱くなる。そうか、何も恋ってのは、ぐちゃぐちゃと面倒なことだけじゃねぇんだな。好きと言う甘さより乾くことのない愛しさを細胞全てで感じる。
「死ぬまで見てろ」
潤んだ宝石の瞳がオレを見下ろす。震える声で、見てていいの?ときいてくる。
「ああ・・好きにしろ」
盛大に頷いて、涙をこぼす。透明の涙。オレのとは違う。舐めたくなるほど愛おしい
指で擦ってやれば柔らかく微笑む。
あの時、おれに声をかけてオレの目的場に付き添ってくれる。これからもオレのそばでオレのことを見ててくれ
柔らかいいつもの唇。人目も気にせずキスをする。少し離れて見る顔は幸せ一色。胸が熱い。今度は指輪と世界をやるから、世界で一番幸せそうに笑って喋っててくれ
遠くでルフィたちの歓声がこだましている気がする。