ジャムを煮詰める5秒前


甲板で本を読んでいて、ふと感じたタバコの香りに顔をあげた
上のデッキチェアでナミちゃんとロビンちゃんに美味しそうなドリンクを運んでる。美味しそう
なんとなくそれを見て本に視線を戻す。
「おまえは」
声のした方をみればらハートの海賊団船長のトラ男くん。羽が首周りにある服を着てて、いつもオシャレ。邪魔じゃないのかな
「あまり、黒足屋と絡まないんだな」
サンジくんの声がしてもこちらに来ないから疑問に思ったのかな
「そうかな」
「お前の分も、持ってくるもんだと思ってた」
確かにそう思うだろうな。別に仲悪いわけじゃないよ。彼はいつだって優しい
「私が食に興味ないからかな」
コックさんである彼からしたら、ちょっと泣いちゃいそう。食べることも飲むことも大して興味がなく、私の分もと持ってきてくれても氷が全部溶けちゃうくらい放置してたり、逆に一瞬で吸い込んじゃったり。美味しいのはわかるんだけど。ナミちゃんたちみたいに味わったり楽しむことってしたことないなぁ
「かわいそうなやつ」
「ね。ちょっと申し訳ないから、ドリンク運んでる時は見つからないようにしてるの」
私の分も作ってくれるだろうから、ご飯の時以外避けてる。食材も勿体無いし。1人で納得してるとトラ男くんは怪訝そうに眉を顰めた
「黒足屋じゃない。お前がだ」
よくわからなくて首を傾ける。
どういうことだろう。食に興味がないからかな。でも、ゾロだってそうだよ。酒さえあればいいし。なんなら食べるの好きなルフィだってお肉さえあればいいんだから。さほど変わらないはず
理解してない私にトラ男くんはもっと眉を顰める相変わらず隈が濃い。敵船だから寝れないのかな。それとも、来るドレスローザでの戦いに眠れないのかもしれない
「別に、興味がないから作らないわけじゃないだろ」
やっぱり言ってることがよくわからなくて、んん?と声を出してみる
ため息をついたトラ男くんをみる。下から見るから背の高い彼はほぼ影だ
「作りたくて作ってるんじゃないのか」
「そうだと思うよ。でも、喉乾いてないし」
また、ため息。なんなんだよ
「食になると腕を鳴らす奴だろ。お前の興味のなさなんて俺より知ってるはずだ。それでも作るんだから、よほどお前に尽くしたいんだろうな」
仲のいいこった。ふーとため息をつかれる
サンジくんが女の人に尽くしたいのはわかるんだけど。私のためだけに?でも、ナミちゃんたちには作ってて。なんなら、君だって特別におにぎり作ってもらってる
「うちのコックも、米がうまく炊けると俺にいつも報告に来る。うちはパンが出ねぇから炊くのは当たり前なんだが。
それでも、嬉しそうに報告に来る。ミッションをクリアした感覚と似てるんだろうな」
仲間を思い出しているのか、柔らかく笑う
確かに、いつも私の食べるものを見てて。一瞬で飲んでしまったものはリピートしてくれる。
好きな食べ物じゃなくて、味付けも把握してる。美味しいと伝えれば飛ぶように喜ぶけど、の後にちょっと本気で嬉しそうな顔を思い出す
「私のためってこと?」
「自惚れではなく、そうなるだろうな。飯時もいつも全員の食べ具合も観察してる。だとしても、お前をいつも凝視してるのはそういうことだろうな」
私のためかぁ。考えてもなかった。
ナミちゃんたちみたいな食にオシャレや雰囲気を求めることもないから、作ってもつまらないと思ってた。美味しいのは美味しいから空にして返すけど、飲んでくれたの?と喜んでくれる顔を思い出して顔が少し熱い
「なに、ニヤニヤしてやがる」
わかってて聞くんだから、意地悪な人。
そう言われてもっと顔が熱くなる。贔屓がちょっと嬉しいだけ
指摘しないでよ、ぜんぜん冷めてくれない。火傷したように熱い頬を両手で包んだ。その時飛んでくるタバコの香り
「てめっ!おい、トラ男!なにうちのレディ泣かせてんだ!」
「泣かせてねぇ」



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