Small Small World


おい。ドスの聞いた低い声が後ろからかかる。
振り返ると金のフックに雨が反射してピカピカツルツルしていた
サー。口の中で返事をすれば眉間に皺が寄る。ちょっと怖い。なんかしたっけ?特に覚えられるほどの接触もないし、会話もない。B・Wは問題なく計画を進行中と聞く。この前だって、人工降雨船とかいう難しそうな船の調達が済んで嬉しそうにしてたのに。なんなら、その船の機関士は私だ。あ、そういうこと
「メンテナンスしとけ」
承知と返事をして頭を下げる。また、1ヶ月とか、半週間後とかそのくらいに出すのかな。今回試作として偉大なる航路の途中で船を止めて雨を降らせてみた。科学者たちはあーだこーだ言って色んなことを考え中で航海士チームと機関士チームは暇そうに雨を甲板から眺めていた。というか、ボス。なんで傘さしてないんですか。隣の秘書は自分だけにさしている。割と関係値が謎なんだよなぁ。人工雨は普通の雨と変わらない。雨の匂いはするし、疑うものもいないだろう。アラバスタなんて砂漠の国だ。降るだけで嬉しいだろ
とりあえず、機関士としての任務は今回は成功。こらからもこれが続くことを祈る。
ボスの口から葉巻が抜き取られ、吸い殻を渡される。一呼吸も無しに新しい葉巻をポケットの金ピカのシガーケースから取り出す。趣味ワル
「量の調節が必要だな」
目線が空から靴に変わる。少し甲板を踏み込んだ仕草。高級そうな靴もピカピカツルツルしてる。転びそうだ
「水が入った」
一緒に見ていた視線を共にあげると不機嫌そうな瞳とかち合う。自分の仕事ですか。やりますけど。古い新聞あったかな
今受け取るわけにもいかないので、この後受け取るために一緒に部屋までお供しないといけない。となると、吸い終えた葉巻を受け取った左手でまだ持っておかないといけない。火はついてないにしても、早く捨てたい。雨に濡れてグジュグジュになったソレはちょっと気持ち悪い
サーは数歩動いて科学者チームの輪の中に入っていく。相変わらず美人秘書は動かず空を見てふわふわと微笑んでる。
今回はこの実験だけの予定なので、すぐアラバスタに帰れるはずだ。航海士チームによると、今日の出来次第だが。明々後日にはアラバスタの海域に入ると言っていた。その2日後。アラバスタの行きつけであるパン屋さんで新作が出るのだ。常連になった私に店主が伝えてくれた。なんでも、お店が開いてから20周年らしく、こんな内戦勃発待った無しの現状だからこそ自分の生活を整えていたいそうだ。涙が出る。ごめんなさいね、うちのボスのせいです。でも、パンは買いに行くから私のことは許して欲しい。しがない雇われ機関士なだけです
サーは空を数分間見て、科学者チームとの会議を終えてこちらに身体を直す。そもそも、サーとの会話なんて初めてだ。機関士長が雨の整調を行ってて様子を見に外に出たのが私だっただけだ。
相変わらず眉間に皺を寄せて機嫌が悪いそう。顔色も悪い。アラバスタの陽にやられすぎましたか?水分取らないと。でも、スナスナの実だと水分は敵なのかな
「水分調整をする。今日は降っちまったから。また明日だ。全土ではなく、地域ごとに降らせたい。そっちの方が現実味も増す」
伝えたかとのことですか。承知
「航海士チームにも、近くの島に寄るよう伝えろ。ログが溜まり次第帰国する」
え。ログを溜めちゃうんですか。そうなると帰国はいつでしょうか
「ここから1番近い島だと、ログは2日かかるわ」
秘書が伝える。2日。今日から船を動かすとしてそこから2日。そして帰路。あれ、パン屋さん行けない?
サーはそれだけ伝えると背を返し歩いていってしまった。あぁ、ついて行かないと靴乾かすんだった。秘書が歩きその後ろをついて歩く。いや、せめて朝に着いてくれたら嬉しい。パン屋さんの朝は早い。お客だから10時オープンだけど
こちらの事情も知らずに大幅にスケジュールを組み替えしたボスの背中を見つめながら、手に残された柔らかくなった葉巻を握りつぶした。



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