消しゴムで擦れた筆記文字


君のバリアと私の抹消能力はどちらの方が有効なのだろうか

「ロメ男くんは、ほんとうにルフィが好きだね」
ゾウまでの航路を案内してくれるルフィ先輩号の甲板は今日も宴だ
胃がブラックホールのような彼の胃袋を捕まえるために君たちはどれだけの出費を重ねたのだろう
「もつろんだ!」
訛りと酔いで口があまり回ってないロメ男くんは嬉しそうに話を続ける。話半分で聞きながら、そうかそうかと相槌をうつ
バリバリの実の能力者である彼は、バリアの形を様々に変えてルフィを守ってくれた
船員として嬉しいことない。ありがとと伝えると、ニヤけた顔で
「褒められたったなぁ!歓喜だべ」
と次は涙を浮かべるからちょっと困る。
「人喰いと恐れられてたのに。今じゃ、ただのオタクね」
私の言葉に彼はまた、デレデレする
「もし、」
甲板に灯る光とみんなの騒ぎ声。トラ男くんはちょっとうるさそうに蚊帳の外。あとで行こうかな
「ルフィに何かあったとして、バリアじゃ防げないことがあったら。どうする?」
なんとなく。自分が身を挺して守ると言うと思うから先に釘を打つ
「身体の傷、だけじゃなくて。心とか」
エースを失った時、彼はどれだけ強くなったんだろう。変わらないように見えて変わった船長を見る。
「ん〜。むずがしいことは、わっかんねぇけど。
ルフィ先輩が立ち直れるように、うんめぇもんでもご馳走するんだべさ」
そうしたら、元気だべ!。笑う君に、私も笑う
「私の、なかったことにできる能力を使うのは。反対?」
触れてしまえば、なかったことに。モノも人も思い出も。強いようで弱い私の力。食べてしまったこの力は、幼い私には恐怖と畏怖をぶつけてきた。お陰で両手はサイボーグ。青髪の発明家に合わなければ。ルフィが手枷を引きたがらなければ。私はずっとあのくらい檻で、手を腐らせて、腐敗になっていただろう
私の能力くらい、君は知ってる。少し眉間に皺を寄せる
「あったりめぇだべ。辛いことでも立派な思い出だ。それを消すのは、殺人みたいなもんだべ」
当たり前のように反対してくるから、ちょっと笑っちゃう。そうだよね、普通は
ルフィのギア4に飛ばされたサングラスの桃鳥は、喉から手が出るほど欲しがったのに。私が先に助けられてたら、きっと、おもちゃさえいなかった。忘れたままみんな生きてる。そんな国
「忘れた方が、いい思い出とかない?」
素直な君に意地悪をする
「そりゃぁ、あるちゃあんべ」
どんな?首を傾げて聞けば、少し照れて
「す、す、好きな子の前で、船酔いして吐いた時とか」
なんて可愛らしい思い出。そうか、君はしんどい思い出はいい思い出なんだね
「それは、消してあーげない」
ハハッと楽しく笑えば、えぇ!意地悪だべ!と嘆く
ルフィを慕ういい弟分。君の思い出はきっと、ずっと、変わらないんだろうな



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