今回停泊した秋島は心地の良い風や昼寝に最高な日差しは一切なく、秋雨がずっとそこにいるような灰色な島だった。
雨が多いことから土砂崩れが多く、作物は高台に作られた農園でのみ作られているそう。橋があちこちにかかりまるで迷路みたいな街は色とりどりの屋根や橋のおかげでカラフルには見えた。
大雨の影響でなんだが力が出ない。雨程度で力が出ないことは珍しいが、聞けばダムを作っているせいで海水も多少街の付近に溜まっているそう。ろ過装置が発達しているように思える。
「というわけで」
「どういうわけだ」
「ダムの補強したら、三日間夕飯無料なんだって。ね?お願い」
なんでもこいつが言うには街の人たちはこの秋雨のお陰でダムを毎月補強しているらしく、それの骨組みをオレに補強して欲しいとのこと。ねじ回しくらい自分達でやれよ、海賊だぞ。お前も気軽に聞いてくるなんて軽いこと言ってんじゃねぇ
船の会計士であるこいつは金になると目が鋭くなる。どこぞの麦わらにいる航海士といい仲になりそうだ。
「磁気で集めてネジ締めるだけじゃん」
「だぁかぁらぁ、海賊がいいことなんてするかわけねぇだろ」
「いいことじゃなくて、取引ね。まったく、一番食べるの君なんだから」
ため息つかされて右手をぐいぐい引っ張る。動く気がないオレ、冷たい視線
「じゃあ、夕飯無料よりいいことあるの?」
ないだろうとたかを括ってオレを見つめる。夕飯無料よりか?無いにはねぇが、それだけなんてつまらねぇだろ
「3食分にしろよ」
「そんなことしたら、この街3日足らずで崩壊するよ」
速攻で返答されて言葉がつまる。ぐいぐい引っ張られるのも面倒になってきたから、ため息ついて立ち上がる
土砂降りの中、コートを脱いでダムまで向かう。街の偉い奴に会計士が胡散臭そうな笑顔で対応してるのを横目に、能力を発動して金属類を集める。俺の思考と磁気によって見せられた完成図に近い骨組みができる。
簡単に出来上がったそれを街の人々は喜び、お礼を言われる。ちょっと胸の中が落ち着かない。早々に部屋に戻ってタオルで濡れたところを拭きベットを背にして座る。ああ、疲れた
「お疲れ」
会計士はニヤニヤしながらベットの上で俺の頭を拭く。ほっせぇ脚の間に俺を挟む。少し顔を上げれば目が合う
「なんてことねえよ」
「これで、キッド。夕飯おかわりも自由だからね。でも、やりすぎたらダメだよ」
街が滅ぶことをずっと口酸っぱく言ってくるから、面倒になってきた。
「で」
「ん?」
「オレは、飯ごときじゃあ満足しねぇって言ったよな」
はてなマークを浮かべるこいつの首を片腕で掴む。逃げないように能力を発動したら固まる体。可哀想になぁ、まさか自船の船長が磁気使いなんて。テツテツの実を食った鉄人間のお前の拳はどんな強い奴でも首の骨が折れるどころか首が捻って飛んでいくこともあるようなグロい技ができるのに、オレには一切効かねえんだから
「なにも、食うのはメシだけじゃねえだろ」
固まった身体を磁気を調節しながら好きに動かす。脚の間から身体を乗り上げてシーツの波に押し付ける。外は昼だってのに重たい曇りで永遠に夜だ。誰もなにも気づちゃしねぇよ
固まった身体を頑張って動かそうとするのが面白い。鼻で笑えば今度は顔をちょっと青くする。青いお前と赤いオレだ。オレが磁気であるなら、お前はオレに引っ付くしかできない鉄なんだから、観念しろよ