腕を檻状にして海賊をとっ捕まえていたら、後ろに視線を感じて振り返る。同じ将校コートを着込んでる。華奢な身体には重そうに見える。はためかす事なく地面につけてしゃがみ込み、後片付けに回る海兵たちを背景に彼女はじぃと私の腕を見る。
「そんなに、面白い?」
「うん。見てて気持ちいい」
まさかの返答でヒナ驚いちゃう。一気に捕まえれるからきっと爽快感はある。今回の鉢合わせた海賊どもは別に億超えもいないから簡単だった。
腕に捉えた海賊どもを手錠をかけて行ってそのまま牢屋にぶち込んでおくよう伝える。手錠伝で一列になって歩く海賊を見送る。
「解いちゃう時、なんか、柔らかいよね」
まだしゃがんでこちらを見ていた。
「なんのこと?」
「ヒナちゃんの、その腕のやつ。解いた時さ、なんか優しく感じる」
「海賊に優しくしたつもりないわよ。ヒナ驚愕」
ごめんごめん。と笑って謝る。よいしょと立ち上がり私のワインレッドのスーツを纏う腕に触れる。何往復かさすっては、ふーんと呟く。よくわからなくて首を傾げた。
「ヒナちゃんのこれ、私も捕まえてくれる?」
「悪いことしたらね」
えぇと楽しそうに笑うもんだから、捕まってない反対の手で彼女の頬を摘む。
「いたいいたい」
「まったく。冗談言ってる場合じゃないでしょ。ヒナため息ついちゃう」
ふふふと頬を引っ張られてるのに楽しそうに笑う。ほんと、可愛いんだから。海賊に食べられないかヒナ心配
私の考えなど知らない彼女はいつも楽しそうに笑う。将校コートを着てる癖に昇格に興味もなく、下につかれるのが嫌。一生自分が下がいい。
本部で少将までやっててそれはないだろと頭の中で突っ込んだのは何回か。
「そんなのんびりしてたら、海賊に襲われちゃうわよ」
私の忠告に、大きなおめめをぱちくりさせて首を傾げる。
「えぇ。ヒナちゃんが助けてくれるんじゃないの?」
助けないと言わないことを知ってて言うんだから。ほんとうに調子がいい子。なんだかんだでスモーカーくんが気に入ってるのがわかる。あげないけど
おつる中将の元で動いてた彼女は頭がキレるけど、やる気はない。でも、作戦はいつもうまく行く。最近入ってきた中将の孫は彼女の下っ端として動いてる。なかなか掴めない彼女に戸惑うのを何度か見た。
「まったく。そろそろお迎えが来るんじゃない?」
たまたま鉢合わせた彼女の軍艦。終わりかけに駆けつけてくれた。降りてくるのは下っ端たちで彼女は片付けで降りてきた。
「いやん、ヒナちゃんとまだおしゃべりしたいのに」
可愛いこと言って誤魔化そうとするけど、中将のお孫さんがこちらに向かってくるのを見つける。たぶん、彼女はもうそれに気づいてる。
名残惜しそうに腕から手を離して、その手をヒラヒラ振る。
「またね。こんど、美味しいパフェ食べよ」
お誘いは嬉しい。ええ、と口にする前に咥えてたタバコを抜かれて彼女の口に運ばれる。
「あ、なにすん・・ケホ」
そのまま紫煙をヒナに向けて吹いてくるから咳き込んだ。ちょっと睨んでやればニヤニヤ笑ってる。そのままタバコは返さず自分の口にハメる。将校コートをヒラヒラさせて背を向け、お迎えのお孫さんに手を上げる。
逆光で目を細めたら、陽を浴びた彼女は楽しそうに笑い私のタバコを味わってた。可愛いも色気も扱えるんだから、そりゃ赤犬さんだって手駒にするわよ。