「いつになったら、学習するの?」
なぜかいつも天気予報を1日ずらしてるような彼女にため息をつく。昨日が晴れで昨日が雨なのに、昨日夕方雨かもと傘を持ってきて今日忘れる。いつもそうだ。
「うーん、困っちゃうなぁ」
本当に困ってるの?とメガネのフレームをあげる。眉を八の字にして困ったような顔をする。かわいいけど、貸す傘もないわ。
「今から出るの?」
私の部署と違って、現地調査や監視をしたりする特別枠のCPである彼女。今回はどこの国に行くんだか。私の問いに大きく頷く。
「はい。また、依頼します」
深々と腰を折って頭を下げる。その姿勢の低さは嫌いじゃないけど、実はあなたたちの指示で私たちも動いてるという、なんとも可笑しな話。
つまらない仕事を持ってこないでね。と鼻を鳴らせば、ちょっと困ったような笑み。
「大物のがいいですか?」
首を傾げて聞いてくる。そりゃそうだけど、わかってて聞いてるでしょ。
「手応えのあるのがいいですよね」
自分で回答して頷いてる。うんうんと勝手に納得する姿も可愛い。ちょっと柔らかい雰囲気だからCPとしては拍子抜けしちゃう。
「国の王とか、どうですか」
なんて?目つきで聞き返せば、変わらない笑み。組んでる腕に力が入る。
「ダメですか?手応えあると思うんですけど」
うーんと首を後ろを掻く姿に、ちょっと言葉が出ない。そりゃなんでも殺してきたけど。国の王は無い。大事件そのもの
「キレイだから、ちょっと誘って、ポキっと」
「セクハラよ」
えっ。濁点がつきそうな言葉を出す。女の私でもですか。なんて、当たり前でしょ。
「しょーがないな。じゃあ、やめましょ」
それはそれで信用がないみたいで困るわ。引き留めるのもちょっと違う。あ、わかっててやったわね。
「ふふ。意地悪でしたか?」
楽しそうに笑う。気になる王様がいるんですよー、なんて。目が笑ってないことくらいわかるわ。
「どの首、取ってくればいいのかしら」
少し沈黙してから話せば、花がスローモーションで開くように笑みが溢れる。
「えぇ、行ってくれるんですか?」
ちょっとネッタリした口調で話すから、眉間に皺がよる。掴んでるような掴んでない彼女に寒気がする。
「なんだってするわよ」
すっと滑らかに出た言葉に、自分で首を小さく傾ける。あれ、私こんなに仲良かったかしら。
雨は本降りになってきてて、窓から見える曇天に大粒の雨が地面を叩いてる。柔らかい紙だと破れちゃいそうな大粒。雷が遠くで鳴る。
天気のせいでちょっと暗い廊下。にんまりしてた彼女の目つきは柔らかくない。
私が指示通りの首を持ってきても、嬉しそうな人懐っこい笑みと態度をするくせに当たり前だという目つきをしてるんだろう。天気予報を外すのはわざと?
ありがとうございます。なんてるんるん気分で告げてから、一際光った雷に似た目つきで冷たく告げる。
「じゃあ、次」