鬼ヶ島でカイドウを麦わら屋がぶっ飛ばしてから、どこからか流れてきた水も消えていった。雨音が止まったみてえな静けさを感じる。どこかに着陸した鬼ヶ島はうちの船員も、侍共も安堵の息と笑みをこぼす。
激しい決闘で、身体はボロボロだ。体力もねぇ。でも、傷ついた奴らは多くて重い腰を上げる。トニー屋がバカみたいに小さい姿から元に戻ってせかせかと治療の準備をミンク族のヤギに告げる。
「わーい。シカくん、準備してくれてるの?」
声がした方を見れば、ユースタス屋の船医。手を軽く胸の前で振ってこっちにくる。
トニー屋が準備してる内容を告げるのを、うんうんと頷きながら聞いてる。
「んじゃあ」
ゆったりと動きながら俺を見る。手を伸ばして鬼哭を持ってない腕の手を取り握ってくる。反対の手でトニー屋の蹄を握り
「外科医とぉ・・内科医とぉ・・接骨医がいればぁ・・カンペキだよねぇ」
ブンブンと腕を振って楽しそうに笑う。覗く左耳にはシルバーのインダストリアルが光る。耳たぶには2連のフープピアス。
「接骨医なのか?」
ブンブンと楽しそうに揺らされたままトニー屋が聞く。ふんわり笑って頷く
「接骨医と薬師やってます」
手を離して自分の顔横で手のひらを揺らす。キラキラぁなんて呟く。ギャルかよ
「君は必要ないと思うけど、麻酔科もできるからね」
薬師だし。なんて、確かに俺の能力には要らねえけど有能。
ちゃっちゃっとやろうと自分の医療箱を取り出す。四角いリュックみたいな箱。左側が複数の引き出しに右側が大きな扉の変わった箱。
「これねぇ、スチームで作ってあるから軽いんだよ。キッドくんが作ってくれたんだぁ」
聞いてないのに説明してくれる。「なんだそれ!かっこいいな!」トニー屋が食いつくから俺も見る。ふふんと鼻を鳴らして引き出しを開ける。左側は食物の種か?右側は接骨で使うだろう支え木みたいな器具が揃う。
「キッドくんは磁気だからね。電子モンは使えないんだぁ」
楽しそうに箱の中身を説明してくれる。
「それはなんだ?」
種らしきものが入ってる左側の引き出し。得意げに笑って一つ取り出す。ちょっと大きな種
「ふふん、みてて」
適当に地面に放り投げる。手のひらを合わせてちょっと膨らまして蕾みたいな形を作り
「パッ」
唇と唇を合わせて、リップ音。それに乗せて手のひらを花のように咲かすと、放り投げた種が勝手に成長して花を作り実になる。
「スクスクの実だよ。なんでも成長できちゃう。だから、ちょっと鈍麻な痛みがめちゃくちゃ長引くけど骨だって元通り」
すげぇ!とトニー屋が興奮する。なるほど、好きな薬草をいつでもか。種だけ運ぶなら新鮮で軽く量も多い。
「はい、これ」
引き出しから種を数個取り出して、放り出し同じ仕草で育てる。育った草を見て俺に言う。
「必要でしょ?」
さすが薬師。オレの欲しい草がわかるのか。Room内でやるのとは別にその後の経過に必要そうな、わりと重要な薬草。箱からすり鉢出してきたあたり有能。
俺のRoomの隣で作業して、繋ぎが必要なやつにそこらへんに落ちてる瓦礫の木を支え木にして能力かける。縫う方が早いやつと塗るだけで済むもの。必要な草とエキス。瞬時に判断して俺に投げるかトニー屋に投げる。欲しい時にくれる薬草。「ここが痛そう。・・・そうだよね、折れてるね、はいこれ持って。はい、おっけー。つぎ。ああ、君はこっち」
また俺かよ。こっちはビッグマムと戦ってんだ。体力が底をついちまう。ギロリとみれば、反射するインダストリアル。先が槍みたいに尖ってる。
「優秀でしょ。ローくんは」
馴れ馴れしく下の名前で呼ぶな。チョッパーくん、これどーぞってモノみたいにケガ人をトニー屋に渡すからトニー屋とヤギが慌ててる。
俺の目線に気づいたのか、柔らかく笑って
「重症じゃなければ、こっちでできるよ」
なんてチラリと舌を出して呟いてきやがる。舌先にチロリと見えるシルバーのピアス。
「これより、あっちの草がいい」
名前を出すちょっと前に引き出しから出して放り出してリップ音。欲しい草。ちぎってすり鉢入れてエキスを出す。
「エキスのが効くって知ってた?」
すりつぶした草はただ塗るよりもこっちの花の液足したら効果抜群。なんてさすが薬師。欲しい
「いい腕だ。俺んとこ、来いよ」
「えぇ、ローくんのお誘い嬉しい」
なぜか内部が重症で寝かされてたユースタス屋がどっかからすっ飛んできた。
「やらねぇよ、バアカ!!」