落ちていた硬貨を拾って顔をあげたら、見慣れた煙が消えていくところだった
「スモーカーさん」
モクモクと姿を変えて元に戻る。ハァーと葉巻を抜いた口から出る煙は深い香りがついていた
G-5に希望移動した。あんな海賊とも変わらない海兵が多い基地を選んだのは彼の生き方を示しているようだった。お供にたしぎちゃんを連れて行き、あれからなんの音沙汰もなかった。
背中に背負う十手の持ち手がこちらに向く。ビローアバイクから降りるところだったようだ
「車検ですか?」
「んな訳ねぇだろ」
海水だが先程まで降ってた夕立で全面的に濡れている。スモーカーさんは特に問題なさそう。服は濡れているけど
摘んだベリーを白衣のポケットにしまいバインダーを胸に両手で抱え込んだ。濡れた地面に裾を幅らしたから泥がついていた。しょうがない
久しぶりに見た彼は、本部大佐から中将に上がっておりもう気軽に会話できるような人ではなかった。いや、私も上がっているから逆にできやすいのか
ヒナさんにはよく会って食堂でランチすることが多いが、本部ではなくどっかの基地にいつもいた彼とはランチをしたこともなかった
「夕食食べましたか?」
なんとなしに聞いてみれば、まだだと短く返事をもらった
「そろそろ夕食の時間です。食堂でもどうですか?」
軽く誘ってみるが、これから顔を出すらしく難しいとのこと。それは、しょうがない。急ぎならば私はここで退散して、自分の仕事をするしかないようだ。バインダーにはエッグヘッドに通信する内容がぎっしり詰まってて、あの天才からのお達しもたくさん。ああ、また経理に嫌な顔される。私がやってることじゃないのに
海軍は戦いに出れる奴人だけで構成されているとなんとなしに思わているが、きちんと経理もあれば労務だっている。私のように科学班としてあちこちの船に乗せてもらいながら目的の島までいくとだってあるのだ。本部の科学班なんて特別やることがある訳じゃなく。Dr,ベガパンクとのやりとりとか。化学兵器を用いた国を抑えつけて、回収してきてもらったモノを解読するとか。あと、海楼石の応用とか。今回は毒兵器を自作して海でやり合っていたアホな海賊たちをモモンガ中将が捕まえてくれたので、その成分の調べと海への影響、人への影響を調べていた。そのまま他の用事をしていたから鼻と口を覆うガスマスクを首に下げたままだった。
スモーカーさんの煙の匂いを久しぶりに鼻腔に入れたから新鮮だ。煙たくなく割とスッキリした匂いをしている。あれに似てる、ドライアイスの香り。
「また、今度だな」
煙の隙間から話してくれる。また今度を作ってくれるなんて
「奢りですか?」
「いい度胸じゃねえか」
私より幾分と食べるんだからいいじゃないか。無愛想なのにちょっと雰囲気が柔らかいのを感じる。夕陽に照らされてオレンジに光る水溜りに反射する煙。歩き出す姿に半音作って口の中に収めた。煙が口の中でもたついて喉を無理やり通っていった