今日は我らが船長の誕生日。サンジくんは朝からずっとキッチンに篭って準備中。甲板はフランキーやウソップが飾り付けしてて、それをロビンが文字通り手を貸している。チョッパーとナミ、ブラックもテーブルセットとか歌とかたくさん用意してる。ジンベエはチョッパーを抱き抱えて上にあげ高いところの装飾を手伝ってる。ゾロは寝てる。
みんなをちょっと遠目から眺める。主役の船長さんはウズウズしたまま船首の定位置に座ってる。一番混ざりたそうだけど、ダメなのはわかってるみたい。その後ろ姿も可愛くてつい口元が緩んじゃう。
「お前は、なにしてんだ?」
舵の椅子に座りながら見つめていたら、ウソップがこちらに来た。
「とくに?」
「じゃあ、手伝ってくれよ。まだまだやりたいことがあるんだ!」
ウソップのハツラツとした姿に笑いながら頷いて席を立つ。アーウ!助っ人かぁ?、フランキーの掛け声にロビンも振り向く。お互い柔らかく笑って会話する。
「じゃあ、これをこうして。できたものをこっちに入れて欲しい」
色とりどりの紙を束上に切ってあるから、それを輪っかにして、その輪っかに通してまた輪っかしてと連なってる。ウソップが教えてくれた手本通りに進めていく。無言で作業を進めながら周りの人の顔を眺める。みんな楽しそう。ほんとうはサンジくんの手伝いに行きたかったけど、洗い物さえしてくれなかったから、折れた。手荒れがって、もう十分荒れてるし。なんなら荒れる皮膚はない。フランキーがくれた義手は相変わらず太陽を反射してオイルの匂いがする。完全にフランキーの趣味の手だからルフィはよく私な腕を観察しにくる。前まで乗ってたトラ男くんは意外にも深く興味を示してくれた。
「お。結構できてるじゃねえか」
ウソップが様子を見に来てくれた。笑ってそうでしょと返すと、ああ、上手いもんだと褒めてくれる。
「お祭りみたいね」
「お祭りだろ!なんだって、船長の誕生日だからな!」
誕生日ねぇ
「誕生日っていうのは、そんなにもすごいことなの?」
純粋にウソップに聞けば、少し固まる。でも、すぐに笑って
「ああ!もちろんだ!!自分が生まれた日。だからな年も増えるわけだし・・なによりも記念日だろ」
「そういうもんなの?」
誕生日。生まれた日さえ知らない。年も知らないし、ソレを祝うということすら知らない。ソレがどれだけ大きいかも知らない。望まれて生まれたのはほんと。愛情ではなく人数調整として。
よくわからなくて、ふーんって音を鳴らしながら残りの束を消化していく
「誕生日には、なにをするの?」
加入が遅いから他の船員が祝われてるところを見たことがない。先日だって、ルフィの誕生日会についてナミに教えてもらったけど。ソレがなんだかよくわからないまま今日を迎えてる
「上手いもん食ったり、誕生日プレゼントもらったり」
顎に手を添えて考える。
「プレゼントは、なにがもらえるの?」
プレゼントというのは。褒美の勲章や幸せになるタバコじゃないやつ。
「相手が欲しいやつとか、貰って嬉しいものとかをあげたりだな」
「もらって、嬉しいもの」
特にプレゼントは用意してないけど、ナミが大きなお肉をサンジくんに買ってきてもらってたからそれなのかな。
「お前だって、もらって嬉しいものあるだろ?」
ウソップの質問に固まる。欲しいもの。欲しいものか。なにが欲しいかな
「ない、かなぁ」
「相変わらず、無欲だなぁ」
呆れたように笑い、オレはなぁ!と楽しそうに話す。それに引き寄せられてフランキーやロビンも便乗する。終わってきたのか、ナミやジンベエたちもこちらにきて、欲しいものを語り合う。
医学書、考古学のやつ、なんとかカッター、ベリー、トランペット、新しい草履。
みんな欲しいものがたくさんあるんだなあってのんびり見てたら、サンジくんが美味しそうな匂いを連れてきた。ゾロの鼻提灯が割れる。
「メシだー!」
ルフィの飛んできた合図で、誕生日会という宴が始まる。クラッカーというのをみんなでルフィに向けて鳴らす。火薬の匂いと大きな音。びっくりして慣れてしまった戦闘体勢に入ってしまったのをウソップがやんわりと停止してくれる。
乾杯して、美味しいご飯食べて、ルフィにプレゼントとして赤い服と大きなお肉をあげた。楽しそうなみんなを見て、胸がゾワっとする。胸をさする私にウソップが気づいて声をかけてくれる
「どうした?」
「いや、なんか。胸が。ゾワって・・ルフィとみんなの顔見てたら、胸がゾワっとしたの」
ウソップは私の言葉を聞いて、ちょっと固まってすぐ笑った。
「その感覚、覚えておけよ」
長い鼻をふふんと鳴らす。よくわからなくて首を傾げるけど教えてくれなかった。
「誕生日ってのはな・・その人が生まれてきてくれて、嬉しい。ありがとって伝えるだーいじな日なんだ
お前がそう、胸がゾワっと動くなら。ルフィを祝えて嬉しいって気持ちがあるんってことなんじゃねえか?」
やっぱり教えてくれた。でも、ちょっと難解。
「嬉しい、気持ち」
ウソップはどこか嬉しそうに笑って、飲むぞー!と私の肩に腕を回した。ウソップと輪に入ればみんなどこか嬉しそうな顔してて。ルフィは特段嬉しそうな顔。
「プレゼント、用意してないの」
ルフィにつぶやいてみれば、お肉を頬張りながら首を傾げる
「ん?なんだぁ?別にいらねぇぞ」
必要なことなんじゃないの?とウソップを見れば、ちょっとにんまり顔
「おめでとうって、伝えてやればいいんだよ」
ウソップの助言をきいて、ルフィに「おめでとう」って伝えれば胸がもっとぞわっとする。ルフィは嬉しそうに「おう!」って答えてもっと、ゾワっとする。
胸をさする私をウソップは優しく見つめて
「これが一番なプレゼントだったりするんだよ」
モノもないのに?でも、なんとなくわかる。お肉食べることより、強いヤツと戦うことより、嬉しそうな顔してる。それが、なんだか一番良い行いな気がして、胸をさすりながらちょっと笑った。